ベレンの観光地で迷子になった私が発見した、ガイドブックに載らない魅惑の裏スポット

なぜベレンで迷子になったのか?

ポルトガルのリスボンにあるベレン地区。私は完全に舐めていました。「小さな観光エリアだし、半日あれば十分でしょ」なんて軽い気持ちで向かったのが運の尽き。実際に足を踏み入れてみると、想像以上に広大で、しかも見どころが点在しているんです。

テージョ川沿いに細長く広がるこの地区は、東西に約3キロメートルも続いています。リスボン市内からトラム15番で約20分、または電車でベレン駅まで約10分でアクセスできますが、到着してからが本当の冒険の始まりでした。

定番スポットで早くも時間切れ寸前

まず向かったのはベレンの塔。入場料6ユーロ、営業時間は10時から17時半(冬季は17時まで)です。16世紀に建てられたこの要塞は、テージョ川の河口を守る重要な役割を果たしていました。しかし、ここで私は致命的なミスを犯します。塔の内部をじっくり見学しすぎて、すでに1時間半が経過していたのです。

次にジェロニモス修道院へ。入場料10ユーロで、こちらも10時から17時半まで(最終入場は17時)。マヌエル様式の傑作として世界遺産に登録されている修道院の回廊は、確かに息を呑むほど美しい。でも、ここでもまた1時間以上かかってしまいました。

迷子になって見つけた意外な宝物

時間に追われた私は、急いでパスティシュ・デ・ベレンへ向かおうとしました。1837年創業のこの老舗カフェは、元祖エッグタルト「パスティシュ・デ・ナタ」発祥の地として有名です。ところが、方向感覚を完全に失った私は、全く違う道を歩いていたのです。

地元の人だけが知る川沿いの散歩道

迷った先で偶然発見したのが、テージョ川沿いの遊歩道でした。観光客がほとんどいない静寂な空間で、対岸の風景を眺めながらゆっくりと歩くことができます。ここから見る4月25日橋(サンフランシスコのゴールデンゲート橋にそっくりな赤い橋)の眺めは、絶好の撮影スポットなのに、なぜかガイドブックには詳しく載っていません。

地元の釣り人に話を聞くと、この辺りは昔から漁師たちが使っていた船着き場だったそうです。今でも早朝には小さな漁船が戻ってくる光景を見ることができるとか。観光地化されていない、本当のリスボンの姿がそこにありました。

隠れ家的なアンティークショップ群

さらに道に迷いながら歩いていると、住宅街の中に小さなアンティークショップが点在していることに気づきました。これらの店は観光客向けではなく、地元の人たちが代々受け継いできた古い品物を扱っています。

特に印象的だったのが、船舶関連のアンティークを専門に扱う小さな店でした。大航海時代の航海用具や古い海図、船の模型などが所狭しと並んでいます。店主のおじいさんは元船員で、ベレン地区の海洋史について詳しく教えてくれました。営業時間は不規則で、平日の午後にひっそりと開いているだけですが、ここでしか手に入らない貴重な品物があります。

結局パスティシュには辿り着けたの?

迷子になってから2時間後、ようやく目当てのパスティシュ・デ・ベレンに到着しました。平日でも常に行列ができているこの店は、朝8時から深夜まで営業しています。秘伝のレシピで作られるエッグタルトは1個1.3ユーロ。外はパリパリ、中はトロトロの食感は確かに絶品でした。

でも正直に言うと、迷子になったおかげで発見した川沿いの景色や、アンティークショップでの出会いの方が、私にとってはずっと価値のある体験でした。

地元の人が教えてくれた穴場レストラン

アンティークショップの店主に教えてもらったのが、観光客がほとんど来ない小さなシーフードレストラン「Taberna do Real」です。住宅街の中にひっそりと佇むこの店は、地元の漁師が獲った新鮮な魚介類を使った料理が自慢。平均予算は一人20ユーロ程度で、リーズナブルなのに味は一流レストラン並み。営業は火曜日から日曜日の12時から22時まで(月曜定休)。

ベレン観光で本当に気をつけるべきこと

私の失敗談から学んでほしいのは、ベレン地区の観光には最低でも丸一日は必要だということです。主要な観光地だけでも半日はかかりますし、移動時間も思っている以上にかかります。

意外と歩く距離が長い問題

ベレンの塔からジェロニモス修道院まで徒歩約15分、そこからパスティシュ・デ・ベレンまで徒歩5分と、一見近そうに見えますが、実際に歩いてみると結構な距離があります。特に夏場は日差しが強く、水分補給を怠ると熱中症の危険もあります。

また、発見のモニュメント国立古美術館なども含めて回ろうとすると、相当な体力が必要です。歩きやすい靴は絶対に必須。私はスニーカーを履いていて正解でした。

チケット事前購入の落とし穴

ジェロニモス修道院とベレンの塔は、オンラインでの事前購入が推奨されていますが、実は現地でも意外とスムーズに入場できることが多いです。ただし、5月から9月の観光シーズンは別。この時期は午前中に売り切れることもあるので、事前購入は必須です。

私が訪れた3月は比較的空いていましたが、それでもジェロニモス修道院では15分ほど並びました。チケット売り場の係員に聞いたところ、最も混雑するのは土日の11時から15時頃だそうです。

トラム15番の意外な注意点

リスボン市内からベレンへのアクセスで一番人気のトラム15番ですが、実は観光客狙いのスリが多発しています。特に朝の通勤時間帯と夕方は地元の人も利用するため車内が混雑し、注意が散漫になりがち。貴重品は必ず身体の前側で管理してください。

また、トラムは思っている以上に揺れます。立っている場合は、しっかりと手すりに掴まっていないと、カーブで振り落とされそうになります。私も危うく転倒しそうになりました。

迷子体験から得た最大の収穫

結局、予定していた半日観光は丸一日かかってしまいましたが、この「失敗」が私にとって最高の思い出になりました。計画通りに回っていたら、絶対に出会えなかった人々や風景がありました。

ベレン地区の本当の魅力とは?

大航海時代の栄光を物語る歴史的建造物ももちろん素晴らしいのですが、この街の本当の魅力は、今も生きている地元の人々の暮らしの中にあるのだと実感しました。観光地化されたエリアを一歩出ると、昔ながらの漁師町の面影が色濃く残っています。

特に印象的だったのが、小さな教会「Igreja da Memoria」での出来事。観光コースには入っていない小さな教会ですが、地元のおばあさんたちが毎日お祈りに来ている姿を見て、この街に根付く深い信仰心を感じました。教会は無料で見学でき、平日なら静寂な空間でゆっくりと過ごすことができます。

旅行は予定通りに行かないからこそ面白い。ベレンで迷子になった経験は、そのことを改めて教えてくれた貴重な一日でした。次にベレンを訪れる方には、ぜひ時間に余裕を持って、迷子になることを恐れずに街歩きを楽しんでほしいと思います。きっと、ガイドブックには載っていない特別な発見があるはずです。