サルタ観光で私が体験した「美しすぎて息ができなくなる」アルゼンチン北部の隠れた絶景と、観光客が絶対に知らない地元の秘密

なぜサルタが「アルゼンチンの隠れた宝石」と呼ばれるのか?

ブエノスアイレスから北へ1,500キロ。アルゼンチン北部のサルタ州に位置するサルタは、多くの日本人観光客がまだ知らない南米の秘境です。標高1,152メートルの高地にあるこの街は、スペイン植民地時代の建築が美しく保存され、「ラ・リンダ(美しい街)」という愛称で親しまれています。

私が初めてサルタを訪れたとき、その美しさに文字通り息を呑みました。それは高地による酸素の薄さだけではなく、想像をはるかに超えた景観の壮大さに心を奪われたからです。

サルタ市内で絶対に見逃せない「コロニアル建築の宝庫」とは?

サルタの魅力は、何といっても9 de Julio広場を中心とした歴史地区にあります。1582年に建設されたこの街の心臓部には、ピンクと白のコントラストが美しいサルタ大聖堂が堂々と佇んでいます。入場は無料で、毎日午前6時から午後8時まで開放されています。

特に注目すべきは、大聖堂内部に安置されている「ミラグロのキリスト像」「ミラグロの聖母像」です。地元の人々によると、1692年の大地震の際に奇跡的に無傷で残ったとされ、現在でも多くの巡礼者が訪れます。毎年9月には「ミラグロ祭り」が開催され、南米全土から約100万人の信者が集まる一大イベントとなります。

観光客が知らない「カビルド歴史博物館」の隠れた見どころ

9 de Julio広場の北側にあるカビルド歴史博物館(入場料:大人50ペソ、火曜日から日曜日の午前9時から午後7時まで)では、サルタの歴史を深く知ることができます。しかし、ほとんどのガイドブックには載っていない秘密があります。

それは地下に残る「植民地時代の監獄跡」です。スペイン統治時代の囚人たちが実際に使用していた独房が、当時のまま保存されているのです。壁に刻まれた囚人たちの落書きや、手作りの脱獄用具の跡まで残っており、歴史の生々しさを感じることができます。

「雲の列車」で体験する世界屈指の絶景ルートの真実

サルタ観光のハイライトといえば、「Tren a las Nubes(雲の列車)」でしょう。しかし、多くの観光客が抱いている期待と現実には大きなギャップがあることを、正直にお伝えしなければなりません。

期待と現実のギャップを知っていますか?

かつて雲の列車は、サルタから標高4,220メートルのラ・ポルボリージャ高架橋まで、約15時間かけて往復する鉄道の旅でした。しかし現在は、バスでサン・アントニオ・デ・ロス・コブレスまで移動し、そこから約1時間半の鉄道区間のみとなっています。

運行は4月から11月の土曜日のみで、料金は大人1人約150ドル(約2万円)。決して安くはありませんが、ラ・ポルボリージャ高架橋から見下ろす景色は、まさに息を呑む美しさです。標高4,220メートル、全長224メートルのこの高架橋からは、雲海に浮かぶアンデス山脈の峰々を一望できます。

地元民だけが知る「最高の撮影スポット」

観光客の99%が知らない秘密の撮影スポットがあります。それは高架橋から徒歩約10分の「ミラドール・セクレト(秘密の展望台)」です。地元のガイドしか知らないこの場所からは、高架橋全体を俯瞰でき、列車が通過する瞬間を完璧なアングルで撮影できます。

サルタのグルメで「絶対に食べるべき」地元料理とは?

サルタの食文化は、アンデス先住民の伝統とスペイン植民地時代の影響が融合した、独特の味わいを持っています。

「エンパナーダ・サルテーニャ」の秘密のレシピ

エンパナーダ・サルテーニャは、サルタ州発祥とされる小麦粉の皮で具材を包んだ郷土料理です。一般的なエンパナーダとの違いは、生地にラードの代わりに牛脂を使用し、具材にはみじん切りの牛肉、玉ねぎ、ジャガイモ、ゆで卵、オリーブが入ることです。

地元の人に教えてもらった最高の店は、「Doña Salta」(9 de Julio通り492番地)です。1個約80ペソで、朝8時から夜10時まで営業しています。4代続く家族経営で、祖母から受け継がれた秘伝のレシピを守り続けているそうです。

知られざる「ロクロ」の真の味わい

ロクロは、トウモロコシベースの濃厚なシチューで、サルタの代表的な料理の一つです。しかし、観光客向けのレストランで提供されるロクロと、地元民が家庭で作るロクロには大きな違いがあります。

本物のロクロには、「チャルキ」という塩漬けの干し肉が使われており、これがコクと独特の風味を生み出します。地元の市場「Mercado San Miguel」(フロリダ通り沿い、月曜日から土曜日の午前6時から午後6時まで営業)では、家庭的なロクロを1杯約200ペソで味わうことができます。

サルタ近郊の「隠れた絶景スポット」で体験した忘れられない瞬間

サルタ市内から日帰りで訪れることができる近郊の観光地には、まだ多くの秘密が隠されています。

「プルママルカの七色の丘」よりも美しい穴場スポット?

多くのガイドブックで紹介されるプルママルカ(サルタから北へバスで約4時間、片道料金約800ペソ)の七色の丘は確かに美しいのですが、観光バスで溢れかえっているのが現実です。

しかし、地元の人だけが知る「イルヤメの隠れた渓谷」という場所があります。サルタから南東へ車で約2時間のこの場所は、プルママルカに劣らない地層の美しさを持ちながら、訪れる人はほとんどいません。レンタカーが必要ですが(1日約3,000ペソ)、手つかずの自然の中で絶景を独り占めできる貴重な体験となります。

「カファヤテ」で発見した世界最高峰のワインの秘密

サルタから南へ約180キロ、バスで約3時間半の場所にあるカファヤテは、世界で最も標高の高いワイン産地の一つです。標高1,700メートルの乾燥した気候が、独特の風味を持つワインを生み出しています。

特に注目すべきは「トロンテス」という白ワイン用ブドウ品種です。これはアルゼンチン固有の品種で、カファヤテの土壌と気候が生み出す奇跡の産物とされています。「Bodega El Esteco」(見学ツアー:大人500ペソ、試飲込み、午前10時から午後5時まで)では、このトロンテスの製造過程を詳しく学ぶことができます。

サルタ観光で「絶対に注意すべき」現実的な問題とは?

美しいサルタですが、観光する際に知っておくべき重要な注意点があります。

高山病対策は本当に必要?

サルタ市内の標高1,152メートルは、一般的に高山病の症状が現れるとされる2,400メートルより低いものの、平地から急に訪れると軽い頭痛やめまいを感じる人もいます。特に「雲の列車」で4,000メートル超の高地に上がる際は要注意です。

到着初日はアルコールを控え、コカ茶(地元のカフェで1杯約100ペソ)を飲むことをお勧めします。薬局では高山病予防薬「ソロチェ・ピル」も購入できます(1箱約300ペソ)。

治安面で知っておくべき現実

サルタは比較的治安が良い街ですが、観光地特有の軽犯罪は存在します。特に9 de Julio広場周辺では、観光客を狙ったスリやひったくりが発生することがあります。夜間の一人歩きは避け、貴重品は宿泊施設のセーフティボックスに保管することが重要です。

また、タクシーを利用する際は、正規のタクシー会社「Radio Taxi」(電話:0387-424-8888)を利用することをお勧めします。市内の移動なら大体150-300ペソが相場です。

サルタ滞在で感じた「時間の流れ」と旅の余韻

サルタでの滞在を通じて最も印象的だったのは、この街に流れる独特の時間感覚でした。午後のシエスタ(昼休み)の時間帯、午後1時から4時頃までは多くの店が閉まり、街全体がゆったりとした空気に包まれます。

夕方になると、地元の人々が9 de Julio広場に集まり、家族連れや恋人同士がベンチに座って語り合う光景を目にします。この何気ない日常の美しさが、サルタの真の魅力なのかもしれません。

サルタは決して便利な観光地ではありません。日本からは乗り継ぎを含めて約30時間、ブエノスアイレスからでも飛行機で約2時間かかります。しかし、その不便さを補って余りある感動と発見が、この街には確実に存在しています。