上海と聞くと、きらびやかな外灘(バンド)の夜景や近未来的な浦東地区を思い浮かべる方が多いでしょう。でも実際に足を運んでみると、そんな「絵はがき的な上海」だけでは語り尽くせない、もっと深くて複雑な魅力に出会うことになります。今回は、初めて上海を訪れる方にこそ知っておいてほしい、この街の本当の顔をお伝えします。
まず押さえたい定番スポット、でも意外な落とし穴も?
上海観光といえば、まず外灘(ワイタン)は外せません。黄浦江沿いに並ぶ租界時代の西洋建築群は、午前10時から夜10時まで自由に散策できます。地下鉄2号線・10号線の南京東路駅から徒歩約10分でアクセス可能です。
ただし、多くの観光客が知らないのは、外灘の「ベストビュータイム」です。実は夕方5時頃から6時半にかけて、対岸の浦東地区に夕日が沈む瞬間が最も美しいのですが、この時間帯は地元の人々も散歩に出てくるため、想像以上に混雑します。写真撮影を考えているなら、平日の午後3時頃がおすすめです。
上海タワー(展望台入場料約200元)も定番ですが、118階の展望台(地上高546メートル)は確かに絶景です。営業時間は午前9時から午後9時まで。ただし、上海の空気の透明度は日によって大きく異なるため、PM2.5の数値をチェックしてから訪れることをお勧めします。
路地裏に潜む「もう一つの上海」を歩いてみる?
観光ガイドにはあまり載らない上海の魅力は、実は弄堂(ロンタン)と呼ばれる古い住宅街にあります。田子坊や新天地といった観光地化された場所も良いですが、本当の上海っ子の生活を垣間見たいなら、普通の弄堂を歩いてみてください。
特に面白いのは、朝7時から9時頃の弄堂です。路地の至る所で生煎包(焼き小籠包)や豆漿(豆乳)を売る屋台が現れ、地元の人々が朝食を買い求める光景に出会えます。1個3〜5元程度と値段も観光地の半分以下。ただし、衛生面が気になる方は避けた方が無難です。
意外に知られていないのが、上海には今でも「夜香族」と呼ばれる夜中に汚物処理をする職業が残っていることです。古い弄堂エリアでは下水設備が整っていない建物も多く、深夜2時頃から明け方にかけて、この夜香族の人々が自転車でゴミや汚物を回収している光景を目にすることがあります。
食べ歩きで発見!本当においしい上海グルメはここにある
上海料理といえば小籠包が有名ですが、実は地元の人が日常的に食べているのは「小籠包」よりも「生煎包」の方です。南翔饅頭店(豫園店は午前9時から午後9時、1籠8個入りで約40元)も良いですが、地元民なら黄河路の「小楊生煎」に通います。
また、観光客にはあまり知られていない上海冷麺も夏場の定番メニューです。冷たい麺に甘辛いタレとキュウリ、もやしを載せたシンプルな料理ですが、上海の蒸し暑い夏には欠かせません。普通の麺館なら12〜18元程度で食べられます。
意外なグルメスポットは七宝古镇(地下鉄9号線七宝駅から徒歩5分、入場無料)です。観光地として整備された水郷ですが、ここの「七宝汤圆」という白玉団子は絶品。特に黒胡麻餡とピーナッツ餡がおすすめで、1個8元程度です。午前9時から午後9時まで営業しています。
交通機関を制する者が上海観光を制す?
上海の地下鉄は世界最長の営業距離を誇り、観光には非常に便利です。1日乗車券は18元、3日券は45元で、午前5時半から午後11時頃まで運行しています。ただし、朝夕のラッシュ時間(午前7時半〜9時、午後5時半〜7時)は日本以上の混雑になることがあります。
タクシーの初乗りは14元(約280円)ですが、配車アプリ「滴滴出行」が普及しているため、路上でタクシーを拾うのは意外と困難です。外国人でもクレジットカードで決済できるので、事前にアプリをダウンロードしておくと便利です。
実は上海には「黄包車(人力車)」も現役で活躍しています。主に豫園周辺や田子坊で見かけますが、料金交渉制で30分200〜300元程度。観光アトラクションとしては面白いものの、コストパフォーマンスを考えると地下鉄の方が圧倒的にお得です。
知っておきたい上海のマナーと注意点
上海は中国の中でも比較的国際的な都市ですが、それでも日本とは異なる文化やマナーがあります。特に列に並ぶという概念が日本ほど厳格ではないため、地下鉄やバスでは「先に乗った者勝ち」的な雰囲気があることも。
また、上海では現金よりもモバイル決済が主流です。WeChatPayやAlipayが使えない場合、小さな店舗では困ることがあります。観光客向けには一部のコンビニで現金も使えますが、事前に電子マネーの準備をしておくことをお勧めします。
意外に重要なのがトイレ事情です。上海の公共トイレは近年大幅に改善されましたが、古い観光地や路地裏では今でも和式(しゃがみ式)が多く、トイレットペーパーが設置されていない場合があります。ティッシュペーパーは必携です。
上海っ子との会話で使える豆知識
上海の人々は自分たちの方言「上海語(滬語)」に強い誇りを持っています。標準中国語とは全く異なる言語といっても過言ではなく、北京出身の中国人でも理解できないほどです。「侬好(ノンホー)」は上海語で「こんにちは」という意味。地元の人にこの挨拶をすると、とても喜ばれます。
上海観光で最も大切なのは、表面的な煌びやかさだけでなく、この街に息づく多層的な文化と歴史を感じ取ることです。計画通りに回る観光地も良いですが、時には道に迷って偶然見つけた路地裏の風景こそが、最高の思い出になるかもしれません。上海は一度では語り尽くせない深い魅力を持った都市。きっとあなたも、この街の虜になってしまうでしょう。