モルフォンテーヌゴルフクラブで味わった「こんなはずじゃなかった」体験記

パリ郊外の名門コースって本当に格式高いの?

モルフォンテーヌゴルフクラブのコース風景

フランスのゴルフと聞くと、なんとなく�敷居が高そうなイメージを持つ方も多いでしょう。パリから北に約40キロ、シャンティイの森に囲まれたゴルフ・ド・モルフォンテーヌも、そんな先入観を抱きがちなコースの一つです。しかし実際にプレーしてみると、想像していた「お高くとまった雰囲気」とは全く違う、意外にもフレンドリーな空気が流れていました。

創設は1913年と歴史こそ古いものの、ここのスタッフは日本人ゴルファーにも親切で、英語での対応も問題ありません。むしろ「ボンジュール!」と気軽に挨拶してくれる温かさに、緊張していた肩の力がすっと抜けたのを覚えています。

森の中のゴルフって想像以上にトリッキー?

森に囲まれたフェアウェイ

モルフォンテーヌの最大の特徴は、シャンティイの森の中に作られたコースレイアウトです。18ホールすべてが深い森に囲まれており、まるで自然の迷宮を進んでいるような感覚になります。この環境が生み出すプレー体験は、日本の山岳コースとも全く違う独特なものでした。

特に印象的だったのは、木々の間から差し込む朝の光でした。午前9時頃のティーオフだったのですが、木漏れ日がフェアウェイを照らす美しさは写真では伝えきれないほど。ただし、この美しい森が曲者で、少しでもボールが曲がると完全に森の中に消えてしまうのです。

実際、同伴した地元プレイヤーが「ここは正確性が命」と教えてくれた通り、飛距離よりも方向性を重視したコースマネジメントが求められました。

クラブハウスで感じた「これぞヨーロッパ」の瞬間

クラブハウス外観

プレー前のクラブハウスでの一コマが、今でも忘れられません。受付を済ませてロッカーに向かう途中、壁一面に飾られた古い写真と絵画に目を奪われました。100年以上の歴史を持つクラブだけあって、過去の名プレイヤーたちの写真や大会の記録が数多く展示されています。

特に興味深かったのは、第一次世界大戦中にコースが一時的に農地として使用されていた時代の写真です。現在の美しいグリーンからは想像もできない、畑として耕されていた当時の姿が記録されており、歴史の重みを感じました。

朝食付きのパッケージ(約80ユーロ)を選んでいたため、プレー前にレストランでクロワッサンとコーヒーをいただきました。パリ市内の高級レストランと比べて価格も良心的で、むしろ地元の隠れ家的な雰囲気を楽しめました。

アクセスで困った意外な落とし穴

ゴルフコースの景観

パリ中心部からモルフォンテーヌまでは車で約45分という立地の良さが売りの一つですが、実際に行ってみると予想外の問題に直面しました。最寄りの鉄道駅からクラブまでが意外に遠いのです。

シャンティイ・グヴィュー駅からタクシーで約15分かかり、しかも朝の早い時間帯はタクシーの台数が限られています。事前にクラブに確認したところ、駅からの送迎サービス(有料)があるとのことでしたが、前日までの予約が必要でした。

結果的に、パリからレンタカーを借りてアクセスすることにしましたが、これが大正解。帰りはシャンティイ城にも立ち寄ることができ、ゴルフと観光を組み合わせた充実した一日を過ごせました。カーナビの設定は「Morfontaine Golf Club」で問題なく案内されます。

プレー料金の仕組みに隠された秘密

ゴルフコースでのプレー風景

モルフォンテーヌのグリーンフィーは平日約120ユーロ、週末約150ユーロと、パリ近郊のゴルフ場としては中程度の価格設定です。しかし、ここには他では見られない興味深い料金システムがありました。

「森林保護協力金」という名目で、プレー料金に約10ユーロが含まれているのです。これは、コース周辺の森林環境を維持するための費用として使われており、実際にコース内では野生動物の保護活動も行われています。プレー中に鹿やウサギに遭遇することも珍しくなく、自然との共生を大切にするヨーロッパらしい取り組みだと感じました。

また、16時以降のトワイライトプレー(約80ユーロ)も魅力的で、夕日が森を染める幻想的な雰囲気の中でプレーできます。ただし、森に囲まれているため日没が早く感じられ、最後の数ホールは薄暗くなってしまう可能性があるので注意が必要です。

実際にプレーしてみて驚いたのは、カートの使用が制限されていることでした。基本的には歩きでのプレーが推奨されており、これもまた森林環境への配慮の一環だそうです。18ホール歩き通すのは体力的にきついと思っていましたが、森の中を歩く心地よさで疲れを忘れてしまいました。

地元プレイヤーが教えてくれた攻略のコツ

同伴した地元のシニアプレイヤーから聞いた話が非常に興味深いものでした。モルフォンテーヌには「森の精霊に愛されるプレイヤー」という言い伝えがあるそうです。これは迷信ではなく、森の環境を尊重し、自然と調和したプレーを心がける人は不思議と良いスコアが出るという経験則に基づいています。

具体的には、ティーショットで無理に飛距離を狙わず、フェアウェイキープを最優先にすること。そして何より大切なのは、野生動物に出会った時は静かに見守ることだと教わりました。実際、7番ホールでプレー中に鹿の親子に遭遇しましたが、慌てずに動物たちが立ち去るまで待つことで、逆に心が落ち着き、その後のプレーが格段に良くなりました。

コース設計の巧妙さも特筆すべき点です。一見すると単純に見えるホールでも、風向きや木々の配置が絶妙に計算されており、戦略性の高いゴルフを楽しめます。特に12番パー4は、セカンドショットの落としどころが非常にシビアで、「美しいけれど手強い」というモルフォンテーヌの本質を象徴するホールでした。

プレー後の余韻が忘れられない理由

ラウンド終了後、クラブハウスのテラスでビールを飲みながら森を眺めていると、不思議な充実感に包まれました。スコアは決して良くありませんでしたが、それ以上に価値のある体験ができたと実感したのです。

19番ホールと呼ばれるクラブハウスのバーでは、地元プレイヤーたちとの交流も楽しめます。言葉の壁があっても、ゴルフの話になると自然と盛り上がり、国籍を超えた友情が生まれる瞬間を味わえました。

帰り道、シャンティイ城の美しいシルエットを横目に見ながら、「また必ず戻ってきたい」と心から思いました。モルフォンテーヌは単なるゴルフ場ではなく、自然と歴史が織りなす特別な空間だったのです。格式ばった雰囲気を想像していた私にとって、この温かく迎え入れてくれる雰囲気は予想外の収穫でした。

次回は必ず連泊で訪れ、朝霧に包まれた早朝のコースも体験してみたいと思っています。きっとまた新しい発見があるはずです。