パタゴニアWトレックって本当に危険なの?
チリ南部のトーレス・デル・パイネ国立公園で体験できるWトレック。この5日間のトレッキングコースは、確かに世界屈指の美しさを誇りますが、甘く見てはいけません。私自身、2日目の夜に天候が急変し、テントが吹き飛ばされそうになった経験があります。
パタゴニアの天気は「1日で四季がある」と言われるほど変わりやすく、風速40メートルを超える突風が吹くことも珍しくありません。でも、だからこそ辿り着いた時の感動は格別なのです。
事前準備で生死が分かれる?装備選びの現実
「軽装で行けるでしょ?」そんな甘い考えは捨ててください。パタゴニアWトレックでは、防風・防水性の高いアウターが生命線です。私が現地で出会った日本人トレッカーの中には、安物のレインウェアで挑戦して低体温症になりかけた方もいました。
特に重要なのは以下の装備です:
– 風速50m/sに耐えるテント(レンタル可能、1日約8,000円)
– 寝袋は最低でもマイナス10度対応
– トレッキングポールは必須(岩場での転倒防止)
意外な盲点はサングラスです。パタゴニアの紫外線は想像以上に強く、雪面反射で雪目になるトレッカーが後を絶ちません。
実際のルートはこんなにハード!各日程の生々しい体験談
Wトレックはラス・トーレス展望台から始まります。プエルト・ナタレスの町から公園入口まではバスで約2時間、入園料は大人21,000チリペソ(約3,500円)です。
1日目は比較的楽な8km程度ですが、2日目からが本番。クエルノス・デル・パイネを眺めながらの12km行程では、足首まで沈む泥道と格闘することになります。私はここで登山靴の中がびしょ濡れになり、その後3日間、水虫との戦いが始まりました。
3日目のフレンチバレーは最大の難所です。標高差800mの急登で、岩だらけの道に何度も膝をついて登ります。でも頂上からの360度パノラマは、まさに地球の裏側まで来た甲斐があったと心から思える絶景でした。
現地の人しか知らない隠れた絶景ポイントとは?
ガイドブックには載っていない秘密をお教えしましょう。4日目のグレイ氷河展望台から少し外れた場所に、現地ガイドだけが知る特別な撮影スポットがあります。メインの展望台から南に約200m歩いた岩場です。
ここからは氷河が湖に崩れ落ちる瞬間を間近で見ることができ、運が良ければ氷山が転覆する「カービング」という現象も目撃できます。轟音と共に氷の塊が湖面に落ちる瞬間は、自然の力強さを肌で感じる貴重な体験です。
また、早朝5時頃にテントから出ると、観光客がいない静寂の中で朝焼けに染まるトーレスを独占できます。この時間帯は風も穏やかで、湖面に映る逆さトーレスも完璧に撮影できますよ。
帰国後も忘れられない、パタゴニアが教えてくれたもの
5日間のWトレックを終えた時、私の価値観は大きく変わっていました。日本での些細な悩みが、パタゴニアの圧倒的な自然の前では本当に小さなものに感じられたのです。
特に印象深かったのは、各国から来たトレッカーたちとの交流です。言語の壁を越えて、困った時は自然と助け合う。そんな人間の温かさを再発見できました。フランス人の老夫婦に分けてもらったホットチョコレートの味は、今でも忘れることができません。
パタゴニアWトレックは確かにハードです。でも、そのハードさを乗り越えた先にある感動は、一生の宝物になります。もし迷っているなら、ぜひ挑戦してみてください。きっとあなたも、地球の壮大さと自分の小ささ、そして生きることの素晴らしさを実感できるはずです。