「天国」と呼ばれるエルニドの真実とは?
フィリピン・パラワン島の最北端に位置するエルニドは、確かに美しい場所です。しかし「フィリピン最後の秘境」なんて言葉に踊らされて、何の準備もせずに行くと痛い目に遭います。私も初回訪問時、完全に舐めてかかって大失敗しました。
エルニドという名前は、この地域の洞窟で採れる燕の巣(ニド)から来ています。中国系商人が高級食材として取引していた歴史があり、今でも一部の洞窟では燕の巣採取が行われています。マニラから国内線でプエルト・プリンセサ経由、さらにバスで5時間。アクセスの悪さが秘境感を演出していますが、これが最初の落とし穴なのです。
99%の人が知らない、エルニドの「裏の顔」
観光パンフレットには絶対載らない話をしましょう。エルニドの美しいビーチの多くは、実は満潮時にはほとんど砂浜が消えるんです。特にセブン・コマンドビーチやナクパンビーチは、潮の満ち引きで全く違う顔を見せます。
さらに驚くべき事実:エルニドの石灰岩の島々は、年間約2ミリずつ海面から「成長」しています。これは地殻変動によるもので、地質学者の間では「生きている地形」として注目されているんです。
最も重要なのは、地元の人しか知らないディタイタイアイランドの存在。観光ツアーには含まれない小さな無人島ですが、ここの透明度は他とは別次元。バランガイキャプテン(村長)に直接交渉すれば、漁師のボートで連れて行ってもらえます(約500ペソ)。
絶対にやってはいけない3つの致命的ミス
**ミス1:雨季(6月〜10月)の訪問**
私が初めて行ったのは8月でした。毎日スコールが降り、ボートツアーは半分以上中止。宿で退屈な時間を過ごす羽目になりました。ベストシーズンは12月〜4月です。
**ミス2:現地でのツアー予約**
エルニドタウンは小さく、ツアー会社は限られています。ハイシーズンは予約が取れず、取れても割高。Manila-based のツアー会社で事前予約が賢明です。
**ミス3:ATMを当てにすること**
エルニドのATMは頻繁に故障します。私も現金が底をついてヒヤヒヤしました。プエルト・プリンセサで十分な現金を用意しておきましょう。
アイランドホッピングの「本当の楽しみ方」
エルニドのメインイベントは4つのツアーコース(A、B、C、D)でのアイランドホッピングです。料金は1人1,500〜1,800ペソ(約4,000〜5,000円)。しかし、本当に特別な体験をしたいなら、ツアーCとDの組み合わせをおすすめします。
ツアーCで訪れるヒドゥンビーチは、その名の通り岩の隙間を泳いで入る秘密のビーチ。満潮時は入口が狭くなるので、干潮の2時間前後が狙い目です。ここで地元ガイドから聞いた話では、このビーチは元々海賊の隠れ家だったそうです。
**シミズアイランド**では、シュノーケリングでウミガメに遭遇する確率が高いのですが、実はウミガメが最も活発になるのは朝の6時〜8時。通常ツアーは9時スタートなので、この時間帯を逃してしまいます。
エルニドでしか味わえない絶品グルメの世界
エルニドの食べ物で絶対に試してほしいのがウニ(Sea Urchin)です。日本のウニとは全く違う、クリーミーで濃厚な味わい。地元の漁師から直接買えば1個50ペソ程度ですが、レストランだと300ペソ以上します。
**Art Cafe**のココナッツライスは有名ですが、本当に美味しいのは隣の路地にある名前のない食堂のアドボ。おばあちゃんが作る家庭の味で、1皿150ペソです。営業時間は気まぐれですが、午前11時〜午後2時頃が確実です。
意外なことに、エルニドには日本人オーナーのラーメン屋があります。「Ramen Yebisu」で、海外で食べるラーメンとしては驚くほどのクオリティ。1杯400ペソと高めですが、連日海外の食事に疲れた胃には救世主です。
知っておくべき現実的な注意点とコツ
エルニドの宿泊施設は大きく3つのエリアに分かれます。**エルニドタウン**は最も便利ですが夜中まで騒がしく、**コロンビーチ**は静かですが町まで徒歩20分、**ラスカバナスビーチ**はリゾート感がありますが食事の選択肢が限られます。
電力事情も要注意。エルニドの電気は**午後2時〜午前6時のみ**の供給です(一部のリゾートは自家発電あり)。スマホの充電計画を立てておかないと、美しい景色を撮影できません。
虫除けスプレーは必須アイテム。特に**サンドフライ**という小さな虫は、刺されると1週間以上かゆみが続きます。現地のドラッグストアで売っている「OFF!」が最も効果的です。
帰国後も心に残る、エルニドの本当の魅力
最後に、エルニドの真の魅力について。それは完璧に整備された観光地ではないからこその**生々しさ**です。突然のスコール、故障するボート、時間通りに来ないガイド。すべてがアドベンチャーになります。
私が最も印象に残っているのは、ボートが故障して無人島に3時間取り残された時のこと。最初はイライラしましたが、誰もいないビーチで波の音だけを聞いていると、都市生活では味わえない静寂に包まれました。これこそがエルニドの本当の贈り物だったのです。
**バックイットアイランド**の夕日を見ながら、ガイドのマニーさんが言った言葉が忘れられません。「Paradise is not a place, it’s a feeling」(楽園とは場所ではなく、気持ちなのさ)。
エルニドは確かに美しい場所ですが、その美しさを本当に味わうには、予想外の出来事も含めて全てを受け入れる心構えが必要です。完璧を求める旅行者には向かないかもしれません。でも、本物の冒険を求める人には、これ以上ない場所だと断言できます。