なぜウッドホール・スパのゴルフコースなのか?
イングランドの温泉地として名高いウッドホール・スパで、まさかこんなに本格的なゴルフが楽しめるとは思いませんでした。多くの観光客がスパやハイキングを目当てに訪れるこの小さな町で、地元の人々に愛され続けているゴルフコースの存在を知ったのは偶然でした。
ウッドホール・スパ・ゴルフクラブは1905年創設という歴史を持ち、ロンドンから車で約3時間、リンカンシャー州の美しい丘陵地帯に位置しています。18ホールのパー70コースで、平日のプレー料金は約40ポンド、週末でも60ポンドほどと、ロンドン近郊の有名コースと比べると驚くほどリーズナブルです。
コースの特徴って想像とどう違う?
「田舎のコースだから簡単だろう」という私の甘い考えは、1番ホールで早くも打ち砕かれました。このコースの最大の特徴は、自然の地形を活かした戦略性の高いレイアウトです。
特に印象的なのが7番ホールのパー4。打ち上げのドッグレッグで、セカンドショットは完全にブラインドになります。現地のキャディさんに聞くと「ピンの位置を覚えて、勘で打つのがコツ」とのこと。まさにイギリスゴルフの真髄を感じる瞬間でした。
風の影響も予想以上に大きく、特に後半9ホールは丘の上にあるため、風向きと強さを読むスキルが要求されます。私が訪れた5月でも、風速10メートル近い強風に悩まされ、クラブ選択を3番手も変える必要がありました。
プレー当日の流れ、どんな感じ?
朝8時のスタート時間に合わせて、クラブハウスに7時30分に到着。受付は驚くほどフレンドリーで、「日本から来たの?素晴らしい!」と温かく迎えてくれました。営業時間は夏季(4月-10月)が朝7時から夕方7時、冬季は朝8時から夕方5時となっています。
ロッカールームは古き良きイギリスのゴルフクラブの雰囲気そのもの。木製のロッカーには歴代メンバーの名前が刻まれ、1950年代から使われているものもあります。シャワー設備は基本的ですが、清潔で十分機能的です。
プレー前の練習場は小さいながらも、ドライビングレンジ(約150ヤード)とパッティンググリーンが用意されています。ただし、練習ボールは有料で、1籠20球が3ポンドです。
コース攻略のコツ、教えます
このコースで最も重要なのは、コースマネジメントです。飛距離よりも正確性を重視し、確実にフェアウェイをキープすることが好スコアへの近道となります。
特に注意すべきは13番ホール。パー3ですが、グリーン手前に深いバンカーが待ち構えています。ピンポジションによってはワンクラブ上げて、グリーン奥から寄せる戦略も有効です。地元の常連さんに教わったテクニックですが、「ここは絶対に手前に落としてはダメ」というのが鉄則だそうです。
また、グリーンの芝質はベント系で、季節によってスピードが大きく変わります。春先はやや重く、夏場に向けて徐々に早くなる傾向があります。私がプレーした時期は中程度でしたが、下りのパットは思った以上に転がることを実感しました。
意外な魅力と注意したいポイント
このコースの隠れた魅力は、なんといっても野生動物との遭遇です。ラウンド中にウサギやキツネ、時には鹿の家族に出会うことがあります。16番ホールのティーグラウンドからは、運が良ければリンカンシャーの大聖堂が遠望できる絶景ポイントでもあります。
ただし、気をつけたいのがドレスコード。イギリスの伝統的なゴルフクラブらしく、襟付きシャツとゴルフシューズは必須です。ジーンズやTシャツでの入場は断られる可能性があります。
また、予約は必須で、特に週末や祝日は1週間前までの予約をおすすめします。電話予約が確実ですが、英語での対応のみとなります。クラブハウスのスタッフは親切ですが、ゆっくりとした英語で話してくれるので、中学英語レベルでも十分コミュニケーションが取れます。
プレー後のクラブハウスでの一杯も格別です。バーでは地元のエールビールが4ポンドから楽しめ、伝統的なフィッシュ&チップスやステーキ&キドニーパイなどのパブメニューも充実しています。特におすすめは「プラウマンズランチ」で、地元のチーズとハム、ピクルスの盛り合わせが絶品でした。
アクセスで知っておきたい裏技
ウッドホール・スパへのアクセスは、実は電車よりもレンタカーが断然便利です。最寄りのグランサム駅からタクシーで約45分、料金は片道50ポンド前後とかなり高額になります。しかし、車なら途中でコッツウォルズ地方の美しい村々を経由するルートも選択でき、ゴルフ旅行が一層充実します。
駐車場は無料で、クラブハウス前に約50台分のスペースがあります。ただし、週末の午前中は満車になることもあるので、早めの到着がおすすめです。
地元の人だけが知る秘密の楽しみ方
実は、このコースには一般には知られていない「19番ホール」が存在します。これはクラブハウス裏手の小さなパッティンググリーンのことで、プレー後に仲間同士で腕試しをする非公式の場所です。地元メンバーに教えてもらい参加しましたが、勝者が次のラウンドでドリンク代を奢るという粋な賭けも行われていました。
また、コース脇に咲く野生のブルーベルは4月下旬から5月上旬が見頃で、まるでおとぎ話の世界のような美しさです。この時期にプレーできれば、ゴルフとイギリスの自然美を同時に楽しめる贅沢な体験となるでしょう。
温泉地のゴルフコースという意外な組み合わせが、思いがけない発見と感動を与えてくれたウッドホール・スパでのゴルフ体験。スコアはさておき、イギリスの田舎町で過ごした一日は、きっと忘れられない思い出になるはずです。