マドリードから日帰りできるのに、なぜこんなに感動するの?
マドリードから電車でたった1時間半。そんな気軽さで行けるセゴビアですが、実際に足を踏み入れた瞬間、あまりの迫力に言葉を失いました。特にローマ水道橋の前に立った時の衝撃は今でも忘れられません。
セゴビアへはマドリード・チャマルティン駅からAVE(高速鉄道)で約30分、または普通列車で1時間30分程度です。料金は片道13〜25ユーロ程度で、日帰り観光には最適な立地です。朝8時頃にマドリードを出発すれば、夕方まで十分に観光を楽しめます。
水道橋の真下に立った瞬間、古代ローマ人への敬意が湧いてくる
セゴビア駅からタクシーで約10分、市街地に入ると突如として巨大な石造りの構造物が現れます。それがセゴビアのローマ水道橋です。全長728メートル、最高部の高さは28.5メートル。しかし数字では表せない迫力があります。
驚くべきことに、この水道橋は一切のセメントや接着剤を使わずに石を積み上げただけで造られています。紀元1世紀頃、古代ローマ人が17キロ離れた山から水を運ぶために建設しました。2000年近く経った今でも完璧な姿を保っているのです。
水道橋の下を歩いていると、観光客の多くが上を見上げて写真を撮っていますが、ぜひアソゲホ広場から水道橋を見上げてください。石と石の隙間から青空が見える光景は、まさに古代ローマの技術力への賛辞そのものです。
旧市街の石畳を歩けば、中世の商人になった気分?
水道橋から旧市街へ向かう道のりも見どころの連続です。マヨール広場までは徒歩約15分ですが、途中の石畳の道や古い建物を眺めながら歩くと、あっという間に時間が過ぎていきます。
旧市街で特に印象的なのは建物の壁面です。よく見ると、エスグラフィアードという独特の装飾技法が施されています。これは石を削って幾何学模様を作り出す技法で、15〜16世紀にイスラム文化とキリスト教文化が融合して生まれたものです。一見地味に見える建物でも、近づいてよく観察すると精緻な装飾が隠されているのです。
マヨール広場周辺にはカフェやレストランが点在しており、疲れた時の休憩ポイントとして最適です。特に地元産のワインとチーズは絶品で、旅の疲れを癒してくれます。
アルカサルの尖塔から見下ろす景色が、想像以上に絶景だった
セゴビア観光のクライマックスは何と言ってもアルカサルです。まるでおとぎ話に出てくるような美しい城で、ディズニーの「白雪姫」の城のモデルになったとも言われています。
入場料は大人5.5ユーロ、塔への入場は追加で2.5ユーロです(2024年現在)。開館時間は10時から18時(夏期は20時まで)で、月曜日は休館です。城内の見学は約1時間程度ですが、フアン2世の塔に登ることを強くおすすめします。
152段の狭い螺旋階段を登るのは正直きついですが、頂上からの眺望は息をのむ美しさです。セゴビア旧市街が一望でき、遠くには雪を頂いた山々まで見渡せます。特に夕方の時間帯は西日が街を黄金色に染め上げ、まさに絵画のような光景が広がります。
コチニーリョ・アサード、本当にナイフで切れるの?
セゴビア観光で絶対に外せないのが名物料理コチニーリョ・アサード(子豚の丸焼き)です。生後3週間以内の子豚を丸ごとオーブンで焼き上げた伝統料理で、その柔らかさは「ナイフではなく皿で切れる」と言われるほどです。
実際に老舗レストラン「メソン・デ・カンディド」で体験しましたが、本当にお皿の縁で肉がスッと切れるのです。店主が実演してくれるパフォーマンスも見どころの一つで、切り分けた後にお皿を床に叩きつけて割るのが伝統的な作法です。最初はびっくりしますが、これも400年続く伝統の一部なのです。
コチニーリョ・アサードの価格は1人前約25〜30ユーロと決して安くはありませんが、セゴビアでしか味わえない本格的な味です。皮はパリパリ、中身はとろけるような柔らかさで、臭みは一切ありません。付け合わせの焼きたてパンとシンプルなサラダが、豚肉の濃厚な味を引き立てます。
知られざる秘密:水道橋の石に刻まれた謎の文字とは?
多くの観光客が見落としがちですが、水道橋の一部の石には古代ローマ時代の碑文が刻まれています。特に南側の柱の根元部分をよく観察すると、ラテン語で書かれた文字を発見できます。これは建設を指揮した皇帝や総督の名前が刻まれたもので、考古学者の間では貴重な史料として扱われています。
さらに興味深いのは、中世の時代に修復された石と古代ローマ時代の石が混在していることです。色や質感をよく見比べると、微妙な違いが分かります。これは長い歴史の中で何度も修復が行われた証拠で、まさに「生きた遺跡」としての価値を物語っています。
実は冬こそがベストシーズン?
セゴビア観光は春から秋がベストシーズンとされていますが、個人的には12月から2月の冬季を強くおすすめします。観光客が少なく落ち着いて見学できるのはもちろん、雪化粧した水道橋と旧市街の美しさは格別です。
冬のセゴビアは気温が氷点下になることもありますが、その分空気が澄み切って遠くの山々まで鮮明に見渡せます。アルカサルの塔から見る雪景色は、まるで中世の世界に迷い込んだような錯覚を覚えるほど幻想的です。
また、冬季限定で提供されるホットワインや温かいチュロスを片手に街歩きをするのも、この時期ならではの楽しみ方です。寒さを忘れさせてくれる地元の人たちの温かいもてなしも、冬のセゴビアの魅力の一つなのです。