アレクサンドリア観光で絶対に見逃してはいけない「地下に眠る古代の秘密」とは?

なぜアレクサンドリアは「失われた古代都市」と呼ばれるのか?

エジプト第二の都市アレクサンドリア。カイロから北へ約220キロ、地中海に面したこの港町は、実は現在見えている街の下に、もう一つの古代都市が眠っているのをご存知でしょうか。アレクサンドロス大王が紀元前331年に建設したこの都市は、地震や津波によって大部分が海底に沈み、現在の街の地下深くに埋もれています。

私が初めてアレクサンドリアを訪れた時、ガイドさんから「足の下には2000年前の街がある」と聞いて、思わず足元を見下ろしてしまいました。観光地として有名なピラミッドとは全く違う、まさに「生きた考古学現場」がここにあるのです。

アレクサンドリアってどうやって行くの?

カイロからアレクサンドリアへは、エジプト国鉄で約2時間半(1等車で約80エジプトポンド)、またはバスで約3時間です。私のおすすめは断然電車。地中海が見えてくる瞬間の爽快感は格別で、砂漠の国エジプトにいることを一瞬忘れてしまいます。

古代世界最大の図書館の謎に迫る?

アレクサンドリア図書館といえば、古代世界で最も有名な知の殿堂。しかし実は、現在の新アレクサンドリア図書館(Bibliotheca Alexandrina)は2002年に再建されたもので、古代の図書館とは別の場所にあります。

新図書館で感じる古代への憧憬

新図書館の建物は円盤状で、まるで地中海から昇る太陽のよう。入場料は大人70エジプトポンド(約500円)で、毎日午前9時から午後7時まで開館しています。ここで驚いたのは、古代パピルス文書の復元作業を実際に見学できること。職人さんが一枚一枚丁寧にパピルスを作る様子は、まさに古代エジプトの技術の継承そのものです。

実際に古代図書館があった場所は、現在の街中に石柱が数本残るのみ。しかし考古学者によると、地下5メートルの地点に古代図書館の基礎部分が眠っているとされています。街を歩いていると、時々発掘現場に出くわすことがあり、まさに「街全体が遺跡」なのです。

ポンペイウスの柱で古代ローマ時代を体感

市内で最も目立つ遺跡といえば、ポンペイウスの柱(Pompey’s Pillar)。高さ27メートルの赤い花崗岩の柱が、住宅街の中にポツンと立っています。

実はローマ皇帝ディオクレティアヌスの記念碑?

名前は「ポンペイウス」ですが、実際は3世紀後半にローマ皇帝ディオクレティアヌスを記念して建てられたもの。この誤解は中世の十字軍時代から続いており、現地ガイドさんでも間違って説明する人がいるほど根深い問題です。

入場料は80エジプトポンド、営業時間は午前9時から午後5時。柱の周りには古代セラピス神殿の遺跡が散在しており、よく見るとスフィンクスの石像が数体転がっています。観光客の多くは柱だけ見て帰ってしまいますが、実はこれらの小さな遺物にこそ、古代アレクサンドリアの多文化性が表れているのです。

カタコンベで古代キリスト教徒の生活を覗く?

アレクサンドリアで最も神秘的な場所といえば、コム・エル・ショカファのカタコンベ。地下3層にわたる巨大な地下墓地で、1世紀から4世紀にかけて使用されていました。

エジプトとローマとギリシャが混在する不思議な空間

地下に降りると、まず驚くのがその装飾の多様性。エジプトの神々とローマの神々、そしてキリスト教のシンボルが同じ壁面に刻まれているのです。これは当時のアレクサンドリアが、いかに国際的で宗教的寛容性があったかを物語っています。

入場料は100エジプトポンド、午前9時から午後5時まで開放。地下は年中18度前後で涼しく、カイロの暑さに疲れた体には天国のよう。ただし、狭い螺旋階段を地下18メートルまで下る必要があるため、閉所恐怖症の方は注意が必要です。

特に興味深いのは「トリクリニウム」と呼ばれる宴会場。古代の人々は、亡くなった家族を偲んで地下でお食事会を開いていたのです。現在でも石のベンチや食器を置いた痕跡がはっきりと残っています。

アレクサンドリアの海岸線に隠された古代の港?

コルニーシュ通りを歩いていると、美しい地中海の景色に心を奪われますが、実はこの海底に古代アレクサンドリアの王宮区域や灯台ファロスの遺跡が沈んでいます。

世界で唯一の「海中考古学博物館」計画

フランスの海洋考古学者フランク・ゴディオ氏が1990年代から調査を続けており、これまでに数千点の遺物を海底から引き上げています。現在、海中に透明なトンネルを作り、海底遺跡を直接見学できる博物館の建設が計画されており、2025年の完成を目指しています。

東港の浅瀬では、潮が引いた時に古代の石材が海面に顔を出すことがあります。地元の漁師さんに聞くと「昔から網に石像が引っかかる」とのこと。私も運良く、波打ち際で古代の陶器の破片を発見できました。

現代アレクサンドリアの意外な一面とは?

観光地巡りに疲れたら、アッティーン地区を散策してみてください。ここは19世紀から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパ系住民が多く住んでいたエリアで、今でもアール・ヌーヴォー様式の建物が残っています。

地中海風コーヒーハウスでひと休み?

特におすすめなのが老舗カフェ「ブラジリアーナ」。1929年創業で、店内は古いヨーロッパ映画のワンシーンのよう。トルココーヒーとバクラヴァのセットで50エジプトポンドです。ここで地元の知識人たちが政治や文学について熱く語り合う姿は、古代図書館時代の学者たちと重なって見えます。

アレクサンドリアの魚市場も見逃せません。早朝5時から午前10時頃まで、地中海で取れた新鮮な魚が並びます。シーバスやヒラメ、時にはマグロまで手に入り、その場で調理してくれるレストランも併設されています。

アレクサンドリア観光で気をつけたいポイントは?

最後に実用的なアドバイスを。アレクサンドリアは海岸都市なので、11月から3月は意外に寒くなります。私が1月に訪れた時は、最低気温が8度まで下がり、持参した夏服では全く対応できませんでした。

知っておきたい地元のマナー

また、旧市街のアンファーシ地区は保守的なエリアです。モスクの近くでは肌の露出を控えめにし、金曜日の午後は礼拝時間を避けて観光するのが賢明です。

タクシーを利用する際は、メーターが動いているかを確認してください。観光地周辺では「メーター故障」と言われることが多いのですが、事前に料金交渉することで半額程度になることがほとんどです。

アレクサンドリアは確かに「失われた都市」ですが、現在も発掘調査が続く「生きた考古学現場」でもあります。ピラミッドのような完成された観光地とは違い、謎に満ちた古代都市の一部を自分自身で発見する楽しさがここにはあります。地下に、海底に、そして街角に隠された古代の痕跡を探しながら歩く一日は、きっと忘れられない旅の思い出になるはずです。