初心者が挑んだロイヤル・シンク・ポーツ ゴルフの洗礼~英国王室御用達コースで撃沈した理由

憧れの英国王室御用達コースへ、軽い気持ちで挑戦した結果…

ロイヤル・シンク・ポーツ ゴルフコースの美しい緑の風景

イングランド南東部サンドイッチにあるロイヤル・シンク・ポーツ ゴルフクラブ。「王室御用達」の響きに惹かれ、軽やかな気持ちで予約を入れました。しかし、いざ現地に立つと、その威厳と歴史の重みに圧倒されることになるのです。

1608年創設のこのコースは、世界最古のゴルフクラブの一つとして知られています。ロンドンから車で約1時間半、ドーバー海峡を望む丘陵地帯に広がるリンクスコースです。グリーンフィーは平日でも100ポンド前後、週末は150ポンドを超える高級コースですが、その価値は実際にプレーしてみて初めて理解できました。

着いてびっくり!クラブハウスの格式高さに気後れ

伝統的なゴルフクラブハウスの外観

午前8時にクラブハウスに到着すると、まず驚いたのがその建物の重厚さです。石造りの古典的な建築様式で、まるで貴族の館のよう。受付では、スタッフが丁寧すぎるほどの英国式マナーで対応してくれます。

ドレスコードは厳格で、コースではジャケットとネクタイ着用が義務づけられています(プレー中は除く)。更衣室も歴史を感じさせる木製ロッカーが並び、まるで映画のセットのような雰囲気。ここで初めて、自分がとんでもない場所に足を踏み入れたことを実感しました。

興味深いのは、クラブハウス内に飾られた歴代の王室メンバーの写真です。エドワード8世やジョージ6世もここでプレーしており、現在でも王室関係者が定期的に訪れるそうです。

コースに出て愕然…これが本場英国のリンクスの洗礼か

起伏に富んだリンクスコースの様子

いざティーグラウンドに立つと、目の前に広がるのは想像を絶する光景でした。自然のままの起伏を活かした18ホールが、まるで大自然の迷路のように続いています。

1番ホールから早速洗礼を受けました。パー4、396ヤードと距離は普通ですが、フェアウェイの傾斜が予想以上に急で、ボールがどこに転がっていくか全く読めません。さらに、海からの風が常に吹いており、クラブ選択が非常に難しい状況です。

特に印象的だったのは11番ホール。パー3でありながら、グリーンが完全に見えない「ブラインドホール」になっています。キャディさんに聞くと、「400年以上前からこの形で、あえて変えていない」とのこと。これが伝統の重みなのかと感じました。

バンカーも独特で、深いポットバンカーが戦略的に配置されています。一度入ると脱出だけで2打、3打とロスしてしまう恐ろしいトラップです。

キャディさんから聞いた、観光客が知らない裏話

ゴルフコースでのキャディとプレーヤーの風景

プレー中、地元出身のベテランキャディ、ジョンさんから興味深い話を聞きました。実は、このコースには「王室専用の隠しルート」があるそうです。通常のティーグラウンドとは別に、警備上の理由から王室メンバーだけが使用する特別なルートが存在するとか。

また、14番ホール付近には第二次世界大戦中の防空壕跡が残っており、現在も一部が保存されています。「戦時中もゴルフを続けた紳士たちがいた」とジョンさんは誇らしげに語ってくれました。

面白いのは、クラブの伝統として「19時以降の電話禁止令」があること。夕食時間は電話での業務を一切行わず、メンバー同士の親睦を深める時間として大切にしているそうです。こうした細かい伝統が、400年以上続くクラブの秘訣なのでしょう。

プレー後の余韻…これぞ本物の英国ゴルフ体験

ゴルフプレー後の満足感に浸る様子

18ホールを終えて戻ったクラブハウスで、伝統のアフタヌーンティーをいただきました。スコーンとクロテッドクリーム、そして地元ケント州産の紅茶。スコアは散々でしたが、この瞬間の満足感は格別でした。

営業時間は日の出から日没まで、冬季は午後4時頃に終了します。アクセスはロンドンから車が最適ですが、電車の場合はサンドイッチ駅からタクシーで約10分です。

予約は最低でも1か月前、できれば2か月前の予約をおすすめします。特に夏季(6-8月)は王室関係者の利用も多く、一般予約が取りにくくなるためです。

ただし、一つだけ注意点があります。このコースは風の強い日が多いため、初心者の方は必ず防風ジャケットを持参してください。私も海からの突風で帽子を飛ばされ、3番ホールのラフまで取りに行く羽目になりました。

帰り道、車窓から振り返って見たロイヤル・シンク・ポーツの風景は忘れられません。夕日に照らされたクラブハウスと、なだらかに続くフェアウェイ。スコアは100を大きく超えてしまいましたが、本物の英国ゴルフの洗礼を受けた充実感で胸がいっぱいでした。

「王室御用達」というブランドに惹かれて訪れましたが、実際に体験したのはそれ以上の価値でした。400年以上続く伝統、手つかずの自然、そして英国紳士のスピリット。これらすべてが、一度のラウンドで味わえる贅沢な体験だったのです。

初心者には確実に厳しいコースですが、だからこそ挑戦する価値があります。きっと、ゴルフに対する見方が変わるはずです。