メキシコの隠れた宝石、オアハカってどんな場所?
メキシコシティから南東へ約550キロ、飛行機で1時間半の場所にあるオアハカ州の州都オアハカ・デ・フアレス。人口約26万人のこの街は、ユネスコ世界文化遺産に登録された美しいコロニアル建築と、メキシコ先住民文化が色濃く残る魅力的な観光地です。標高約1,550メートルの高原にあるため、年間を通して過ごしやすい気候なのも嬉しいポイント。
でも、オアハカの真の魅力は表面的な美しさだけではありません。ここは「美食の都」として知られ、メキシコ料理の原点とも言える伝統的な味に出会える場所なんです。
ソカロ周辺で感じる、時が止まったような午後
オアハカ観光の起点となるのが、街の中心部にあるソカロ(中央広場)です。正式名称はアルマス広場で、周囲をカフェやレストラン、お土産屋が取り囲んでいます。夕方になると地元の人々が集まり、マリアッチの演奏が始まることも。
ソカロの北側に堂々とそびえるのがオアハカ大聖堂。16世紀に建設が始まったこの教会は、地震の多いこの地域の特性を考慮して、他のメキシコの教会よりも低く、頑丈に造られています。内部は意外にもシンプルで、静寂に包まれた空間で心を落ち着けることができます。入場は無料で、朝6時から夜8時まで開いています。
モンテ・アルバン遺跡で古代文明の謎に触れる?
オアハカ市内から車で約30分、標高約2,000メートルの山頂に広がるモンテ・アルバン遺跡は、紀元前500年頃から栄えたサポテカ文明の聖地です。入場料は80ペソ(約600円)で、朝8時から夕方5時まで見学できます。
この遺跡の最大の謎は、なぜわざわざ山の頂上を平らに削って都市を建設したのかということ。一説によると、天体観測のためだったとも言われていますが、真相は今も謎に包まれています。
特に注目したいのが「踊る人々の石版」と呼ばれる謎めいた彫刻群。長い間、踊っている人々を描いたものだと考えられていましたが、現在では捕虜や生贄を表現したものという説が有力です。メキシコの古代文明の複雑さを物語る、興味深い遺物ですね。
イエルベ・エル・アグアの絶景、でも行くのは大変?
オアハカから約70キロ離れたイエルベ・エル・アグアは、石灰分を多く含む温泉水が長い年月をかけて作り上げた天然の石灰棚。まるでトルコのパムッカレのような絶景が楽しめます。
ただし、ここに行くのは一筋縄ではいきません。公共交通機関は限られており、オアハカ市内からツアーに参加するか、レンタカーを借りるのが一般的。ツアーは1人約1,500ペソ(約11,000円)で、往復約8時間の長旅になります。
現地では天然プールで泳ぐことも可能ですが、水温は年間を通して約22度とそれほど温かくありません。また、高度が約1,800メートルあるため、午後になると雲がかかって絶景が見えなくなることも。午前中の早い時間に訪れることをおすすめします。
チャプリネス(虫料理)に挑戦する勇気はある?
さて、ここからがオアハカ観光の真骨頂です。この街はチャプリネス(バッタの塩焼き)で有名なんです。20デ・ノビエンブレ市場や、ソカロ周辺の屋台で1袋約50ペソ(約370円)で販売されています。
初めて見たときは正直、足がすくみました。でも地元の人に勧められて恐る恐る口に入れてみると…これが意外にもビールのおつまみにぴったり!塩味が効いていて、食感はエビせんのようなパリパリ感。タンパク質も豊富で、実は栄養価の高い食品なんです。
他にもエスカモーレス(アリの卵、通称「昆虫のキャビア」)や、グサノス・デ・マゲイ(アガベの幼虫)なども味わえます。これらは高級食材で、メキシコシティの高級レストランでも提供されているほど。
本場のモレ・ネグロは別格の美味しさ
オアハカはモレ・ネグロ発祥の地としても知られています。モレとは、チョコレートとスパイスを30種類以上組み合わせた複雑なソースのこと。特にオアハカのモレ・ネグロは、作るのに2日間かかるという手の込んだ一品です。
ソカロ周辺のレストラン「カサ・オアハカ」では、伝統的なレシピで作られたモレ・ネグロが味わえます。価格は約250ペソ(約1,800円)。最初は「チョコレートと鶏肉?」と疑問に思うかもしれませんが、一口食べれば複雑で奥深い味わいに驚くはずです。
メスカルの聖地で本物の味を知る
オアハカはメスカルの生産地としても有名です。テキーラがブルーアガベから作られるのに対し、メスカルは様々な種類のアガベから作られ、より複雑な味わいが楽しめます。市内にあるメスカレリア・イン・シトゥでは、様々な種類のメスカルをテイスティングできます。1杯約80ペソ(約600円)から。
地元の人が教えてくれた飲み方は、オレンジにチャプリネスの粉をまぶして一緒に食べること。最初は「えっ?」と思いましたが、これが驚くほど相性抜群なんです。
知られざるオアハカの夜の顔とは?
観光ガイドブックにはあまり載っていませんが、オアハカの夜は意外にも活気があります。特に木曜日と土曜日の夜、ソカロでは「ラ・グエラゲッツァ」と呼ばれる民族舞踊の無料パフォーマンスが行われることがあります。
また、アルカラ通りにある「ラ・ビズナガ」というバーでは、地元のアーティストによるライブ演奏を楽しめます。入場料は約100ペソ(約750円)。観光客はほとんどおらず、地元の若者で賑わう隠れた名店です。
買い物で気をつけたい「本物」と「偽物」の見分け方
オアハカの織物やアレブリヘ(色鮮やかな木彫りの動物)は有名ですが、市場には大量生産品も混じっています。本物の手織り織物は、裏面を見ると糸の始末が手作業の跡を残しており、価格も1枚300ペソ(約2,200円)以上します。
20デ・ノビエンブレ市場では値段交渉が基本。最初に提示される価格の3分の2程度まで下げることができますが、あまり強引に交渉するのは禁物です。「ムイ・カロ(とても高い)」と言いながら、笑顔で交渉するのがコツ。
オアハカ滞在で気をつけておきたいこと
オアハカは比較的治安の良い街ですが、夜遅くの一人歩きは避けましょう。また、高地にあるため、到着初日は軽い高山病症状を感じる人もいます。水分補給をこまめに行い、最初の1〜2日は無理をしないことが大切です。
6月から9月は雨季にあたり、午後になると激しいスコールが降ることがあります。朝のうちに屋外の観光を済ませ、午後は屋内で過ごすプランを立てると良いでしょう。
メキシコシティからの直行便は1日3〜4便運航しており、航空券は往復で約8,000ペソ(約60,000円)から。陸路だと約6時間かかるバスもありますが、飛行機での移動がおすすめです。
オアハカは、メキシコの真の文化と伝統に触れられる貴重な場所。虫料理に挑戦したり、古代文明の謎に思いを馳せたり、ここでしかできない体験があなたを待っています。