全米オープン開催地シネコック・ヒルズの「予約困難すぎる」現実と攻略法

「世界最高峰のコースなのに、なぜこんなに入場が厳しいの?」

シネコック・ヒルズの美しいゴルフコース

ニューヨーク州ハンプトンズにあるシネコック・ヒルズ・ゴルフクラブ。全米オープンを5回も開催した名門中の名門なのに、一般ゴルファーがプレーするのは至難の業です。実際に私が初めてここでプレーしようと計画した時、驚愕の事実を知ることになりました。

このコースは1891年創設で、アメリカで最も古いゴルフクラブの一つ。しかし完全会員制で、ビジター受け入れは極めて限定的なのです。通常のゴルフ場予約サイトには一切掲載されていません。まさに「知る人ぞ知る」の世界です。

所在地はニューヨーク州サウサンプトンで、マンハッタンから車で約2時間。しかし距離以上に高いのは、プレーへの「ハードル」なのです。

「会員紹介なしでは絶対に無理?」実際の予約体験談

シネコック・ヒルズのクラブハウス

私が最初にシネコック・ヒルズでのプレーを試みたのは3年前のこと。ネットで調べても予約方法が全く分からず、直接電話をかけてみました。受付の方は丁寧でしたが、答えは予想通り「会員様のご紹介がない限り、ビジターでのプレーはお受けしておりません」でした。

しかし諦めきれず、ゴルフ仲間に相談したところ、意外な方法を教えてもらいました。チャリティーイベントや特別なトーナメントの際に、限定的にビジター枠が設けられることがあるのです。実際に年に数回、慈善目的のイベントで一般参加が可能になります。

料金は通常のゴルフ場の10倍以上。プレー費だけで800ドル〜1200ドル(約12万円〜18万円)というのが相場です。さらにキャディー費用やチップを含めると、1ラウンドで20万円以上は覚悟が必要です。

「全米オープンコースの難易度は別次元?」実際にプレーしてみた感想

シネコック・ヒルズの起伏に富んだフェアウェイ

運良くチャリティーイベントでプレーする機会を得た時の感動は、今でも忘れられません。まず驚いたのはフェアウェイの起伏の激しさです。テレビで見るより実際のコースは遥かにアップダウンが激しく、平らなライはほとんどありません。

特に印象的だったのは16番パー4。距離は短めの380ヤードですが、グリーン周りの深いバンカーと、微妙な傾斜が組み合わさって、プロでも苦戦する難ホールです。私は結局このホールだけで8打も叩いてしまいました。

風の影響も想像以上でした。海に近い立地のため、常に強い横風が吹いており、番手選択が非常に難しい。地元キャディーさんの助言なしには、まともなスコアは期待できません。

「実は知られていない」シネコック・ヒルズの意外な歴史

シネコック・ヒルズの歴史あるクラブハウス内部

多くの人が知らない事実ですが、シネコック・ヒルズはアメリカで初めて女性会員を正式に認めたゴルフクラブの一つです。1891年の創設時から、既に女性ゴルファーの参加を認めていました。これは当時としては革命的なことでした。

また、コース設計に関しても興味深い逸話があります。現在のコースレイアウトを手がけたのは、なんと会員自身なのです。1916年に大幅改修が行われた際、著名な設計家ではなく、コースを熟知した会員たちが中心となって設計したという、極めて珍しいケースなのです。

クラブハウスの地下には、禁酒法時代(1920-1933年)に密かに酒類を貯蔵していた隠し部屋があるという噂も。現在は公開されていませんが、長年の会員の間では有名な話です。

「どうしてもプレーしたい人」への現実的なアドバイス

シネコック・ヒルズでのゴルフプレーの様子

完全に諦める前に、いくつかの方法をお教えします。最も確実なのは年1回開催される「Members’ Guest Day」への参加です。これは会員が知人を招待できる特別な日で、運よく知り合いに会員がいれば招待してもらえる可能性があります。

また、近隣の名門コース(ナショナル・ゴルフ・リンクス・オブ・アメリカなど)でのプレー時に、地元のゴルファーとの繋がりを作ることも重要です。ハンプトンズのゴルフコミュニティは意外と狭く、縁があれば紹介してもらえることもあります。

現実的な代替案として、シネコック・ヒルズのキャディープログラムへの参加という裏技もあります。毎年夏にキャディー募集があり、採用されればコースを間近で体験できます。プレーはできませんが、世界最高峰のコースを知る貴重な機会になります。

訪問の際は、営業時間にも注意が必要です。会員制クラブのため、一般的な営業時間の概念はありませんが、クラブハウスは通常午前7時から午後8時まで開いています。ただし、事前連絡なしの見学は一切受け付けていません。

アクセスと周辺情報も重要なポイント

マンハッタンからのアクセスは、ロングアイランド高速道路経由で約2時間。夏のハンプトンズは交通渋滞が激しいため、平日の早朝出発がおすすめです。最寄りの宿泊施設は「トッピング・ローズ・ハウス」で、シネコック・ヒルズから車で10分ほどの距離にあります。

レンタカーは必須です。公共交通機関でのアクセスは現実的ではなく、タクシーでの往復は費用が膨大になります。

地元のゴルフショップ「サウサンプトン・ゴルフ」では、シネコック・ヒルズ関連のグッズが購入できます。実際にプレーできなくても、記念品として帽子やボールマーカーを購入する観光客も多いです。

最後に、もしプレーの機会を得られたなら、ドレスコードは最も厳格なレベルを心がけてください。ジーンズやスニーカーは論外で、男性はジャケット着用が基本。女性もカントリークラブにふさわしい上品な装いが求められます。

シネコック・ヒルズは確かに一般ゴルファーには縁遠い存在ですが、だからこそ一度でもプレーできれば、生涯忘れられない体験になることは間違いありません。諦めずにチャンスを探してみる価値は十分にあります。