カナダ西部の都市カルガリーと聞いて、どんなイメージを持ちますか?「バンフへの玄関口でしょ?」「石油の街で観光地じゃないよね?」そんな風に思っていた私は、3日間の滞在で完全に考えを改めることになりました。実際に歩いてみると、この街には「普通の観光ガイド」では絶対に教えてくれない、驚くべき魅力が隠されていたのです。
到着してすぐ感じた「あれ?意外と面白そう」
カルガリー国際空港からダウンタウンまでは約30分。タクシーで50カナダドル程度ですが、実はCTrain(電車)なら片道3.5カナダドルで市内中心部まで行けてしまいます。空港から電車で移動できる都市って、実はそれほど多くないんですよね。
ダウンタウンに着いて最初に驚いたのは、街の清潔さでした。そして何より印象的だったのが、プラス15(Plus 15)と呼ばれる2階レベルの歩行者通路システム。これ、実はギネス世界記録に認定された世界最大の屋内歩行者ネットワークなんです。総延長16キロメートルにも及ぶこの空中回廊は、カルガリーの厳しい冬を乗り切るために作られたもの。でも観光客の私には、まるで空中都市を探検しているような不思議な体験でした。
カルガリータワーから見えた「この街の正体」って?
やっぱり街を理解するには高いところから見下ろすのが一番。カルガリータワー(191メートル)の展望台へ上がってみました。入場料は大人18カナダドル、営業時間は9時から22時までです。
ここから見える景色で気づいたのは、カルガリーという街の特殊な立地です。東には大平原が果てしなく続き、西にはロッキー山脈の雄大な山々が連なっている。つまり、大平原と山脈の境界線に位置する街なんですね。この地理的な特徴こそが、カルガリーの独特な文化を生み出している理由だったんです。
展望台にいた地元のガイドさんが教えてくれたマニアックな話:実はカルガリータワーの先端には、1988年の冬季オリンピックの際に設置された「オリンピックの聖火台」があるそうです。普段は見えませんが、特別なイベントの時にはまだ点灯されることがあるとか。35年以上経った今でも現役なんて、なんだかロマンチックですよね。
スティーブンアベニュー・ウォークで発見した「意外すぎるグルメ」
ダウンタウンの歩行者天国、スティーブンアベニュー・ウォークを歩いていて驚いたのは、レストランの多様性でした。石油産業で働く多国籍な人々が集まる街だからでしょうか、本格的なエチオピア料理、ペルー料理、レバノン料理のレストランがずらりと並んでいるんです。
特におすすめしたいのが、アルバータ牛のステーキ。カナダ屈指の牛肉生産地だけあって、品質は本当に素晴らしいんです。私が訪れた「Charbar」では、28日間熟成されたリブアイステーキが42カナダドルでいただけました。これ、東京で食べたら倍以上しそうな品質です。
でも本当に驚いたのは、Vietnamese Submarineというベトナム系のサンドイッチショップ。バインミーが6カナダドルという安さなのに、具材の新鮮さと味のバランスが絶妙でした。カルガリーには意外にもベトナム系移民のコミュニティがあり、本格的なフォーやバインミーが楽しめるんです。
ヘリテージパークで体験した「タイムスリップ感」がすごい
カルガリー市内から車で約30分の場所にあるヘリテージパークは、カナダ西部最大の歴史村です。入場料は大人28カナダドル、5月から9月まで営業(時間は10時から17時)。
ここで体験できるのは、1860年代から1950年代のカナダ西部の暮らし。でも、ただの展示施設じゃありません。本物の蒸気機関車に乗って園内を回り、本物の蒸気船でGlenmore Reservoirをクルーズできるんです。スタッフは全員時代衣装を着て、その時代の人になりきって案内してくれます。
私が特に感動したのは、1920年代のベーカリーで焼きたてのパンを買えること。当時のレシピで作られたパンの味は、現代のものとは全く違う素朴な美味しさでした。そしてマニアックな見どころは、1900年代初頭の歯科医院の再現展示。当時の治療器具を見ると、現代に生まれて良かったと心底思います(笑)。
プリンス・アイランド・パークで遭遇した「野生動物」って?
ダウンタウンから徒歩圏内にあるプリンス・アイランド・パークは、ボウ川の中州にある自然公園です。「街なかに自然があるなんて、よくある話でしょ?」と思っていた私は、ここで予想外の出会いを体験することになりました。
散歩していると、川沿いの木々の間からビーバー
さらに驚いたのは、公園内でコヨーテの目撃情報があること。もちろん危険はないように管理されていますが、これほど都市部で多様な野生動物が見られる場所は珍しいですよね。園内には野生動物との適切な距離を保つための看板も設置されていて、カルガリーの自然との共生意識の高さを感じました。
カナダ・オリンピック・パークで味わった「元オリンピック会場の迫力」
市内から車で約20分のカナダ・オリンピック・パークは、1988年冬季オリンピックのスキージャンプとボブスレー会場だった場所。今でも現役の競技施設として使われているんです。
ここでの最大のハイライトは、ボブスレー体験ライド!実際のオリンピックコースを時速120キロで駆け抜ける体験は、一生忘れられない思い出になりました。料金は1回65カナダドル、年中無休で営業しています。安全装備もしっかりしているので、特別な技術は必要ありません。
マニアックな話ですが、このコースは現在でも国際大会で使用されていて、私が訪れた日の翌週には実際にワールドカップの試合が予定されていました。オリンピック遺産を単なる観光施設で終わらせず、現役の競技施設として活用し続けているところに、カルガリーの姿勢を感じました。
夜のカルガリーで発見した「隠れたパブ文化」
カルガリーの夜は意外にも奥が深いんです。特に17th Avenue SW(通称:Red Mile)には、地元の人々が愛する個性的なパブが点在しています。
「The Ship & Anchor Pub」では、地元ブルワリーのBig Rock Beerが味わえます。このビール、実はカルガリー発祥で、地元の大麦を使って作られているんです。1杯7カナダドル程度で、ほのかな甘みとすっきりした後味が特徴的でした。
もう一つ印象的だったのは、パブでの地元の人たちとの会話。石油業界で働く人、牧場主、大学の研究者など、本当に多様なバックグラウンドを持つ人々が自然に交流している光景は、まさにカルガリーらしさを象徴していました。
最終日に気づいた「カルガリーの本当の魅力」
3日間の滞在を終えて気づいたのは、カルガリーの魅力は「完成された観光地の美しさ」ではなく、「変化し続ける都市の生命力」にあるということでした。
石油産業の街として発展してきたこの都市は今、持続可能なエネルギーやテクノロジー分野への転換を図っています。そんな変化の時期だからこそ、新しいものと古いものが混在する独特な雰囲気が生まれているんですね。
最後にお伝えしたい実用的な情報:カルガリーの公共交通機関は1日券が10.75カナダドルで、CTrain(電車)とバスが乗り放題です。主要観光スポットはほぼ公共交通機関でアクセスできるので、レンタカーなしでも十分楽しめます。
「バンフに行く前に1泊だけ」と軽く考えていたカルガリーでしたが、この街だけで1週間は滞在したくなりました。表面的な観光スポットの裏に隠された、本当のカルガリーの魅力を発見する旅。それは、きっとあなたの旅の概念も変えてくれるはずです。