なぜアブダビは「つまらない」と言われがちなのか?
「アブダビって何もない砂漠でしょ?」そんな声を聞くたびに、私は心の中で苦笑いしてしまいます。確かに、隣のドバイと比べると派手さに欠けるかもしれません。超高層ビル群の迫力もドバイには及ばないし、話題性のあるアトラクションも少なく感じるでしょう。
でも実は、この「地味さ」こそがアブダビの最大の魅力なんです。ドバイが新興の商業都市なら、アブダビはUAEの首都として伝統と革新を両立させている奥深い街。表面的な華やかさではなく、じっくりと味わうタイプの観光地なのです。
シェイク・ザーイド・グランドモスク:想像を絶する美しさに言葉を失う
アブダビ観光で絶対に外せないのがシェイク・ザーイド・グランドモスクです。入場料は無料ですが、その美しさは値段では測れません。
白亜の大理石で造られた建物は、まさに「地上の楽園」という表現がぴったり。特に夕方の時間帯(16時頃)に訪れると、西日に照らされた白い石材が黄金色に輝き、思わずため息が出るほどの絶景が広がります。
ここで知っておきたいのが、世界最大のペルシャ絨毯が敷かれているということ。5627平方メートルという途方もない大きさで、製作に2年近くかかったそうです。足元に注目しながら歩くと、その精密な模様に圧倒されるはずです。
営業時間は土曜日から木曜日が9時から22時、金曜日は16時30分から22時。アブダビ市内中心部からタクシーで約30分、料金は片道40〜50AED(約1500〜2000円)程度です。
エミレーツ・パレス:「世界一豪華」は伊達じゃない
エミレーツ・パレスは単なるホテルではありません。宿泊しなくても見学可能で、その豪華絢爛さは一見の価値があります。
驚くべきは建設費用で、なんと約3800億円。内装には金箔が114kg使用されており、天井から床まで至る所で金の輝きを見ることができます。ロビーの巨大なドーム天井は、まるで宮殿にいるような錯覚を覚えるほどです。
ここでぜひ体験してほしいのが金箔入りカプチーノ。1杯約1200円と決して安くはありませんが、本物の金箔がコーヒーの上で踊る光景は忘れられない思い出になります。カフェエリアは宿泊者でなくても利用可能で、10時から24時まで営業しています。
ルーヴル・アブダビ:砂漠に現れた芸術の聖地
2017年にオープンしたルーヴル・アブダビは、パリのルーヴル美術館の海外初の分館として大きな話題を呼びました。しかし、ここは単なるコピーではありません。
最大の見どころは、建物自体の建築美です。フランスの建築家ジャン・ヌーヴェルが設計した巨大なドーム屋根は、まるで星空のような美しい光のパターンを作り出します。この「光の雨」と呼ばれる現象は時間帯によって表情を変え、何時間見ていても飽きることがありません。
入場料は大人63AED(約2500円)で、火曜日から日曜日の10時から18時30分(土曜日は20時30分まで)開館。月曜日は休館日です。サーディヤット島に位置し、アブダビ市内からタクシーで約20分の距離にあります。
意外と知らない?アブダビの隠れたグルメ事情
アブダビのグルメと言えば高級レストランを思い浮かべがちですが、実はローカルフードの宝庫でもあります。
特におすすめなのがアル・ホスン地区のストリートフード。ここでは1食10〜20AED(400〜800円)程度で本格的なエミラティ料理が楽しめます。中でも「マチブース」という炊き込みご飯は絶品で、スパイスの効いた羊肉と香り高いバスマティライスの組み合わせは病みつきになります。
また、意外に思われるかもしれませんが、アブダビはデーツ(ナツメヤシ)の名産地でもあります。スーパーマーケットで購入できるメジュール種のデーツは、日本では高級品として扱われているものが格安で手に入ります。お土産としても喜ばれること間違いなしです。
知る人ぞ知る「ファルコン・ホスピタル」という珍スポット
アブダビには世界でも珍しいファルコン専門の病院があります。UAEでは鷹狩りが伝統的なスポーツとして親しまれており、ファルコンは家族同様に大切に扱われているのです。
この病院では一般見学も可能で(要予約、入場料25AED)、ファルコンの治療風景や、まるでホテルのような豪華な入院施設を見ることができます。ファルコン用のパスポートまで発行されているという事実に、きっと驚かれるはずです。
移動手段と気をつけるべきポイントは?
アブダビでの移動は主にタクシーが便利です。初乗りは5AED(約200円)で、メーター制なので安心。ただし、金曜日の午後は宗教的な理由でタクシーが捕まりにくくなるため、事前に配車アプリ「Careem」をダウンロードしておくことをおすすめします。
服装については、肩と膝を隠すことが基本ルールです。特にモスク見学時は厳格で、ノースリーブやショートパンツでは入場を断られる可能性があります。現地調達も可能ですが、事前に準備していくと安心です。
また、アルコールについて注意が必要です。アブダビではホテルやレストランでの飲酒は可能ですが、公共の場での飲酒や酔っ払った状態での外出は法律で禁じられています。
本当のアブダビに出会えるタイミング
アブダビの真の魅力を感じるなら、11月から3月の涼しい季節がベストタイミングです。この時期は屋外での観光も快適で、地元の人々も活動的になります。
特に2月頃には「アブダビ・フェスティバル」が開催され、街全体が文化的なイベントで賑わいます。伝統的なアラビア音楽のコンサートや、現代アートの展示など、普段は見ることのできないアブダビの文化的な側面に触れることができる貴重な機会です。
夕方になると、コルニーシュ・ビーチ沿いを散歩する家族連れや、伝統的なダウ船でクルージングを楽しむ人々の姿が見られます。この何気ない日常風景こそが、アブダビという街の本当の顔なのかもしれません。
派手さはないかもしれませんが、じっくりと時間をかけて味わうアブダビは、きっとあなたの旅の概念を変えてくれるはずです。表面的な観光地とは一線を画した、深い魅力に満ちた街で素敵な時間を過ごしてくださいね。