なぜカシュガルに行くべきなのか?中国なのに中国じゃない不思議な街
カシュガルと聞いて「どこそれ?」と思った方、実はとんでもない場所を見逃しています。新疆ウイグル自治区の西端に位置するこの街は、シルクロードの要衝として2000年以上も栄え続けた生きた歴史書なんです。
中国の最西端でありながら、街を歩けばウイグル語が飛び交い、モスクの礼拝の呼び声が響く。漢字の看板の下にアラビア文字が併記され、羊の串焼きの煙が立ち上る光景は、まさに「中国なのに中国じゃない」異世界体験そのものです。
あの有名な日曜バザールは本当にすごいの?現地で感じた圧倒的なエネルギー
カシュガル日曜バザールは間違いなく中央アジア最大級の市場です。毎週日曜日、東郊外の家畜市場には周辺数百キロから商人たちが集まり、羊、牛、馬、ロバ、ラクダまでもが売買されます。
朝8時頃から始まるこの市場で、私が一番驚いたのは商売の激しさ。羊一匹の値段を巡って、買い手と売り手が1時間以上も交渉している光景は圧巻でした。価格は時期により変動しますが、羊一匹が1500元~2500元(約3万円~5万円)程度。現金での取引が基本で、札束が飛び交う様子は映画のワンシーンのようです。
バザール内ではナンやラグマン(手延べ麺)の屋台も出店し、朝から夕方まで地元の人々で賑わいます。観光客は少数派なので、本当のウイグル文化に触れられる貴重な機会です。
旧市街地で迷子になった話:まるで中世にタイムスリップ?
カシュガル旧市街(老城区)は、現存する中央アジア最大級の土造り建築群です。狭い路地が迷路のように入り組み、2階建ての伝統的なウイグル住宅が軒を連ねています。
ここで注意したいのが、本当に迷子になりやすいということ。GPSも建物に遮られてうまく機能しないことが多く、私も3時間近く同じ場所をぐるぐる回った経験があります。地元の人は親切ですが、中国語が通じない場合も多いので、主要な目印を覚えておくことをお勧めします。
旧市街の中心にあるエイティガール・モスクは、中国最大のモスクの一つ。黄色いレンガ造りの外観が美しく、毎日5回の礼拝時間(日の出前、正午、午後、日没後、夜)には多くの信者が集まります。観光客の見学も可能ですが、金曜日の集団礼拝時は避けた方が無難です。
ここでしか食べられない本場の味って?羊料理の奥深さに感動
カシュガルの食文化は、中央アジア、中東、中国の影響が混在する独特なもの。特にポロ(ピラフ)は絶対に味わってほしい一品です。
地元で人気の「阿布拉的馕」では、伝統的な炭火窯で焼く各種ナンが味わえます。営業時間は朝7時から夜10時頃まで、1枚3元~8元(約60円~160円)と非常にリーズナブル。胡麻やケシの実をトッピングしたナンの香ばしさは、日本では絶対に味わえません。
意外に知られていないのが「ダパンジー」(大盤鶏)という鶏肉料理。じゃがいもと鶏肉をスパイスで煮込んだもので、最後にベルトのように太い手延べ麺を投入して食べます。2~3人前で40元~60元(約800円~1200円)程度で、ボリューム満点です。
宿泊や移動で困ったこと:リアルな現地事情を教えます
カシュガルでの宿泊は、事前予約が必須です。外国人が泊まれるホテルは限定されており、到着してから探すのは困難。カシュガル国際ホテルや天南大酒店など、外国人受け入れ可能なホテルは1泊300元~800元(約6000円~16000円)程度。
空港から市内まではタクシーで約30分、料金は50元~80元(約1000円~1600円)。市内の移動は路線バスが便利で、1回2元(約40円)。ただし、バスの路線図や案内はウイグル語と中国語のみなので、事前に確認が必要です。
時差にも要注意。北京時間が使われていますが、実際の生活時間は2時間遅れ。現地の人は「新疆時間」で動いているので、約束の時間は必ず確認してください。
実際に感じた治安と注意点:安全に楽しむためのコツ
カシュガルの治安は、想像以上に良好です。街の至る所に監視カメラが設置され、警備も厳重。夜遅くでも女性一人で歩いている光景も珍しくありません。
ただし、写真撮影には十分な注意が必要です。政府施設、軍事関連施設、検問所などは撮影禁止。また、人物を撮影する際は必ず許可を取ってください。特に年配の女性は撮影を嫌がる傾向があります。
現金は多めに準備しましょう。クレジットカードが使える場所は限定的で、ATMも中国の銀行カードのみ対応の場合が多いです。両替は銀行で行うのが確実で、営業時間は平日の10時から18時まで(昼休み14時~16時)です。
カシュガルでしか体験できない特別な瞬間とは?
最も印象深かったのは、ウイグル族の伝統工芸職人街での体験です。旧市街の一角には、代々受け継がれる手工芸の工房が点在しています。特に「買合買提手工芸品店」では、職人が目の前でナイフや楽器を手作りする様子を見学できます。
ここで出会った70歳の職人アブドラさんは、50年以上ナイフ作りを続けてきました。彼が作る英吉沙小刀(インジシャナイフ)は、刃の部分に美しい模様が施され、一本300元~1500元(約6000円~3万円)。大量生産品とは比べ物にならない芸術品です。
驚いたのは、このナイフ作りの技術が親から子へと口伝で受け継がれていること。文字に残された設計図などは一切なく、すべて手の感覚と経験で作り上げているのです。
季節ごとの魅力:いつ行くのがベスト?
カシュガルのベストシーズンは5月から10月です。特に9月から10月は、ブドウやザクロなどの果物が最も美味しい時期。街角の果物屋では、日本では高級品扱いの大粒ブドウが1キロ10元(約200円)程度で購入できます。
冬季(12月~2月)は氷点下になることも多く、観光には不向き。ただし、雪化粧したパミール高原の景色は絶景です。この時期に訪れるなら、防寒具は必須アイテム。
意外な穴場シーズンは3月下旬から4月上旬。アーモンドの花が咲き乱れ、街全体がピンクに染まります。観光客も少なく、ゆっくりと街歩きを楽しめる隠れたベストタイミングです。
帰国後も忘れられない:カシュガルが教えてくれたこと
カシュガルを訪れて最も感じたのは、「多様性の美しさ」です。異なる民族、宗教、文化が一つの街で共存している姿は、現代社会が忘れがちな大切なことを教えてくれます。
バザールで出会った商人のおじさんが、片言の中国語で「遠くから来てくれてありがとう」と言ってくれた時の温かさ。言葉は通じなくても、人と人との心のつながりを感じた瞬間でした。
カシュガルは決して楽な観光地ではありません。言葉の壁、文化の違い、不便さもたくさんあります。でも、その分だけ得られる体験の価値は計り知れません。シルクロードの風を感じ、本物の文化に触れたいなら、カシュガルは間違いなく一生に一度は訪れるべき場所です。