現役王室が住む宮殿で迷子になった話〜ドロットニングホルム宮殿の隠された秘密と観光の落とし穴

え、まだ王室が住んでるって本当?

ドロットニングホルム宮殿の壮麗な外観

スウェーデンのドロットニングホルム宮殿を訪れて、まず驚いたのが「ここ、本当に現役の宮殿なんだ」という実感でした。ストックホルム中心部から西に約11キロ、ローヴェン島に佇むこの宮殿は、なんと現在もスウェーデン王室の公邸として使用されています。

1981年にユネスコ世界遺産に登録されたこの宮殿は、17世紀に建設が始まり、「北欧のヴェルサイユ」とも呼ばれています。でも実際に足を踏み入れてみると、フランスのヴェルサイユ宮殿とは全く違う、北欧独特の落ち着いた美しさがあるんです。

入場料は大人150スウェーデンクローナ(約1,800円)で、5月から9月の夏季は午前10時から午後4時30分まで開館しています。冬季は週末のみの開館となるので、計画を立てる際は要注意です。

迷路のような宮殿内部で道に迷う?

宮殿内部の豪華な装飾が施された部屋

宮殿内部に足を踏み入れた瞬間、その複雑さに圧倒されました。実は私、最初の訪問時に完全に道に迷ってしまったんです。宮殿は想像以上に巨大で、部屋数は600以上。一般公開されているのはそのうちの一部ですが、それでも十分に迷子になれます。

国賓の間図書室ホワイト・シー・サロンなど、各部屋にはそれぞれ異なるテーマの装飾が施されており、まるで美術館を歩いているような感覚です。特に印象的だったのが、カール11世の寝室。ここは現在でも王室の公式行事で使用されることがあるそうで、ロープが張られているものの、その豪華さは圧巻でした。

音声ガイドは日本語版もあるので、各部屋の歴史や装飾品について詳しく知ることができます。ただし、約2時間のコースなので、途中で疲れてしまう可能性も。私のおすすめは、事前にどの部屋を重点的に見たいかを決めておくことです。

300年前の劇場で今も上演される奇跡って?

歴史ある宮廷劇場の内部

ドロットニングホルム宮殿の敷地内にある宮廷劇場は、私が最も感動した場所です。1766年に建設されたこの劇場は、現在でも使用されている世界最古の劇場の一つなんです。しかも、18世紀当時の舞台装置や機械仕掛けがそのまま保存されており、今でも実際に使用されています。

夏季には毎年オペラやバレエの公演が行われており、300年前とほぼ同じ環境で芸術を鑑賞することができるんです。チケットは500~2,000スウェーデンクローナ(約6,000~24,000円)と決して安くはありませんが、この体験は他では絶対に味わえません。

劇場のガイドツアーに参加すると、舞台裏の機械仕掛けも見学できます。手動で動かす波の効果音装置や、雷の音を出すための巨大なドラムなど、当時の技術の素晴らしさに驚かされます。劇場単体の入場料は120スウェーデンクローナです。

王室プライベートエリアに足を踏み入れた瞬間

美しく整備された宮殿の庭園

宮殿の南側に広がるバロック様式の庭園は、一般開放されている貴重なエリアです。でも実は、この庭園のさらに奥には王室のプライベートエリアがあり、一般人は立ち入ることができません。

庭園を散策していると、時々遠くに現代的な建物が見えることがあります。これが現王室の実際の住居部分です。セキュリティの関係で詳しい場所は公表されていませんが、まさに「生きている宮殿」であることを実感する瞬間です。

庭園自体は無料で散策でき、バロック様式の幾何学的な花壇や、18世紀に造られた噴水など、見どころがたくさんあります。春から初夏にかけては花々が美しく咲き誇り、地元の人々のピクニックスポットとしても人気です。

アクセスで知っておくべき意外な落とし穴

宮殿へと続く美しいアプローチ

ストックホルム中心部からのアクセスは、地下鉄とバスを乗り継ぐのが一般的ですが、実は季節限定の蒸気船がおすすめです。5月から9月まで、市庁舎前から約50分の船旅を楽しめます。料金は片道190スウェーデンクローナですが、湖上から宮殿を眺める体験は格別です。

地下鉄を利用する場合は、グリーンライン(T17)でブロンマ駅まで約20分、そこから301番または323番バスに乗り換えて約15分でドロットニングホルム宮殿に到着します。意外な落とし穴は、バスの本数が少ないこと。特に冬季は1時間に1本程度なので、事前に時刻表をチェックしておきましょう。

実は私、最初の訪問時にこれを知らずに帰りのバスを2時間近く待つことになりました。宮殿周辺にはカフェが少ないので、時間つぶしに苦労したのを覚えています。

知る人ぞ知る、中国離宮の謎

宮殿から徒歩約15分の場所にある中国離宮は、多くの観光客が見落とす隠れた名所です。1753年にロヴィーサ・ウルリカ王妃のために建設されたこの建物は、当時ヨーロッパで流行していた中国趣味の傑作です。

内部には本物の中国磁器や漆器が展示されており、18世紀のヨーロッパ人が抱いていた東洋への憧憬を感じることができます。入場料は別途80スウェーデンクローナが必要ですが、宮殿とは全く異なる雰囲気を味わえるので、時間があればぜひ足を運んでみてください。

現地で気づいた実用的なコツ

ドロットニングホルム宮殿を訪れる際の実用的なアドバイスをいくつか。まず、館内は階段が多く、バリアフリー設備は限られています。歩きやすい靴は必須です。

また、館内での写真撮影は基本的に禁止されているので、美しい装飾を目に焼き付けることに集中しましょう。庭園での撮影は自由なので、カメラの充電は十分にしておくことをおすすめします。

レストランは宮殿内にはなく、最寄りのカフェまで徒歩約10分かかります。長時間の見学になるので、水分補給用の飲み物を持参すると安心です。

現役の王室が住む宮殿という特別感と、300年の歴史が息づく空間での体験は、きっとあなたの北欧旅行の最高の思い出になるはずです。ただし、迷子にならないよう、館内地図は必ず手に入れてくださいね。