ハワイ島のハワイ火山国立公園は、世界で最も活発な火山の一つであるキラウエア火山を間近で体験できる、地球上でも数少ない場所です。でも正直に言うと、初めて訪れた時は「溶岩なんてそんなに危険じゃないでしょ?」と軽く考えていました。その考えがいかに甘かったかを、身をもって学ぶことになったのです。
え、こんなに広いの?公園の全貌に圧倒される
ハワイ火山国立公園の広さは、なんと約1,350平方キロメートル。東京都の半分以上の面積を誇ります。コナ空港から車で約2時間30分、ヒロ空港からは約45分の距離にあり、入園料は車1台につき30ドル(7日間有効)です。
公園は24時間開園していますが、ビジターセンターは朝9時から夕方5時まで。ここで必ず最新の火山活動情報をチェックしてください。私が初めて訪れた日、係員の方に「今日は風向きが悪いから、この エリアには近づかないで」と注意されたのですが、その理由を後で痛感することになります。
公園内にはチェーン・オブ・クレーターズ・ロードという約30キロの道路があり、標高1,200メートルの火口エリアから海岸まで一気に下ることができます。この道路だけでも半日は楽しめる、まさに地球の営みを感じられるルートです。
溶岩に近づきすぎた失敗談…あの時は本当に危なかった
キラウエア火山のハレマウマウ火口を見学していた時のことです。展望台から見える赤く光る溶岩湖に感動し、「もっと近くで見たい」という気持ちが抑えられませんでした。立入禁止の柵があったのに、「ちょっとだけなら」と境界線を越えてしまったのです。
歩き始めて10分ほど経った頃、突然強い硫黄の匂いと熱風が襲ってきました。目がチカチカして、呼吸が苦しくなります。慌てて戻ろうとした時、足元の岩が崩れて転倒。幸い大きなケガはありませんでしたが、レンジャーの方に発見され、厳しく注意されました。
後で知ったのですが、火山ガスには二酸化硫黄や一酸化炭素などの有毒成分が含まれており、風向きによっては短時間で危険な濃度になることがあるそうです。また、溶岩の表面温度は約1,000度。近くにいるだけで脱水症状を起こす可能性もあります。
知らなかった!溶岩が作り出す意外な自然現象
失敗から学んだ私は、次回の訪問では必ずガイド付きツアーに参加することにしました。そこで知った溶岩の秘密は、本当に驚きの連続でした。
まず、溶岩が海に流れ込む現象「ラバオーシャンエントリー」。溶岩と海水が接触すると、巨大な水蒸気の柱が立ち上がります。この時に発生するのが「ボグ」と呼ばれる酸性の蒸気雲。吸い込むと肺を痛める危険性があるため、風下には絶対に立ってはいけません。
さらに興味深いのが「ペレーの髪」という現象。これは溶岩が風に吹かれて細い糸状になったガラス質の物質で、まるで髪の毛のように見えます。ハワイの火山の女神ペレの髪に例えられているのですが、実は非常に鋭利で素手で触ると危険です。
夜間に見る溶岩の美しさも格別です。暗闇の中で赤く光る溶岩流は、まさに地球の鼓動を感じさせてくれます。ただし、夜間の見学は昼間以上に危険が伴うため、必ず懐中電灯と防護マスクを携帯してください。
これだけは絶対に外せない!必見スポット3選
キラウエア・イキ・トレイルは、1959年の噴火でできた火口湖の底を歩ける4.8キロのハイキングコース。固まった溶岩の上を歩く体験は、他では絶対にできません。所要時間は約3時間で、中級レベルの体力が必要です。
サーストン溶岩トンネルは、溶岩が作り出した自然のトンネル。全長約150メートルの洞窟内は涼しく、溶岩が流れた跡をはっきりと見ることができます。入場は無料で、足元が滑りやすいので歩きやすい靴は必須です。
プウ・ロア・ペトログリフは、古代ハワイ人が岩に刻んだ約23,000個の象形文字が残る場所。1.5キロの往復トレイルの先にあり、ハワイの歴史と文化を感じられる貴重なスポットです。特に夕方の斜光で見ると、文字がくっきりと浮かび上がって神秘的です。
意外と知らない?火山国立公園のマニアックな楽しみ方
実は公園内にはジャガー博物館という小さな施設があり、ここでリアルタイムの地震計データを見ることができます。火山学者になった気分で、地震の波形を観察するのは意外にハマります。入場無料なのに、専門的な展示が充実しているんです。
さらにマニアックなのが「溶岩サンプル収集」。といっても、公園内からの持ち出しは厳禁です。でも指定された場所で溶岩の質感や重さを体感することは可能。玄武岩質の溶岩は意外に軽く、まるでスポンジのような多孔質構造になっています。
地元の人だけが知っているのが、ボルケーノ・ハウス・ホテルでの宿泊体験。1846年創業の歴史あるホテルで、火口を見ながらの朝食は格別です。1泊200ドル程度と決して安くはありませんが、火山の女神ペレに一番近い場所で眠るという貴重な体験ができます。
これで安心!絶対に準備しておくべき持ち物と注意点
私の失敗を踏まえて、必携アイテムをお伝えします。まず防護マスクは絶対必要。火山ガスから身を守る唯一の手段です。薬局で売っているN95マスクで十分効果があります。
飲料水は1人1日2リットル以上を目安に。高温多湿の環境で思った以上に水分を失います。日焼け止めと帽子も必須。標高が高く紫外線が強いため、普段日焼けしない人でも30分で真っ赤になってしまいます。
服装は長袖長ズボンが基本。溶岩の破片が飛んできたり、とがった岩で切り傷を負ったりする危険があります。靴は必ずハイキングブーツを。スニーカーでは靴底が熱で溶ける可能性もあります。
そして最も大切なのは、レンジャーの指示に絶対従うこと。火山活動は予測不可能で、一瞬で状況が変わります。「ちょっとだけなら」という軽い気持ちが、取り返しのつかない事故につながることを、私は身をもって学びました。
ハワイ火山国立公園は、地球の息づかいを感じられる世界でも稀有な場所です。しっかりとした準備と心構えがあれば、一生忘れられない感動体験が待っています。火山の力強さと美しさに圧倒されながらも、自然に対する敬意を忘れずに楽しんでくださいね。