ババロビーチってどこにあるの?知る人ぞ知る秘境への扉
インドネシアのスラウェシ島北部、マナド市から車で約1時間半の場所にあるババロビーチ。正直に言うと、私も最初は「ババロって何?」状態でした。日本のガイドブックにもほとんど載っていないこのビーチが、実は地元の人々にとって特別な意味を持つ場所だったのです。
トモホン市の海岸線に位置するこのビーチは、入場料が無料という驚きの事実から始まります。サム・ラトランギ国際空港からレンタカーで向かう道中、段々と観光地らしさが薄れていくのが分かるでしょう。それもそのはず、ここは地元の家族連れが週末に訪れる、いわば「地域密着型ビーチ」なのです。
到着してすぐに気づく「普通じゃない」雰囲気とは?
ビーチに足を踏み入れた瞬間、私は立ち止まってしまいました。砂の色が真っ黒だったのです。これは火山島特有の火山砂で、スラウェシ島の地質的特徴を物語っています。最初は「え、汚れてるの?」と思ってしまいましたが、これこそがババロビーチの最大の特徴でした。
黒い砂は太陽の熱を吸収しやすく、午後2時頃になると素足で歩くのが困難になります。私は準備不足で裸足で歩こうとして、慌ててビーチサンダルを買いに走った経験があります。地元の売店ではビーチサンダルが約2万ルピア(約180円)で販売されているので、忘れずに持参するか現地調達をおすすめします。
海の透明度は正直言って、バリ島やロンボク島ほど高くありません。しかし、この黒い砂と青い海のコントラストが作り出す景色は、他では絶対に見ることができない独特の美しさを持っています。
地元の人だけが知っている「本当の楽しみ方」を教えてもらった話
ビーチで一人でぼんやりしていた私に、地元のお母さんが声をかけてくれました。インドネシア語と片言の英語でのやり取りでしたが、彼女が教えてくれたのは「ババロの夕日は午後6時頃が一番美しい」ということでした。
そして驚いたのは、地元の人々の過ごし方です。観光客のように写真を撮りまくるのではなく、家族みんなでゆっくりと座り込み、子供たちは黒い砂で山を作って遊んでいます。大人たちは持参したお弁当を広げて、まさに「海辺のピクニック」状態。
私も真似をして、近くのワルン(地元食堂)でナシゴレンとエスジェルク(ココナッツアイス)を購入しました。ナシゴレンは約1万5千ルピア(約135円)、エスジェルクは5千ルピア(約45円)という破格の安さ。味も観光地価格ではない、本当の地元の味でした。
意外すぎる発見!ババロビーチの「隠れた歴史」
地元のおじいさんと話していて知ったのですが、ババロビーチは実は第二次世界大戦時に重要な役割を果たした場所だったそうです。日本軍が占領していた時期があり、現在でもビーチの端の方には当時の遺構らしき石積みが残っています。
この話を聞いた時、私は複雑な気持ちになりました。美しいビーチでのんびり過ごしている今と、80年近く前にここで起こった出来事との時間的距離。地元の人々は決して恨みがましく話すわけではなく、むしろ「歴史の一部として記憶している」という淡々とした口調でした。
観光ガイドには絶対に載っていないこの情報は、ババロビーチをより深く理解するための重要なピースだと感じています。単なる美しいビーチではなく、人々の暮らしと歴史が刻まれた場所なのです。
実際に行って分かった「注意点」と「おすすめの過ごし方」
ババロビーチは24時間開放されていますが、照明設備がほとんどないため、実質的には日の出から日没までの利用となります。最寄りのマナド市内から公共交通機関でのアクセスは困難なため、レンタカーまたはタクシーでの訪問が現実的です。
私が実際に体験して「これは必要だった」と思うものをリストアップします:
– 厚底のビーチサンダル(黒い砂の熱対策)
– 日焼け止め(反射が強い)
– 飲み物の多めの準備(売店は限定的)
– インドネシア語の簡単な挨拶(地元の人との交流に)
逆に「持ってこなくてて良かった」のは、高級なビーチグッズでした。ここは素朴さを楽しむ場所で、派手な浮き輪やパラソルは完全に場違いになってしまいます。
地元の人に愛される理由が分かった瞬間
午後5時頃になると、ビーチの雰囲気が変わります。仕事を終えた地元の人々が三々五々やってきて、まさに「地域のリビングルーム」状態になるのです。子供たちは黒い砂に足跡をつけながら鬼ごっこをし、お年寄りは海を眺めながら静かに会話を楽しんでいます。
私が最も印象的だったのは、誰も急いでいないということでした。観光地特有の「次はあそこに行かなきゃ」「写真を撮らなきゃ」という焦りが全くありません。時間がゆっくりと流れ、波の音と人々の笑い声だけが響いています。
本当の夕日の美しさに言葉を失った
午後6時15分頃、水平線に太陽が沈み始めました。黒い砂と青い海、そしてオレンジ色の空のコントラストは、確かに他では見られない光景でした。でも最も美しかったのは、その夕日を見つめる地元の人々の表情だったかもしれません。
観光客の私は必死にカメラを構えていましたが、地元の家族はただ静かに座って、自然にその瞬間を味わっていました。「毎日見ているから慣れている」のではなく、「毎日見ているからこそ、その日その日の違いが分かる」のだと気づかされました。
帰り道で考えた「観光」という言葉の本当の意味
ババロビーチからマナド市内への帰り道、私は「観光」について改めて考えていました。インスタ映えする完璧な写真も撮れませんでしたし、有名な観光スポットを制覇した満足感もありませんでした。
でも、得られたものは確実にありました。地元の人々の日常に少しだけ触れることができ、インドネシアという国の多様性を肌で感じることができました。そして何より、「観光地ではない場所の観光」という新しい旅の楽しみ方を発見できたのです。
ババロビーチは決して「映える」スポットではありません。でも、旅慣れた人ほど、その素朴さと地元の人々の温かさに心を打たれるはずです。次にスラウェシ島を訪れる機会があれば、また必ず立ち寄りたい、そんな特別な場所になりました。
一つだけ確実に言えることは、ババロビーチで過ごした数時間は、高級リゾートでの一週間よりも私の心に深く残っているということです。それこそが、本当の旅の価値なのかもしれません。