ミラノと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、あの壮麗なドゥオーモでしょうか?確かに素晴らしい建物ですが、それだけで満足してしまうのは本当にもったいない。実際に3回ミラノを訪れて気づいたのは、この街の本当の魅力は「意外な場所」に隠れているということでした。
なぜみんなドゥオーモ周辺だけで終わってしまうの?
初回のミラノ旅行で、私も典型的な「ドゥオーモ観光客」でした。ドゥオーモ広場に到着すると、その圧倒的な美しさに感動し、隣接するガッレリア・ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世でショッピングを楽しんで「ミラノを満喫した!」と勘違いしていたんです。
でも実は、これこそがミラノ観光の最大の落とし穴。ドゥオーモの入場料は6ユーロ(屋上展望台は15ユーロ)で、確かに見応えはあります。しかし地元の友人曰く「ドゥオーモはミラノの入り口に過ぎない」とのこと。営業時間は9時から19時(日曜は13時30分から)なので、午前中の早い時間帯が比較的空いています。
観光客が知らない「本当のミラノ時間」
ミラノの真の魅力を理解するには、地元の人々の生活リズムを知ることが大切です。朝の7時頃、街のバールでは地元民がエスプレッソを立ち飲みしながら1日をスタートさせます。この光景を見ずして、ミラノを語ることはできません。
ナヴィリ地区って一体何があるの?
多くのガイドブックで触れられていないのが、ナヴィリ地区の魅力です。ドゥオーモから地下鉄で約15分、この運河沿いのエリアは「ミラノのヴェネツィア」とも呼ばれています。
実はこの運河、あのレオナルド・ダ・ヴィンチが設計に関わったという歴史があります。現在は夜になると運河沿いにバーやレストランが軒を連ね、地元の若者たちでにぎわう場所となっています。観光客向けのレストランが多い中心部とは違い、ここでは本格的なミラネーゼ料理を手頃な価格で楽しめるんです。
知る人ぞ知る「アペリティーボ文化」
ナヴィリ地区で体験してほしいのが「アペリティーボ」です。これは18時から20時頃にかけて、お酒と軽食を楽しむイタリアの文化。1杯10ユーロ程度でスプリッツを注文すると、チーズやハム、オリーブなどの軽食が無料でついてきます。これが実質的な夕食になることも多く、地元の人々の重要な社交の場となっています。
スカラ座だけじゃない!隠れた文化スポットはここ
ミラノの文化といえばスカラ座が有名ですが、チケットは数ヶ月前から完売することがほとんど。入場料は座席によって30ユーロから300ユーロと幅があり、当日券はまず手に入りません。
そこでおすすめしたいのがブレラ地区です。ドゥオーモから徒歩15分のこのエリアには、ブレラ絵画館があり、カラヴァッジョやラファエロの作品を間近で鑑賞できます。入場料は15ユーロで、毎月第1日曜日は無料開放されています。
アーティストの街「ブレラ」の秘密
ブレラ地区は19世紀からアーティストたちが集まる場所として知られていました。現在でも小さなギャラリーやアトリエが点在し、土曜日の午後には路上でアーティストが作品を販売しています。観光地化されていない、本物の芸術の息づかいを感じられる貴重なエリアです。
食の都ミラノで絶対に外せないグルメって?
ミラノのグルメといえばリゾット・アッラ・ミラネーゼは絶対に外せません。サフランの黄金色が美しいこの料理は、14世紀からミラノで愛され続けている伝統料理です。
しかし観光客向けレストランでは、本来のレシピとは異なる「観光客仕様」のリゾットが出されることがあります。本物を味わいたいなら、Trattoria Milanese(ドゥオーモから徒歩8分)がおすすめです。1933年創業のこの老舗では、昔ながらの製法で作られたリゾットを25ユーロで味わえます。
地元民だけが知る「コトレッタの真実」
もう一つの名物コトレッタ・アッラ・ミラネーゼにも秘密があります。多くの人がウィーンのシュニッツェルと同じだと思っていますが、実は調理法が全く違うんです。ミラノ版は子牛の骨付きリブ肉を使い、バターでゆっくりと揚げ焼きにします。骨から出る旨味が肉に染み込み、外はカリカリ、中はジューシーな絶品に仕上がります。
地元の人々は「骨を持って食べるのがマナー」だと教えてくれました。上品に見えないかもしれませんが、これが本来の食べ方なのです。
ショッピングの落とし穴、知ってますか?
ファッションの都ミラノでのショッピングには、実は大きな「落とし穴」があります。モンテナポレオーネ通りやヴィア・デッラ・スピーガといった高級ブティック街では、確かに最新のコレクションが手に入りますが、価格は日本と変わらないか、むしろ高いことがあります。
本当におすすめしたいのはアウトレット街のセッラヴァッレです。ミラノ中央駅からバスで1時間半、往復20ユーロの投資で、プラダやグッチなどの高級ブランドが30-70%オフで購入できます。平日なら日本人観光客もほとんどおらず、ゆっくりと買い物を楽しめます。
地元民御用達の「メルカート」体験
観光客がほとんど知らないのが、毎週火曜日と土曜日に開催されるメルカート・ディ・ブレラです。ブレラ地区の小さな広場で開かれるこの市場では、地元農家が直接販売する新鮮な野菜や果物、手作りのチーズなどが手に入ります。
特におすすめなのが、パルミジャーノ・レッジャーノの量り売り。100グラム6ユーロという破格の値段で、24ヶ月熟成の本物が購入できます。真空パックにしてくれるので、お土産にも最適です。
移動で失敗しないための「裏ワザ」
ミラノの公共交通機関は効率的ですが、観光客が知らない「コツ」があります。地下鉄の1日券は7ユーロですが、実は48時間券(11.50ユーロ)の方が圧倒的にお得。2日目の午前中まで使えるので、実質的に1日半分の移動費をカバーできます。
また、マルペンサ空港から市内への移動では、多くの人がマルペンサ・エクスプレス(13ユーロ)を利用しますが、バスなら8ユーロで同じ時間で到着できます。ただし、大きな荷物がある場合は電車の方が楽でしょう。
「シエスタ」に要注意!
イタリア南部ほどではありませんが、ミラノでも午後13時から15時頃まで閉店する小さな店が多いです。特に月曜日の午前中は多くの美術館や個人経営の店が休みになるため、観光プランを立てる際は注意が必要です。
逆に、木曜日の夜は多くの美術館が21時まで開館しており、仕事帰りの地元民と一緒に静かな環境でアートを鑑賞できる穴場の時間帯となっています。
最後に:ミラノの「本当の顔」を見つけるために
3度目のミラノ訪問で気づいたのは、この街の魅力は「計画通りにいかない瞬間」にこそあるということでした。道に迷って偶然見つけた小さなジェラート屋、雨宿りで入った古い教会、地元のおばあちゃんに教えてもらった隠れ家レストラン。
ガイドブックに載っている情報も大切ですが、時には予定を捨てて街を歩いてみてください。きっと、あなただけのミラノに出会えるはずです。それこそが、この街が数百年にわたって旅人を魅了し続けている理由なのかもしれません。