ムンバイ観光で私が犯した3つの致命的ミス – インド最大都市の罠と本当の魅力

「インドといえばタージ・マハル」そんな固定観念を持ってムンバイに降り立った私は、まさか商業都市ムンバイがこれほど奥深く、そして観光客泣かせの街だとは思ってもいませんでした。人口2000万人を超えるインド最大の都市は、確かに観光地として有名ではありませんが、実は隠れた魅力と落とし穴が無数に潜んでいます。

到着初日の大失敗 – チャトラパティ・シヴァージー空港からの移動で学んだこと

ムンバイ国際空港に着いて最初に犯した大きなミスは、タクシーの選び方でした。空港の外に出ると、声をかけてくる運転手が山ほどいます。しかし、彼らの言い値は正規料金の3倍以上。空港内のプリペイドタクシーカウンターを利用すれば、市内中心部まで約500ルピー(約900円)で済むところを、1500ルピーも取られてしまったのです。

さらに驚いたのは、ムンバイの交通渋滞の激しさ。空港から南ムンバイの主要観光エリアまでは距離にして約30キロですが、なんと2時間半もかかりました。朝の7時台や夕方の5時以降は特に避けるべきです。地元の人に聞くと、午前10時から午後3時の間が最も移動しやすい時間帯だそうです。

意外に便利?ムンバイの電車事情

実は、ムンバイには「ローカル電車」と呼ばれる通勤電車網が発達しています。1日に約750万人が利用する世界屈指の混雑路線ですが、料金は驚くほど安く、最長区間でも15ルピー(約27円)程度。ただし、平日の朝夕は文字通り殺人的な混雑で、観光客には現実的ではありません。

ガイドブックに載らない真のムンバイ観光スポット?

二つ目の失敗は、有名観光地だけを回ろうとしたことです。インド門タージ・マハル・パレス・ホテルといった定番スポットも確かに素晴らしいのですが、ムンバイの本当の魅力は別のところにありました。

例えば、ダラヴィ・スラム。映画「スラムドッグ$ミリオネア」の舞台としても知られるこの地区は、実は100万人が暮らすアジア最大のスラム街です。ツアー会社が組む見学ツアー(約2000ルピー、3時間)に参加すれば、リサイクル産業や小規模製造業が盛んな「働く街」としての一面を知ることができます。決して貧困を見世物にするのではなく、たくましく生きる人々の営みを学ぶ貴重な体験でした。

本当に美味しいムンバイグルメはここにある

観光客向けレストランで食べるカレーも美味しいですが、地元の人が愛するストリートフードこそがムンバイの真骨頂です。チョウパティ・ビーチの屋台で食べる「バダ・パヴ」(ジャガイモのコロッケバーガー、15ルピー)や「パヴ・バジ」(野菜カレーとパンのセット、50ルピー)は、高級レストランでは味わえない庶民の味です。

ただし、ここで三つ目の大失敗をしました。水道水で作った氷入りのドリンクを飲んでしまい、翌日からひどい下痢に見舞われたのです。ストリートフードを楽しむなら、ペットボトルの水以外は口にしないという鉄則を守ることが重要です。

知られざるムンバイの文化的側面 – ボリウッドの聖地

ムンバイは実は「ボリウッド」と呼ばれるインド映画産業の中心地です。年間約1000本もの映画が製作され、その経済効果は約4000億円にも上ります。フィルム・シティ(ゴーレーガオン地区)では撮影スタジオ見学ツアーも開催されており、運が良ければ実際の撮影現場を見ることができます。

さらに驚いたのは、ムンバイの不動産価格の高さです。南ムンバイのマラバー・ヒル地区は、世界でも有数の高級住宅街で、1平方メートルあたりの価格が東京の青山や表参道を上回ることもあります。億万長者のムケシュ・アンバニ氏が建てた27階建ての自宅「アンティリア」は、建設費約1000億円で個人宅としては世界最高額だとか。

ムンバイの夜は意外に早い?

大都市ムンバイですが、実は夜遊び事情は意外に限定的です。州法により、午前1時30分以降は酒類の提供が禁止され、多くのバーやクラブも早めに閉店します。また、毎月第1月曜日と宗教的祭日は「ドライデー」と呼ばれ、酒類の販売・提供が一切禁止されます。旅行計画を立てる際は、これらの日程を事前にチェックしておくことをお勧めします。

ムンバイ観光の最適な日数とベストシーズン

私の経験から言うと、ムンバイ観光には最低でも3日、できれば4〜5日は確保したいところです。1日目は移動と市内中心部の散策、2日目はダラヴィ見学とボリウッド関連スポット、3日目はエレファンタ島への日帰り旅行、4日目は郊外のアジャンタ・エローラ石窟群への遠足といったスケジュールが理想的です。

気候面では、11月から3月の乾季が断然おすすめです。この時期の最高気温は28度前後で湿度も低く、観光には最適。一方、6月から9月のモンスーン期間中は激しい雨が続き、街中が冠水することも珍しくありません。私が訪れた7月は、1日に300ミリを超える雨が降り、ローカル電車も運休する事態に遭遇しました。

エレファンタ島で遭遇した予想外の体験

エレファンタ島はムンバイから船で約1時間の世界遺産の島ですが、ここで思わぬ発見がありました。6世紀から8世紀に作られたヒンドゥー教石窟群は確かに素晴らしいのですが、島に住む猿たちが観光客の持ち物を狙っているのです。ペットボトルやお菓子はもちろん、帽子やサングラスまで素早く奪い取って木の上に逃げてしまいます。

船の運賃は往復で180ルピー、島の入場料は40ルピーですが、船は朝9時から午後5時30分まで30分間隔で運行されています。最終便に乗り遅れると島に取り残されてしまうので、時間管理は厳重に行いましょう。

ムンバイで絶対に避けるべき3つのこと

最後に、私の失敗から学んだ「やってはいけないこと」をお伝えします。まず、カーストや宗教に関する軽はずみな質問は絶対に避けてください。特にタクシー運転手との会話では、政治的な話題も含めて慎重になるべきです。

次に、写真撮影時の注意。軍事施設や政府庁舎はもちろん、ダラヴィなどでも住民の許可なく撮影するのは厳禁です。また、宗教施設内では撮影禁止の場所も多く、違反すると警備員に厳しく注意されることがあります。

そして三つ目は、両替時の詐欺です。街中の両替商の中には、巧妙な手口で観光客をだます業者もいます。必ず銀行や正規の両替所を利用し、受け取った紙幣は必ずその場で枚数と金額を確認してください。

帰国前に必ずチェックすべきお土産事情

ムンバイのお土産選びで意外に苦労するのが、品質の良い商品を見つけることです。コラバ・コーズウェイの土産物街は観光客向けの店が多く、値段も割高。地元の人がおすすめするのは、リンキング・ロード(バンドラ地区)のショッピングエリアです。ここなら本格的なインド綿製品や香辛料を、観光地価格の半額程度で購入できます。

ムンバイは確かに分かりにくく、時に観光客に厳しい街です。しかし、その奥に隠された多様性と活気は、一度体験すると忘れられない魅力があります。事前準備をしっかりと行い、現地の人々との交流を恐れずに楽しめば、きっと予想を超える発見があるはずです。