「イギリスの海辺リゾート」として有名なブライトンですが、実は観光客が陥りがちな落とし穴がいくつもあります。ロンドンから電車で約1時間という手軽さから、多くの旅行者が軽い気持ちで訪れて後悔することも。でも大丈夫、事前に知っておけば、この海辺の街が持つ本当の魅力を存分に楽しめるはずです。
なぜブライトンピアで時間を無駄にしてはいけないのか?
多くのガイドブックで紹介されるブライトンピア。確かに海に突き出た桟橋は絵になりますが、実は地元の人たちはほとんど近づきません。なぜでしょうか?
理由は単純で、観光客向けの高額な遊園地とゲームセンターがあるだけだからです。入場料は大人一人約15ポンド(約2,700円)で、中のアトラクションもそれぞれ別料金。しかも海風で錆びた設備は正直、日本の遊園地に慣れた目には物足りないものです。
代わりに地元民が愛するのは、ピアの横にあるブライトンビーチそのもの。石ころだらけのビーチは一見すると魅力に欠けますが、夕日の時間帯になると全く違う表情を見せます。観光客が帰った午後6時以降、オレンジ色に染まる海を眺めながらフィッシュアンドチップスを食べる地元の人たちに混じってみてください。入場料0ポンドで、最高の時間が過ごせます。
レーンズ地区で迷子になったら、それは正解かもしれない
ザ・レーンズ(The Lanes)は、ブライトン旧市街の迷路のような小道が織りなすエリアです。17世紀の漁師町の面影を残すこの地区で、多くの観光客が「道に迷った」と慌てます。でも実は、迷子になることこそが、このエリアの正しい楽しみ方なんです。
なぜなら、地図には載っていない隠れた名店が、予想もしない場所にあるから。例えば、Snoopers Paradiseというアンティークショップは、4階建ての建物全体が古道具で埋め尽くされた迷宮。営業時間は月曜から土曜の午前10時から午後6時、日曜は午前11時から午後5時です。
ここで注意したいのは、レーンズ地区の多くの店舗は現金のみの取り扱いということ。ATMは少し離れた場所にあるので、事前に現金を準備しておくことをお勧めします。迷路で迷子になるのは楽しいですが、お金がなくて買い物できないのは悲しいですからね。
地元民が教えてくれた「本当の宝探し」とは?
実は、レーンズ地区には地元の人だけが知る「宝探しゲーム」があります。古い建物の壁に埋め込まれた小さな真鍮のプレートを探すというもの。これらのプレートには、ブライトンの歴史上の人物や出来事が刻まれており、全部で12枚あると言われています。観光ガイドには一切載っていない、地元民だけの秘密の楽しみです。
ロイヤル・パビリオンの入場料を払う前に知っておくべきこと
ロイヤル・パビリオンは確かにブライトンの象徴的建物。インドや中国の建築様式を取り入れた摂政王子(後のジョージ4世)の離宮で、その豪華絢爛な内装は一見の価値があります。でも、大人一人の入場料は16.50ポンド(約3,000円)と決して安くありません。
営業時間は季節により異なりますが、通常は午前10時から午後5時15分(最終入場は午後4時30分)。ここで多くの観光客が知らないコツをお教えしましょう。実は、毎月第1水曜日の午後2時から3時の間だけ、ガーデンツアーが無料で開催されているんです。
このツアーでは、パビリオンの外観と庭園について詳しい解説が聞けます。建物の内部には入れませんが、建築の歴史や王室のエピソードなど、興味深い話をたくさん聞くことができます。しかも完全無料。予約不要で、庭園の入り口に集合するだけです。
パビリオンに隠された「音響の奇跡」
もし入場料を払って内部を見学するなら、ぜひ音楽室で足を止めてください。この部屋の特定の位置で手を叩くと、天井のドーム型構造により音が増幅され、まるでオーケストラのような響きが生まれます。設計当時、王子がここでプライベートコンサートを楽しんだ際の音響効果を今でも体験できるんです。ただし、他の観光客への配慮から、係員がいない時に静かに試してみてくださいね。
本当のブライトングルメは観光地にはない?
観光客でにぎわうシーフロント沿いのレストランで食事をして、「ブライトンの料理はこんなものか」とがっかりして帰る人が後を絶ちません。実は、本当においしい店は観光地から少し離れた住宅街にあるんです。
地元の人が通うThe Setというレストランは、ブライトン駅から徒歩15分のプレストン・ストリート沿いにあります。営業は火曜から土曜の午後6時から午後10時30分まで。ここの名物は「サセックス・ラム」を使った煮込み料理で、一皿18ポンド程度。観光地価格の半額以下で、地元産の食材を使った本格的な料理が味わえます。
さらに意外なのが、ブライトンには隠れたベジタリアン文化があること。Terre à Terreは、肉を一切使わないのに満足度の高い料理で有名です。場所はイースト・ストリート71番地、営業時間は火曜から土曜が午後6時から午後10時30分、日曜は正午から午後4時まで。予約は必須ですが、野菜だけでこんなに豊かな味が出せるのかと驚くはずです。
漁師町時代から続く「隠れメニュー」
実は多くの老舗パブには、メニューに載っていない「漁師メシ」があります。The Cricketers Arms(ブラック・ライオン・ストリート15番地)では、常連客だけが注文できる「オールド・ブライトン・スチュー」という料理があります。店主に「漁師の料理はありますか?」と尋ねると、ニヤリと笑って特別に作ってくれることも。ただし、これは完全に店主の気分次第なので、断られても怒らないでくださいね。
交通費を半額にする裏技と、避けるべき時間帯
ロンドンからブライトンへの移動で、多くの人が正規料金の往復約30ポンドを払っています。でも実は、Advance ticketを事前にオンライン購入すれば、往復15ポンド程度に抑えることも可能です。ただし、指定された列車にしか乗れないという制約があります。
絶対に避けたいのは、金曜日の午後6時以降と日曜日の午後4時以降の帰路。週末を楽しんだロンドナーたちで電車は超満員となり、立ちっぱなしで1時間過ごすことになります。可能であれば、日曜日の午前中か平日の訪問をお勧めします。
また、ブライトン市内の移動にはブライトン&ホーブ・バスの1日券(5.50ポンド)が便利。主要観光スポットを効率よく回れるだけでなく、地元の人たちの日常生活も垣間見ることができます。運転手さんは基本的にフレンドリーで、おすすめスポットを教えてくれることも多いんです。
天気に翻弄されない楽しみ方
イギリス南部とはいえ、ブライトンの天気は変わりやすいもの。せっかく海を楽しみに来たのに、雨や強風で台無しになった経験を持つ人も多いでしょう。でも地元の人たちは、天気が悪い日にこそ楽しめる場所を知っています。
ブライトン博物館・美術館は入場無料で、雨の日の避難場所としては最適。特に現代アートのコレクションは意外に充実しており、2〜3時間はあっという間に過ぎてしまいます。開館時間は火曜から日曜の午前10時から午後5時まで(月曜休館)。
風が強い日には、ブライトン・トイ・アンド・モデル博物館がおすすめ。ブライトン駅の真下にあるこの博物館は、世界最大級の鉄道模型コレクションで有名です。入場料は大人8.95ポンドですが、ノスタルジックな雰囲気に包まれて、童心に帰れる特別な空間です。
ブライトンは確かに「海辺のリゾート」ですが、その魅力は海だけではありません。歴史、文化、グルメ、そして何より地元の人たちとの出会い。観光地の表面だけをなぞるのではなく、少し時間をかけてこの街の本当の顔を探してみてください。きっと、予想以上の発見が待っているはずです。