結論から言うと、外務省はバンコクなど主要観光地に危険情報を出しておらず、渡航自体を止める必要はありません。ただし国境地帯や治安の悪い時間帯には注意が必要です。本記事では危険情報の中身、実際の被害事例、注意すべき法律まで順に解説します。
バンコクの治安:外務省は危険情報を出していない
バンコク、チェンマイ、プーケット、パタヤなど主要な観光地には、外務省の危険情報が発出されていません。渡航を控えるべき地域という扱いにはなっていないのが結論です。
一方で油断は禁物です。外務省は、タイの凶悪事件の発生率が日本と比べて非常に高い水準で推移していると指摘しています。
タイ警察がまとめた2025年の犯罪統計は次の通りです。数字の規模感を把握しておきましょう。
- 殺人事件(未遂含む):3,981件
- 強制性交等事件:1,875件
- 盗難事件等:34,961件
- 銃器・爆発物関連事案:48,374人が検挙
- 薬物犯罪事案:418,104人が検挙
薬物や銃器の氾濫が、凶悪事件が多発する要因の一つとも言われています。ただしこれは国全体の数字であり、観光客が日常的に遭遇する種類の犯罪とは性質が異なります。
危険情報なし=安全という意味ではなく、置き引きや詐欺への警戒は別途必要という点がポイントです。
出典: 外務省 海外安全ホームページ「タイ 安全対策基礎データ」/確認日 2026-08-10
では、外務省が実際に警告を出しているのはタイのどのエリアなのでしょうか。
外務省が警告しているのはタイのどこか
危険情報が出ているのは、カンボジア国境付近と南部のマレーシア国境付近に限られます。バンコクやチェンマイなど観光の中心地は対象外です。
国境情勢の経緯
2025年7月以降、カンボジアとの国境付近でタイ・カンボジア両国軍による軍事衝突が発生しました。同年12月27日には両国が停戦に合意しています。
停戦後は約6か月にわたり大規模な軍事衝突が起きておらず、一時期より安定しています。ただし国境付近の重火器が撤去されていないため、レベル3は継続されています。
| レベル | 対象地域 |
|---|---|
| レベル3(渡航中止勧告) | カンボジア国境から30km以内(シーサケート県、スリン県、ブリラム県、ウボンラチャタニ県、サケーオ県、チャンタブリ県、トラート県)、ナラティワート県、ヤラー県、パッタニー県、ソンクラー県の一部(ジャナ郡・テーパー郡・サバヨーイ郡) |
| レベル2(不要不急の渡航中止) | カンボジア国境から30kmを超えて50km以内の地域(2026年7月に引下げ)、ソンクラー県のうちジャナ郡・テーパー郡・サバヨーイ郡を除く地域 |
| 指定なし | バンコク、チェンマイ、プーケット、パタヤなど主要観光地 |
タイ南端のマレーシア国境付近では、分離独立を掲げるイスラム武装勢力による襲撃や爆発事件も起きています。
出典: 外務省 海外安全ホームページ「タイ 危険・スポット・広域情報」/確認日 2026-08-10
では、実際に日本人はどのような被害に遭っているのでしょうか。
日本人が実際に遭っている被害
日本人被害の多くは窃盗と詐欺です。凶悪犯罪より、身近な手口による被害の方がはるかに多く報告されています。
2025年には、外国人から声を掛けられて金品を抜き取られる手口が目立ちました。主な手口は次の通りです。
- お金を見せて詐欺:外国人男性や男女から「お金を見せてほしい」と声を掛けられ、やりとりの間に現金やクレジットカードを抜き取られる
- スリ:観光スポットや繁華街での一般的な置き引き・スリ被害
- タクシー・トゥクトゥクの声かけ詐欺:見知らぬ運転手に安易に話に乗ったことで金銭被害に遭う
- 男女間トラブル:交際相手に宝石や住宅購入資金を渡した後、連絡が取れなくなる
いずれも「見知らぬ人からの親切そうな声かけ」が入り口になっている点が共通しています。
こうした被害は、どこで、いつ起きやすいのでしょうか。
犯罪に遭いやすい場所と時間帯
犯罪が集中するのは観光地の繁華街や大型商業施設周辺、そして安宿が集まるエリアです。夜の繁華街は特に警戒が必要とされています。

犯罪が多発する場所
- バンコク:観光スポット、繁華街、デパートなど大型商業施設周辺、若い単独旅行者向けゲストハウス周辺
- チェンマイ:旧市街を中心に旅行者を狙った犯罪
- 夜の繁華街:カラオケ店でのぼったくり被害も報告されている
不用意に狭い路地へ入り込むことも危険とされています。
防犯の3ない行動
外務省は「近づかない、慌てない、楽観視しない」という3ない行動を呼びかけています。
- 近づかない:危険な場所や不審な声かけに近寄らない
- 慌てない:タクシー強盗などで金銭を要求された場合、抵抗せず生命の安全を優先する
- 楽観視しない:2019年にバンコクで連続爆発・放火事件が起きたことも忘れない
場所と時間の見極めができたら、次はうっかり法律違反にならないための注意点を確認しておきましょう。
知らずにやると逮捕される:タイの法律とマナー
タイには日本にない厳しい規制が複数あります。知らずに違反すると拘束や高額な罰金につながるおそれがあります。

- 電子タバコ:加熱式を含め持込み・所持・使用・販売のすべてが禁止。違反すると最高で懲役10年または罰金50万バーツ
- 免税タバコの範囲超過:紙巻きタバコ200本(1カートン)、酒類は一人1本1リットルまで。団体でまとめて預かった人が没収・罰金の対象になる
- 不敬罪:国王・王妃・皇太子・摂政を侮辱すると3年以上15年以下の禁錮に処されるおそれがある
- 大麻:娯楽目的の使用や公共の場での吸引は禁止。日本の大麻取締法には国外犯処罰規定があり、帰国後に罪に問われる場合がある
仏教マナーにも注意が必要です。僧侶は女性に触れてはならず、頭をなでる行為や足裏を人に向ける仕草もタブーとされています。
これらを踏まえたうえで、出発前と現地でできる具体的な対策を見ていきます。
出発前と現地でやる安全対策
出発前の登録と、現地での基本確認だけで多くのトラブルは避けられます。特にTDACとパスポートの扱いは事前に知っておくべきです。
TDAC(タイデジタル到着カード)
2025年5月1日から、タイに入国するすべての非タイ国籍者にオンライン登録が義務化されました。登録は到着の3日前(到着日を含む)から可能です。
公式サイト以外で料金請求やカード情報の入力を求める偽サイトが確認されています。利用は公式サイト(https://tdac.immigration.go.th/)に限定してください。
パスポートと出入国スタンプ
- 携帯義務:職務質問時に未携帯だと罰金や身柄拘束の可能性がある
- 入国スタンプの確認:押し忘れに気づかず出国しようとすると不法入国とみなされる場合がある
- ページの状態:メモ書きや記念スタンプがあるページのせいで出入国を拒否された事例がある
登録と緊急連絡先
3か月未満の短期渡航者は、外務省の「たびレジ」への登録が推奨されています。緊急時は次の番号が役立ちます。
- 警察:191(救急車の要請も可能)
- 観光警察:1155(日本語・英語対応可)
- 消防署:199
- 在タイ日本国大使館:02-696-3000
出典: 外務省 海外安全ホームページ「タイ 安全対策基礎データ」/確認日 2026-08-10
ここまでの内容を、現地でやってよいこと・ダメなことの一覧に整理します。
やってよいこと・ダメなことひと目比較
迷ったときに見返せるよう、判断が分かれやすい4項目を表にまとめました。
| 項目 | OK | NG |
|---|---|---|
| タバコ | 紙巻き200本まで持込み可 | 電子タバコの持込み・所持・使用 |
| 大麻 | 医療目的・成分制限のある食品等 | 娯楽目的の使用、公共の場での吸引 |
| 王室・宗教 | 寺院見学、仏像の鑑賞 | 王室への侮辱、仏像への不敬な行為 |
| 声かけ | 丁寧に断る | お金を見せる、安易に話に乗る |
最後に、旅行前に多く寄せられる疑問を確認しておきましょう。
よくある質問
Q. バンコクに旅行するのは危険ですか?
外務省はバンコクに危険情報を出していません。ただし窃盗や詐欺への警戒は必要です。
Q. どのエリアを避ければいいですか?
カンボジア国境から50km以内と、南部のナラティワート・ヤラー・パッタニー県などです。主要観光地は対象外です。
Q. 電子タバコを持っていくとどうなりますか?
持込みだけでも違反になります。最高で懲役10年または罰金50万バーツの対象です。
Q. 声をかけられたらどう対応すればいいですか?
お金を見せる、話に深入りするなどは避けるのが基本です。不審な誘いは丁寧に断りましょう。
ここまでの要点を最後に整理します。
まとめ
- 主要観光地は危険情報の対象外:バンコク、チェンマイ、プーケット、パタヤに危険情報は出ていない
- 警戒すべきはカンボジア国境と南部:レベル3・レベル2の対象地域には近づかない
- 被害の主流は窃盗と詐欺:「お金を見せて」詐欺や安易な声かけに要注意
- 知らずに違反しやすい法律がある:電子タバコ、不敬罪、大麻の扱いは特に注意
- 出発前の準備が鍵:TDAC登録とたびレジ、緊急連絡先の確認を忘れずに