ナポリで観光したら地元民に怒られた!?知らないと恥をかく南イタリア流観光の掟

「ナポリを見て死ね」という有名な言葉がありますが、実際にナポリを訪れてみると、この街の魅力と同時に「え、そんなルールがあるの?」と驚くことが山ほどあります。美しい景色や絶品グルメに心を奪われる一方で、知らずにやってしまった行動で地元の人に冷たい視線を向けられることも。今回は、そんなナポリ観光の「表と裏」を正直にお伝えします。

まさかコーヒーでこんなに怒られるなんて…地元民との最初の遭遇

ナポリの街角のカフェでエスプレッソを楽しむ様子

ナポリに着いた初日の朝、駅近くのカフェでカプチーノを注文しました。時刻は午後2時頃。すると、バリスタのおじさんが不機嫌そうな顔をして「ペルケ?(なぜ?)」とつぶやいたんです。後で知ったのですが、ナポリでは午前11時以降にカプチーノを飲むのはタブーなんだとか。

地元の人によると、ミルクの入ったコーヒーは朝食の飲み物で、昼食後にはエスプレッソが基本。これは消化に関する考え方から来ているそうです。ナポリ中央駅周辺のカフェでは、1杯のエスプレッソが約1ユーロ。立ち飲みが基本で、座ると追加料金がかかることが多いです。

でも、心配しないでください。観光客だと分かれば、みんな優しく教えてくれます。むしろ、この「コーヒー事件」がきっかけで、地元の人たちとの会話が弾むようになりました。

ピザ発祥の地で学んだ、本当に美味しい店の見つけ方

薪窯で焼かれる本場ナポリピザの調理風景

ナポリといえばピザの発祥地。でも、観光地にある派手な看板のピッツェリアに入ったら、正直がっかりでした。生地はふにゃふにゃで、チーズは安っぽい味。一方で、地元の人が教えてくれた路地裏の小さな店では、驚くほど美味しいピザに出会えました。

本物のナポリピザを見分けるコツは、薪窯があること、そして生地の端(コルニチョーネ)がふっくらしていること。有名な「ダ・ミケーレ」(Via Cesare Sersale, 1)は1870年創業で、マルゲリータとマリナーラの2種類しかメニューにありません。営業時間は月〜土曜日の10:30〜24:00で、いつも行列ができています。

ところで、ナポリのピッツァイオーロ(ピザ職人)の技術は2017年にユネスコの無形文化遺産に登録されているんです。彼らの手さばきを見ているだけでも、一つのアートを鑑賞している気分になります。

ヴェスヴィオ火山は想像以上にワイルドだった

ヴェスヴィオ火山の頂上から見下ろすナポリ湾の絶景

ポンペイを滅ぼした悪名高きヴェスヴィオ火山。実際に登ってみると、これが思っていた以上に迫力満点でした。ナポリ中央駅からヴェスヴィアーナ線でポンペイ・スカーヴィ駅まで約40分、そこからバスで火山の8合目まで行けます。

8合目から火口までは徒歩約30分のハイキング。入場料は大人10ユーロ、営業時間は季節によって変わりますが、夏は9:00〜18:00です。火口に近づくにつれて硫黄の匂いが強くなり、「ここは活火山なんだ」という実感が湧いてきます。

頂上からのナポリ湾の眺めは絶景ですが、風が強い日は本当に危険。私が訪れた日も、突然の強風で帽子が飛ばされそうになりました。運動靴と防寒着は必須です。

スペイン階段よりも美しい?隠れた絶景スポット

ナポリの隠れた展望台から見える美しい街並みと海の景色

ナポリには、観光ガイドブックにはあまり載っていない絶景スポットがあります。それがサン・マルティーノ修道院の展望台。ヴォメロの丘にあるこの場所からの眺めは、有名なポジリポの丘以上に美しいと地元の人が教えてくれました。

フニコラーレ(ケーブルカー)のモンテサント線でモンテサント駅まで約5分、そこから徒歩15分です。修道院の入場料は6ユーロ、火曜日は休館なので注意してください。夕暮れ時に訪れると、ナポリ湾に沈む夕日とヴェスヴィオ火山のシルエットが一枚の絵画のような美しさを見せてくれます。

地下都市ナポリ・ソッテッラーネアで迷子になりかけた話

ナポリの地下には、2400年前から掘り続けられた巨大な地下都市があります。ナポリ・ソッテッラーネア(Napoli Sotterranea)のガイドツアーに参加したのですが、これが想像以上にスリリングでした。

サン・パオロ・マッジョーレ広場から入るツアーは、大人10ユーロで約1時間半。狭い通路を懐中電灯の明かりだけで進むシーンもあり、閉所恐怖症の方にはおすすめできません。第二次世界大戦中は防空壕として使われ、当時の生活用品や落書きが今も残っています。

ガイドの説明によると、地下40メートルの深さにある巨大な貯水槽は、古代ローマ時代の水道システムの一部。現在も地下水が流れており、湿度は年間を通して80%以上を保っています。懐中電灯を消すと、本当に真っ暗闇。都市の真下にこんな世界があるなんて、驚きの連続でした。

カプリ島への日帰り旅行で学んだ時間の使い方

ナポリからカプリ島への日帰り旅行は定番コースですが、時間配分を間違えると大変なことになります。モーロ・ベヴェレッロ港からフェリーで約50分、高速船なら約40分。往復フェリー代は約30ユーロ、高速船は約40ユーロです。

島に着いてからが本番。有名な青の洞窟(グロッタ・アズーラ)は、天候と海況次第で入れないことが多いんです。私が訪れた日も、朝は波が高くてクローズ。午後2時頃にようやく入れましたが、洞窟内での滞在時間はわずか5分程度。入場料14ユーロに加えて、小舟代4ユーロが別途必要です。

でも、青の洞窟に入れなくても落ち込む必要はありません。アナカプリのヴィラ・サン・ミケーレや、アウグスト庭園からの絶景も十分に価値があります。特にファラリオーニの奇岩群を眺めながら飲むレモンチェッロは格別でした。

治安の噂と現実、本当のところどうなの?

ナポリといえば「治安が悪い」というイメージがありますが、実際に滞在してみると、そこまで危険ではありませんでした。ただし、油断は禁物。スペイン人地区やフォルチェッラ地区は夜間の一人歩きを避けるべきエリアです。

中央駅周辺は昼間でもスリに注意が必要。私も電車を待っている間に、リュックのファスナーを開けられそうになりました。貴重品は分散して持ち、カバンは前に抱えるのが基本。でも、困った時に助けてくれる親切な人も多く、道に迷った時は何人もの人が声をかけてくれました。

夜のナポリも魅力的で、特にキアイア地区は地元の若者たちで賑わっています。バールでの立ち飲みワインは1杯3〜4ユーロ程度で、地元の人たちとの交流も楽しめます。常識的な注意を払えば、十分に楽しめる街だと感じました。

帰国前夜、ナポリが教えてくれたこと

ナポリ滞在の最後の夜、宿泊していたホテル・エクセルシオール(Via Partenope, 48)のテラスから夜景を眺めながら、この街の本当の魅力について考えました。確かに、日本とは違う文化や習慣に戸惑うことも多かった。でも、それこそがナポリの醍醐味なんだと気づいたんです。

地元の人たちは、観光客に対しても本音で接してくれます。美味しくないものは「美味しくない」と言うし、危険な場所は「行くな」とはっきり教えてくれる。そんな率直さが、かえって信頼できると感じました。

「ナポリを見て死ね」という言葉の本当の意味は、きっと「先入観を捨てて、この街の生の魅力を感じてほしい」ということなのかもしれません。完璧ではないかもしれないけれど、だからこそ人間味にあふれている。それがナポリという街の、一番の魅力だと思います。