ノース・ベリックのゴルフコースは初心者泣かせ?実は歴史と絶景が織りなすスコットランドの隠れた名門

スコットランドの海辺に眠る、知られざるゴルフの聖地

ノース・ベリックのゴルフコース全景

エディンバラから電車でわずか30分。フォース湾を望む小さな海辺の町ノース・ベリックに、実はゴルフ史上極めて重要な2つのコースが静かに佇んでいます。多くの日本人ゴルファーがセント・アンドリュースやミュアフィールドに向かう中、地元のゴルファーたちはこっそりとこの町の魅力を噛みしめているのです。

ノース・ベリック・ゴルフクラブのウェストリンクスは1832年創設という歴史を誇り、現存するゴルフコースとしては世界で13番目に古いコース。一方のグレン・ゴルフクラブも1906年創設と、100年を超える伝統があります。しかし、ここが面白いのは「有名すぎない」ところ。予約が取りやすく、料金も良心的で、真のスコットランドゴルフを体験できるのです。

初心者には過酷?いえいえ、これこそが本物のリンクスゴルフです

海風が吹く中でのゴルフプレー

「リンクスゴルフって難しそう…」そんな不安を抱えてノース・ベリックを訪れる方も多いはず。確かに海風は容赦なく吹きつけ、フェアウェイには自然の起伏がそのまま残されています。でも、ちょっと待ってください。これこそがゴルフの原点なんです。

ウェストリンクスの名物ホールである15番パー3「レダン」は、世界中のゴルフコース設計者がコピーしようと試みた伝説的なホール。グリーンが斜めに配置され、手前のバンカーが巧妙にピンを隠している設計は、実に150年以上前に自然の地形を活かして作られたもの。現代の設計者が頭をひねって作る戦略的ホールの元祖がここにあるのです。

プレー料金は平日で約70ポンド(約13,000円)、土日でも90ポンド程度と、セント・アンドリュースの半額以下。朝7時から夕方まで営業しており、夏場なら午後8時頃までプレー可能です。

あの伝説的ショットが生まれた舞台を歩く

歴史あるクラブハウスの外観

ノース・ベリックで最も興味深いのは、ゴルフ史に残る数々の「発明」がここで生まれたこと。現在では当たり前のバンカーショットの技術も、実はこのコースの名物バンカーから生まれたとされています。

19世紀後期、このコースで腕を磨いた地元のプロゴルファー、ベン・サイアーズは世界で初めて「サンドウェッジ」の原型となるクラブを考案しました。コース内の深いポットバンカーから脱出するため、クラブフェースを寝かせて砂と一緒にボールを飛ばす技術を編み出したのです。現在でも彼のサインが残るクラブハウスは、まさに生きたゴルフ博物館。

グレン・ゴルフクラブの方は、より現代的なコース設計で初心者にも優しい設計。料金も平日35ポンド程度とリーズナブルで、「リンクス初体験」には最適です。エディンバラから日帰りでも十分楽しめる立地も魅力的。

地元民だけが知る、プレー後の至福のひととき

19番ホール クラブハウスでの食事風景

ラウンド後の楽しみも、ノース・ベリックの隠れた魅力の一つ。クラブハウスで味わえる伝統的なスコティッシュ・ブレックファストは絶品で、地元産のソーセージとブラックプディングは疲れた体に染み渡ります。

でも真の地元民は知っている秘密があります。コースから徒歩5分の場所にある小さなパブ「The Ship Inn」こそが、本当のゴルフ談義の場所なのです。壁には100年以上前からの様々なゴルフ大会の写真が飾られ、地元のメンバーたちが今日のラウンドを振り返りながら一杯やっています。ここで飲む地元産のエール「Deuchars IPA」は、まさにスコットランドゴルフの余韻を完璧に演出してくれます。

また、町の名物「Steampunk Coffee」では、ラウンド前の軽食やラウンド後のデザートが楽しめます。特に自家製スコーンは絶品で、バターをたっぷり塗って頬張りながら海を眺める時間は、きっと忘れられない思い出になるでしょう。

アクセスと予約の裏技、そして知っておきたい注意点

ゴルフバッグを持った人々がコースへ向かう様子

エディンバラのウェーバリー駅からノース・ベリック駅まで、スコットレイルで約35分、料金は片道8ポンド程度。駅からウェストリンクスまでは徒歩約10分と、アクセスは抜群です。

予約の際の裏技をお教えしましょう。平日なら前日でも予約可能ですが、火曜日と木曜日の午前中が最も取りやすい穴場の時間帯。地元のメンバーの多くが仕事をしているため、観光客でも比較的スムーズに予約できます。電話予約の際は、「日本から来たゴルフ愛好家」と伝えると、スタッフの方が親切に対応してくれることが多いです。

ただし、注意点もあります。スコットランドの海辺特有の急激な天候変化には要注意。朝は穏やかでも、午後には突然の雨や強風に見舞われることがあります。防水性の高いレインウェアは必須アイテム。また、リンクスコース特有のハードな地面のため、ソフトスパイクよりもスパイクレスシューズの方が歩きやすく、現地でも推奨されています。

冬場(11月〜2月)は日照時間が短く、午後3時頃には薄暗くなってしまいます。この時期にプレーするなら、必ず午前中のスタート時間を確保しましょう。逆に夏場(6月〜8月)は午後9時近くまで明るいため、遅いスタート時間でもゆったりとラウンドを楽しめます。

レンタルクラブも充実しており、1日30ポンドで借りられます。ただし、数に限りがあるため事前予約は必須。特にドライバーは飛距離よりも方向性を重視したクラブが多く、リンクスコースの攻略には適しています。

ノース・ベリックのゴルフコースは、有名なチャンピオンシップコースとは一味違う、温かみのある本物のスコットランドゴルフ体験を提供してくれます。観光客だらけの有名コースとは対照的に、地元の人々と一緒に純粋にゴルフを楽しめる場所。きっと、あなたのゴルフ人生に新しいページを加えてくれることでしょう。