ダッカ観光で私が体験した「想像と全く違った」バングラデシュの首都の真実

ダッカってどんな街?まず知っておくべき基本情報

ダッカの街並みと人々の様子

バングラデシュの首都ダッカ(Dhaka)は、人口約900万人を抱える南アジア屈指の大都市です。しかし、多くの日本人旅行者にとって「未知の世界」というイメージが強いのではないでしょうか。

実際に私がダッカを訪れたとき、最も驚いたのは街の活気でした。朝5時から夜中まで、まるで眠らない街のように人々が動き回り、リキシャ(人力車)やCNG(天然ガス三輪車)が縦横無尽に走り回っています。成田空港からハザット・シャージャラル国際空港まで約8時間のフライトを経て到着した瞬間から、この街の圧倒的なエネルギーに包まれることになります。

オールドダッカで感じる歴史の重み?

ダッカ観光の核心とも言えるのが、オールドダッカ(プラーナ・ダッカ)エリアです。ここは16世紀から続く歴史ある地区で、まさにバングラデシュの文化の原点を感じられる場所。

ラールバーグ・キラ(ラルバーグ砦)は1678年に建設されたムガル帝国時代の要塞で、入場料は外国人50タカ(約60円)。午前9時から午後5時まで開放されており、ダッカ中心部から車で約30分の距離にあります。この砦の最大の見どころは、実は未完成のまま残されている点。皇帝アウラングゼーブの息子が建設を開始したものの、様々な事情で完成に至らなかったという歴史があります。

歩いていて特に印象的だったのは、アフサン・モンジル(ピンクパレス)です。19世紀後期に建てられたこのピンク色の宮殿は、当時のナワブ(太守)の居住地でした。現在は博物館として利用され、入場料は外国人20タカ。建物の美しさもさることながら、ブリガンガ川沿いに佇む姿は、まさにダッカの象徴的な景色と言えるでしょう。

現地の人が教えてくれた隠れた名所

一般的なガイドブックには載っていない、地元の人だけが知るスポットもダッカの魅力の一つです。

私が偶然出会った現地の大学生に案内してもらったのが、ダッカ大学キャンパス内のカーゾン・ホールでした。1904年に建設されたこの赤レンガの建物は、バングラデシュ独立運動の重要な舞台となった場所。一般観光客はほとんど訪れませんが、建築美と歴史的価値は非常に高く、地元の人々にとって特別な意味を持つ場所です。

また、シャンカリ・バザールでは、ヒンドゥー教徒の人々が営む小さな店が軒を連ねています。ここで売られている手作りの真鍮製品や木彫りの装飾品は、大量生産品とは一線を画す職人の技が光る逸品ばかり。価格交渉は必須ですが、店主との会話自体が文化交流の貴重な機会になります。

ダッカ名物料理、本当に美味しいのはどこ?

バングラデシュ料理といえば、多くの人がカレーを思い浮かべるでしょう。しかし、ダッカには想像を超える多彩な味覚体験が待っています。

ビリヤニは絶対に外せない一品です。特にカッチ・ビリヤニという調理法で作られたものは、生米と生肉を一緒に炊き上げる伝統的な手法で、香りと味の深さが格別。オールドダッカの「ファキルハニ・ビリヤニ」では、1皿150-200タカ(約180-240円)で本格的なビリヤニが味わえます。営業時間は午前11時から午後10時まで。

意外だったのはイリッシュ・マーチ(イリッシュ魚のカレー)の美味しさです。イリッシュはバングラデシュの国魚で、特に雨季(6月-9月)が旬。ブリガンガ川で獲れる新鮮なイリッシュを使ったカレーは、魚の甘みと香辛料の調和が絶妙で、日本人の口にも非常に合います。

街角の屋台で売られているフチカも見逃せません。小さなクリスピーな皮の中にスパイスの効いた水分が入っており、一口で食べるスナックです。1個5-10タカと非常にリーズナブルですが、衛生面が気になる方はホテルのレストランで試すことをお勧めします。

移動手段の選び方で旅が変わる?

ダッカでの移動は、正直なところ初心者には少しハードルが高いかもしれません。しかし、移動手段を理解することで、この街の魅力をより深く味わうことができます。

最もポピュラーなのはリキシャです。短距離なら30-50タカ、30分程度の距離なら80-120タカが相場。ただし、交渉は必須で、乗車前に必ず料金を確認しましょう。リキシャの最大の魅力は、街の細部まで見ることができること。車では入れない細い路地も自由自在に移動できます。

CNG(天然ガス三輪車)は、もう少し長距離の移動に適しています。メーター制ですが、観光客には少し高めに設定されることもあるので、乗車前に「メーター使って」と伝えるのがコツです。基本料金は25タカから始まり、距離に応じて加算されます。

公共バスは最も安価な選択肢ですが、慣れない観光客にはお勧めしません。ラッシュ時の混雑は想像を絶するレベルで、扉が閉まらないまま走行することも珍しくありません。

知っておくべき現実的な注意点

ダッカ観光で最も重要なのは、事前の心構えです。美化せずに現実をお伝えすると、この街にはいくつかの課題があります。

大気汚染は深刻で、特に乾季(11月-3月)は視界が悪くなるほどです。マスクやスカーフで口元を覆うことを強くお勧めします。また、交通渋滞は日常茶飯事で、数キロの移動に1時間以上かかることも珍しくありません。時間には十分な余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。

飲み水は必ずボトルウォーターを購入してください。500mlで15-20タカと非常に安価です。レストランでも氷は避け、生野菜にも注意が必要。私自身、2日目に軽い腹痛を経験しましたが、持参した整腸剤で回復しました。

スリや詐欺への注意も必要です。特に観光地周辺では、親切を装って近づいてくる人もいます。基本的に一人で歩かず、貴重品は分散して持つことをお勧めします。

ダッカでしか体験できない特別な瞬間

最後に、ダッカならではの忘れられない体験についてお話ししたいと思います。

アザーン(礼拝の呼びかけ)が街中に響く瞬間は、まさにイスラム圏を実感できる神聖な時間です。1日5回、モスクから流れる美しい詠唱は、慌ただしい街の時間を一時的に止めるような不思議な力があります。

ブリガンガ川のサンセットも必見です。川沿いのサダルガート船着き場から眺める夕日は、汚染された川の水面にも関わらず、幻想的な美しさを見せてくれます。小型ボートでの川下りは1時間200-300タカで、地元の船頭が案内してくれます。

意外な発見だったのは、ダッカの読書文化でした。ニルクシェット地区の本屋街では、夜遅くまで本を読みふける人々の姿が見られます。ベンガル語の書籍がほとんどですが、英語の本も豊富で、バングラデシュの知的な一面を垣間見ることができます。

ダッカは確かに旅行初心者には厳しい面もある街ですが、その分だけ他では得られない濃密な体験が待っています。混沌とした表面の下に、深い歴史と豊かな文化が息づいているのを感じられるはずです。訪れる際は十分な準備と柔軟な心構えで、この唯一無二の都市の魅力を発見してみてください。