ホバート観光で絶対に知っておくべき「裏の顔」と現地人しか知らない楽しみ方

タスマニアの首都ホバートって、実はこんなに奥深い場所だった

オーストラリア本土から240キロ南に浮かぶタスマニア島の首都ホバート。多くの人がシドニーやメルボルンの「ついで」程度に考えがちですが、実際に足を運んでみると、その認識は180度変わります。人口わずか25万人の小さな港町に、これほど濃密な歴史と文化が詰まっているとは思いませんでした。

サラマンカ・マーケットは土曜日だけ?知らないと後悔する曜日の罠

ホバート観光の代名詞といえばサラマンカ・マーケット。しかし、ここに大きな落とし穴があります。このマーケット、実は土曜日の朝8時30分から午後3時までしか開催されないんです。日曜日に行っても、平日に行っても、そこにあるのは静まり返った石畳の広場だけ。

私が初めて訪れたのは金曜日でした。ガイドブックで見た賑やかな写真を期待して行ったのに、目の前に広がったのは19世紀の砂岩造りの倉庫群がひっそりと佇む光景。でも、これはこれで美しい。サラマンカ・プレイスと呼ばれるこのエリアは、1830年代に建てられた歴史的建造物群で、現在はギャラリーやレストラン、カフェとして使われています。

マーケット当日の土曜日は、地元アーティストの手作り雑貨からタスマニア産の蜂蜜、地元農家の有機野菜まで約300の出店が軒を連ねます。特におすすめは朝一番の9時頃。観光客がまだ少なく、地元の人たちとゆっくり会話を楽しめます。

MONA美術館への道のりで体験する、まさかの「アート攻撃」

ホバートで最も話題となっているのがMONA(新旧美術館)。しかし、この美術館への行き方自体がアートなんです。市内中心部のブルック・ストリート桟橋から専用フェリー「MONA ROMA」に乗船するのですが、このフェリーがただの交通手段じゃありません。

船内には既にアート作品が展示され、天井から吊るされた巨大なシャンデリアや、壁一面に描かれた現代アートが乗客を出迎えます。約25分の船旅(大人片道25ドル)の間に、すでに美術館体験が始まっているという仕掛け。

MONA到着後は、さらなる驚きが待っています。館内マップは存在せず、代わりに「O」と呼ばれるiPodのような端末を首から下げて館内を回ります。GPS機能で現在地を把握し、目の前の作品について音声ガイドや他の鑑賞者のコメントを聞くことができる仕組み。入館料は大人32ドルですが、タスマニア州民は無料という太っ腹ぶり。

ウェリントン山頂で味わう「南極からの風」の正体とは?

標高1,271メートルのマウント・ウェリントンは、ホバート市街から車で約30分の距離にある絶景スポット。しかし、山頂の気温は市街地より10度近く低く、真夏の1月でも長袖が必要です。

ここで体験できるのが「南極からの風」。実際に南極大陸まで何も遮るものがない南風が、文字通り南極から直接吹き付けてきます。晴れた日には、ホバート市街はもちろん、ダーウェント川、そして遥か彼方のブルーニー島まで一望できます。

山頂へは市内からバスツアー(約45ドル)が出ていますが、レンタカーでのアクセスも可能。ただし、冬季(6月から8月)は積雪の可能性があるため、チェーン携行が義務付けられています。山頂には展望台とカフェがあり、営業時間は午前9時から午後5時まで。

タスマニアン・デビルに会えない?現実的な野生動物観光のススメ

タスマニアといえばタスマニアン・デビルを想像する人が多いでしょう。しかし、野生のタスマニアン・デビルに遭遇する確率は非常に低く、夜行性のため昼間の観光では見ることがほぼ不可能です。

現実的な選択肢はボノロング・ワイルドライフ・サンクチュアリ(市内から車で25分、入園料24ドル、営業時間9時から17時)。ここでは保護されたタスマニアン・デビルの餌付けショーが毎日11時30分と2時30分に行われます。

意外に感動するのがウォンバットとの触れ合い体験。この丸々とした有袋類は見た目以上に人懐っこく、膝の上に乗ってくることも。カンガルーへの餌やり体験(別途5ドル)では、手のひらに専用ペレットを載せると、カンガルーが優しく食べてくれます。

フィッシュ・マーケットで発見!本土では絶対食べられない「幻の魚」

ホバートのタスマニアン・シーフード・シーダクション(月曜から土曜の8時30分から18時、日曜は10時から17時)では、オーストラリア本土では流通しない珍しい魚介類に出会えます。

特に注目は「ブルー・アイ」という深海魚。白身で上品な味わいですが、タスマニア近海でしか漁獲されないため、本土のレストランではまず見かけません。1キロあたり約40ドルと高価ですが、刺身でも食べられる新鮮さ。

もう一つの隠れた名物が「アバロン」と呼ばれるタスマニア産アワビ。日本のアワビより小ぶりですが、甘みが強く、地元では1個8ドル程度で購入できます。市場内の簡易レストランでは、その場で調理してもらうことも可能(調理代別途5ドル)。

実は囚人の島だった過去?ポート・アーサーで知る重い歴史

ホバートから車で約1時間30分の距離にあるポート・アーサー歴史遺跡は、1830年から1877年まで運営された流刑植民地跡。入場料は大人42ドル、営業時間は9時から17時ですが、この料金には40分間の遺跡ツアーと港クルーズが含まれています。

ここで衝撃的なのは、当時の「模範的」とされた監獄システムの実態。独房監禁や無言労働など、現在の人権意識では考えられない処罰が科学的根拠に基づいて行われていました。最も印象的なのは、完全な沈黙を強制された教会。囚人たちは個別ブースに座らされ、牧師以外の人間を見ることも話すことも許されませんでした。

敷地内の博物館では、当時の囚人名簿から自分の名字と同じ囚人を検索できるデータベースが設置されています。意外にも多くの日本人観光客が、同姓の囚人を発見して驚いています。

地元民しか知らない「バッテリー・ポイント」の隠れ家カフェ

観光地から徒歩圏内でありながら、ほとんどのガイドブックに載っていないのがバッテリー・ポイントエリア。ここは1840年代に建てられたコテージ群が現在も住宅として使用されている、生きた歴史地区です。

石畳の細い路地を歩いていると、「Jackman & McRoss」という小さなベーカリーカフェを発見。営業時間は7時30分から17時30分(日曜は8時30分から)で、地元の人たちが朝食を食べに通う隠れた名店。特に人気なのが「スカラップ・パイ」(6.5ドル)。ホタテをクリームソースで煮込んだものをパイ生地で包んだタスマニア伝統の一品です。

テイクアウトして近くのプリンス公園で食べれば、ダーウェント川を眺めながらの贅沢な朝食タイム。観光バスでは絶対に辿り着けない、地元民だけが知る楽しみ方です。

帰国前に必ずチェック!検疫で没収される意外なお土産

タスマニアから日本への帰国時、植物検疫で没収されやすいのが蜂蜜製品とナッツ類。特にタスマニア産の「レザーウッド・ハニー」は人気のお土産ですが、巣のかけらが混入している商品は持ち込み禁止。必ず濾過済みの商品を選びましょう。

意外な落とし穴がドライフルーツ。「Dried Fruit」と表示があっても、種子が含まれていると検疫対象になります。安全なお土産は、タスマニア産ウイスキー「サリバンズ・コーブ」や羊毛製品、地元アーティストの陶器類。

ホバート空港は小さく、国際線の出発2時間前に到着すれば十分ですが、お土産店は限られているため、市内での購入がおすすめ。エリザベス・ストリート・モールには主要なお土産店が集中しています。

タスマニアの小さな首都ホバートは、確かに大都市のような派手さはありません。しかし、ゆっくりと時間をかけて歩き回ることで見えてくる、深い歴史と独特な文化の魅力こそが、この街の真価なのです。