「また明日来ればいいや」が命取り?シェーンブルン宮殿の現実
ウィーンに来たら必ず訪れたいシェーンブルン宮殿。でも実際に行ってみると「こんなはずじゃなかった」という声をよく聞きます。私も初回訪問時は大失敗をしました。
一番多い失敗は「事前予約なし」で行くことです。特に4月から10月の観光シーズンは、当日券を求める長蛇の列に2時間以上並ぶことも珍しくありません。宮殿内部の見学ツアーは時間制で、満席になると次の枠まで数時間待つことになります。
料金は大人22ユーロからで、見学できる部屋数によってコースが分かれています。所在地はウィーン13区のシェーンブルナー・シュロス通り47番地。地下鉄U4線のシェーンブルン駅から徒歩10分ほどです。
営業時間は季節によって異なりますが、夏季(4月〜10月)は8時30分から17時30分まで。冬季は16時30分で閉館するので注意が必要です。
なぜマリア・テレジアの寝室で涙を流す人が続出するのか?
宮殿内部に足を踏み入れると、まず圧倒されるのがその豪華さです。しかし意外なことに、多くの部屋で感動のあまり涙を流す人を見かけます。
特にマリア・テレジア皇后の私室では、16人の子どもを産み育てながら国を統治した母の強さに心を打たれる女性が多いのです。部屋の隅には子どもたちの肖像画が飾られ、政治の重圧と母親業の両立に苦悩した皇后の人間味が伝わってきます。
音声ガイドは日本語対応で、各部屋の歴史背景を詳しく解説してくれます。ただし、ガイドを聞きながら見学すると1時間半から2時間はかかるため、時間に余裕を持って訪れることをお勧めします。
興味深いのは、宮殿の設計者ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハが、実はベルサイユ宮殿を上回る規模を計画していたという事実。しかし予算不足で規模縮小を余儀なくされました。
グロリエッテの絶景を独り占めする秘密の時間帯とは?
宮殿見学後は、ぜひ庭園も歩いてみてください。99%の観光客が見逃すのが「グロリエッテ」からの絶景です。
グロリエッテは宮殿から約800メートル離れた丘の上にある凱旋門風の建物。ここからウィーン市街を一望できるのですが、多くの人は宮殿見学で疲れて諦めてしまいます。
秘密は「朝8時台の訪問」です。この時間帯なら観光バスもまだ到着しておらず、朝靄に包まれたウィーンの街並みを独り占めできます。グロリエッテへの入場料は大人4.5ユーロで、展望テラスまで上がれます。
庭園は無料開放されており、早朝6時30分から利用可能。地元のジョガーや散歩する人々に混じって、静寂の中で宮殿の威容を眺める贅沢な時間を過ごせます。
動物園で世界最古のパンダ飼育の歴史に触れる?
意外と知られていないのが、シェーンブルン宮殿敷地内にある世界最古の動物園「ティアガルテン・シェーンブルン」の存在です。
1752年に開園したこの動物園は、現在でも運営される動物園としては世界最古。しかも単なる古い施設ではなく、2002年からジャイアントパンダの飼育を始めており、パンダの人工繁殖でも世界的に有名です。
入園料は大人26ユーロと少し高めですが、歴史的価値を考えれば妥当でしょう。宮殿との共通チケットも販売されており、効率よく回れます。
動物園で特に注目すべきは「皇帝朝食パビリオン」。マリア・テレジア皇后が実際に使用した八角形の建物で、現在はレストランとして営業しています。ここで食事をすれば、皇室の雰囲気を味わえます。
帰り道で後悔しないための「最後の隠れスポット」
最後にお伝えしたいのが、多くの人が見落とす「宮殿の裏手にあるオランジェリー」です。
ここは冬季に柑橘類を保管していた温室で、現在はコンサートホールとして使用されています。夕方になると西日が差し込み、ガラス張りの建物が黄金色に輝く幻想的な光景を目にできます。
オランジェリーでは定期的にモーツァルトやシューベルトの楽曲を演奏するコンサートが開催されており、チケットは25ユーロから。宮殿見学の余韻に浸りながら、ウィーン古典派の名曲に酔いしれる贅沢な時間です。
帰り道では、宮殿前のお土産店で「シシィ・チョコレート」をぜひ購入してください。エリザベート皇后にちなんだこのチョコレートは、宮殿でしか買えない限定品。スミレの香りがほのかに香る上品な味で、日本への お土産としても喜ばれます。
最後に、シェーンブルン宮殿から市内中心部への帰り方ですが、地下鉄U4線で約20分。夕方の帰宅ラッシュと重なることが多いので、座席確保は諦めて立つ覚悟で乗車しましょう。
宮殿見学は体力を消耗するため、翌日は軽めの観光スケジュールにすることをお勧めします。ウィーンらしい優雅な気分に浸った一日の記憶は、きっと生涯忘れられない宝物になるはずです。