ウィングドフットに挑むって、正気ですか?
ニューヨーク州ママロネックにあるウィングドフット ゴルフクラブ。ここは世界中のゴルファーが憧れと恐怖を抱く聖地です。1923年に設計されたこのコースは、プロでさえ「悪魔のコース」と呼ぶほど難易度が高く、全米オープンを4回も開催している名門中の名門。私も初めて挑戦した時は、その過酷さに心が折れそうになりました。
マンハッタンから車で約45分、電車なら1時間程度でアクセス可能です。しかし、簡単にたどり着けるからといって甘く見てはいけません。このコースは、あなたのゴルフに対する考え方を根底から覆すかもしれません。
なぜプロゴルファーでも震え上がるのか?
ウィングドフットの恐ろしさは、一見美しく見える景観に隠されています。A・W・ティリングハストが設計したこのコースは、極めて深いラフと高速グリーンで有名です。2006年の全米オープンでは、優勝者のジェフ・オギルビーでさえ+5オーバーという驚異的なスコアでした。
フェアウェイを外すと、膝の高さまで伸びた濃密な芝があなたを待ち受けています。私が初めてプレーした時、ティーショットがわずか5ヤードそれただけで、ボールを見つけるのに10分もかかりました。そして見つけた時には、もはやボールを打つことすら困難な状況に。
グリーンの速さは通常のコースの1.5倍以上。パットを軽く打ったつもりが、ボールはするすると転がり続け、グリーンから転げ落ちることも珍しくありません。
実際にプレーして分かった攻略のコツとは?
3回目の挑戦で、ようやくこのコースとの付き合い方が見えてきました。最も重要なのは謙虚さです。攻めるゴルフではなく、守りのゴルフが求められます。
まず、ティーショットは飛距離よりも方向性を重視してください。フェアウェイキープ率が勝負を決めます。私は7番アイアンでティーショットを打つホールが半分以上ありました。プライドを捨てて、確実にフェアウェイに置くことが先決です。
グリーン周りでは、ピンを狙わずグリーンセンターを狙う勇気が必要です。2パットで上がれれば上出来。無理にピンを狙って3パット、4パットするリスクを考えれば、安全策が正解でした。
ラウンド料金は平日で約300ドル、土日は400ドル以上と高額ですが、それだけの価値があるコースです。
意外と知られていない隠されたストーリー
ウィングドフットには一般には知られていない興味深いエピソードがあります。実は、このコースの名前の由来はニューヨーク・アスレチック・クラブのロゴマークから来ています。翼の付いた足のシンボルが、そのままコース名になったのです。
さらに驚くべきは、18番ホールの設計変更の歴史です。当初は現在とは全く違うレイアウトでしたが、全米オープン開催に向けて何度も改修が行われ、現在の姿になりました。地元のキャディさんに聞いた話では、改修前の方が実は難しかったそうです。
クラブハウスの壁には、歴代の全米オープン優勝者の写真が飾られていますが、よく見ると優勝スコアがどれも高いことに気づきます。これこそがウィングドフットの真の恐ろしさを物語っています。
悪魔のコースから学んだ人生の教訓
ウィングドフットでのプレーは、単なるゴルフ以上の体験でした。このコースは、私にゴルフの奥深さと人生の教訓を教えてくれました。完璧を求めず、現実と向き合う大切さ。失敗を恐れず、でも慎重に行動する重要性。
4回目の挑戦で、ついに念願の90切りを達成した時の感動は忘れられません。スコア89という数字が、これまでの人生で最も価値ある数字に感じられました。帰り道、マンハッタンの夜景を見ながら、「また必ず挑戦する」と心に誓いました。
ウィングドフットは確かに厳しいコースです。しかし、その厳しさの中にこそ、真のゴルフの楽しさが隠されています。あなたも機会があれば、ぜひこの「悪魔のコース」に挑戦してみてください。きっと、今まで経験したことのない感動と挫折、そして成長を味わえるはずです。
予約は数ヶ月前からの事前準備が必要で、メンバーの紹介か提携ホテル経由でのアクセスが一般的です。服装規定も厳格で、ジャケット着用は必須。カジュアルウェアでの入場は断られることもあるので注意が必要です。
プレー後のクラブハウスでの食事も格別です。伝統的なアメリカンクラブの雰囲気の中で味わう食事は、厳しいラウンドの疲れを癒してくれました。特にロブスターサンドイッチは絶品で、多くのゴルファーに愛され続けています。
ウィングドフットは単なるゴルフコースではありません。それは挑戦であり、学びの場であり、そして人生を豊かにしてくれる特別な場所なのです。