音楽の街ナッシュビルは、一見すると「カントリーミュージック好きじゃないと楽しめない」と思われがちですが、実はそれが大きな勘違いなんです。私が初めてナッシュビルを訪れた時も、正直「カントリーミュージックにそれほど興味がない自分が楽しめるのか?」と不安でした。でも結果的に、音楽以外の魅力にも圧倒され、3日間の滞在があっという間に過ぎてしまったのを覚えています。
音楽だけじゃない?ナッシュビルの意外な一面
多くの人がナッシュビルと聞いて思い浮かべるのはカントリーミュージック殿堂博物館(Country Music Hall of Fame)やグランド・オール・オープリーでしょう。確かにこれらは必見スポットですが、実はナッシュビルには全く異なる顔があります。
例えば、ダウンタウンから車で約20分のところにあるベル・ミード・プランテーションでは、南北戦争時代の歴史を深く学ぶことができます。ここは1807年に建てられた邸宅で、当時のままの姿を保っています。入場料は大人22ドル、営業時間は午前9時から午後5時までで、ガイドツアーも充実しています。
さらに驚くべきは、ナッシュビルが実は「アテネ・オブ・ザ・サウス(南部のアテネ)」と呼ばれる教育都市でもあることです。バンダービルト大学をはじめとする名門大学が集まり、知的で洗練された文化も育んでいます。
絶対に失敗したくないブロードウェイ通りの歩き方
ナッシュビル観光の中心地ブロードウェイ通りは、初回訪問者が最も失敗しやすいエリアです。私も含め多くの観光客が犯しがちな失敗をお話ししましょう。
まず、平日の昼間に行っても何も面白くありません。ブロードウェイ通りが真価を発揮するのは午後7時以降です。この時間になると、各ホンキートンク(生演奏バー)で本格的なライブが始まります。入場料は基本的に無料ですが、チップは必須。演奏者に1曲あたり1〜2ドル程度渡すのがマナーです。
意外と知られていないのが、タッカーズ(Tootsies Orchid Lounge)の2階席です。1階は観光客でごった返していますが、2階は地元の音楽関係者も多く、より本格的な雰囲気を味わえます。ここで私は偶然、後にグラミー賞を受賞するアーティストの演奏を聞くことができました。
地元民しか知らない?絶品グルメの隠れ家
ナッシュビルのグルメと言えばナッシュビル・ホットチキンが有名ですが、観光客向けの店舗は正直言って期待外れが多いんです。本当に美味しいホットチキンを食べたいなら、地元民が通う店を知る必要があります。
ハッティ・B’s(Hattie B’s)は観光ガイドにも載っていますが、実はプリンス’s ホット チキン シャック(Prince’s Hot Chicken Shack)の方が本格的です。1945年創業のこの店は、ホットチキンの発祥店として知られています。場所はダウンタウンから少し離れた住宅街にあり、営業時間は火曜日から木曜日が午前11時から午後10時、金土は午前11時から午後4時です。
さらにマニアックな情報をお教えします。ナッシュビルには「ミート・アンド・スリー」という独特の食文化があります。これはメイン料理(肉)に3種類のサイドディッシュを選ぶスタイルで、アーノルド’s カントリー キッチン(Arnold’s Country Kitchen)がその代表格です。ここは1982年から営業しているローカル食堂で、平日の午前10時30分から午後2時30分までしか営業していません。
予算オーバーを防ぐ賢い観光プラン
ナッシュビル観光で多くの人が陥る罠は、予想以上に出費がかさむことです。特にライブハウスでのチップ、タクシー代、お土産代が予算を圧迫します。
賢い節約方法として、ナッシュビル・ダウンタウナー・サーキュレーターという無料バスを活用しましょう。平日は午前6時から午後11時まで、土曜日は午前10時から午後11時まで運行しており、主要観光地を効率よく回れます。
カントリーミュージック殿堂博物館の入場料は大人25.95ドルと高額ですが、火曜日の午後5時以降は地元住民割引があり、テネシー州在住者は半額になります。観光客でも、近くのホテルのフロントで割引券をもらえることがあるので、必ずチェックしてみてください。
交通手段で絶対に知っておくべきこと
ナッシュビル観光で最も頭を悩ませるのが移動手段です。ダウンタウン内は徒歩で回れますが、少し離れたスポットに行く際の選択肢が限られています。
レンタカーは便利ですが、ダウンタウンの駐車料金が1日20〜30ドルと高額です。さらに、金曜日と土曜日の夜は交通渋滞が激しく、普段15分の距離が1時間以上かかることもあります。
意外と知られていない交通手段がバード・スクーターやライム・バイクなどのシェア自転車です。1回の利用で基本料金1ドル+1分あたり15セントと経済的で、専用アプリで簡単に利用できます。ただし、ブロードウェイ通りは夜間の酔っ払い運転が危険なので避けましょう。
現地で気づいた文化的な注意点
ナッシュビルを訪れて初めて知ったのが、南部特有の文化的マナーの存在です。例えば、ライブハウスでは演奏中の私語は非常に失礼とされ、地元の人たちから冷たい視線を浴びることになります。
また、チップ文化が他の都市以上に重要視されています。レストランでは18〜20%、ライブハウスのミュージシャンには前述の通り1〜2ドル、ホテルのハウスキーピングには1泊あたり2〜3ドルが相場です。
宗教的な配慮も必要で、日曜日の午前中は多くの店舗が閉まっています。これは南部のキリスト教文化によるもので、特に日曜日の午前10時から正午はほぼ全ての観光施設が利用できません。
本当におすすめできる穴場スポット
最後に、ガイドブックには載っていない本当の穴場をご紹介します。フィスク・ジュビリー・シンガーズの練習風景を見学できるフィスク大学は、アフリカ系アメリカ人の歴史と文化を深く理解できる貴重な場所です。
パルテノン神殿のレプリカがセンテニアル・パークにあることも意外な発見でした。1897年に建設されたこの建物は、アテネの原寸大レプリカで、内部には世界で最も高い屋内彫刻「アテナ・パルテノス」があります。入場料はわずか6ドルで、火曜日から土曜日の午前9時から午後4時30分まで開館しています。
ナッシュビルは確かに音楽の街ですが、それ以上に多面的な魅力を持つ都市です。事前の下調べと適切な心構えがあれば、音楽に興味がない人でも十分に楽しめる、懐の深い街なのです。