サンテミリオンって本当にワイン初心者でも楽しめるの?
ボルドーワインの聖地として名高いサンテミリオン。でも正直に言います。私が初めて訪れた時、「ワインがよく分からないと楽しめないのでは?」という不安でいっぱいでした。
結論から言えば、その心配は半分当たりで半分外れ。確かにワインの知識があった方が楽しめますが、この美しい中世の村には、ワイン以外にも心を奪われる魅力がたくさん隠されているんです。
サンテミリオンはボルドーから電車で約40分、人口わずか2000人ほどの小さな村。でもその小ささこそが、観光地化されすぎていない本物の魅力を生み出しているのかもしれません。
期待と現実のギャップ?到着してすぐに感じた違和感
サンテミリオン駅に降り立った瞬間、私は少し困惑しました。思っていたより静か。観光バスもそれほど多くない。「本当にここが世界的に有名な観光地なの?」と疑問に思ったほどです。
駅から村の中心部まではバスで約5分、徒歩なら15分程度。でもこの道のりで景色が徐々に変わっていくのが面白い。現代的な住宅街から、突然中世にタイムスリップしたような石造りの建物群が現れるんです。
村に入ってすぐ目に飛び込んでくるのがモノリス教会(Église Monolithe)。この教会、実は岩を掘って作られた地下教会なんです。地上からは鐘楼しか見えませんが、地下には12世紀に造られた巨大な空間が広がっています。入場料は約8ユーロ、ガイドツアーは1日数回実施されています。
ワイナリー巡りの現実って?予想外の体験談
「サンテミリオンに来たからにはワイナリー巡りでしょ!」と意気込んで複数のシャトーを回ったのですが、これが思っていた以上に奥が深くて大変でした。
まず知っておくべきは、有名シャトーの多くは完全予約制だということ。シャトー・オーゾンヌやシャトー・シュヴァル・ブランといった超一流シャトーは、数ヶ月前からの予約が必要です。しかも試飲料金は一人50ユーロを軽く超えることも。
でも落胆する必要はありません。私が本当に感動したのは、実は小さな家族経営のシャトーでした。シャトー・フォンロックでは、オーナー自らがぶどう畑を案内してくれて、試飲料金もわずか15ユーロ。家族の歴史からワイン造りの哲学まで、生の声で聞けるのは貴重な体験でした。
地下に眠る秘密?知られざるサンテミリオンの一面
ここでサンテミリオンの意外な一面をお話しします。この村の地下には、総延長70キロメートルに及ぶ地下採石場の跡が張り巡らされているんです。
中世の時代、サンテミリオンの石灰岩は建築材料として珍重され、パリのノートルダム大聖堂の建設にも使われました。その採掘跡が現在、一部のシャトーでワインの熟成庫として活用されています。温度が年間を通じて一定で、湿度も理想的なんです。
特に面白いのが、第二次世界大戦中にはこの地下空間が防空壕として使われたこと。村の人々約3000人全員が避難できるほどの広さがあったそうです。現在でも一部見学可能で、Les Catacombes de Saint-Émilionというツアーが人気です。
グルメ体験で発見した「意外な美味しさ」とは?
ワインの村だからワインに合う料理が美味しいのは当然として、私が驚いたのはカヌレとの出会いでした。実はカヌレ、ボルドー地方の伝統菓子なんです。
サンテミリオンの老舗パティスリー「Baillardran」のカヌレは、外はカリッと中はもっちり。ワインと一緒に楽しむという意外な組み合わせが病みつきになりました。営業時間は平日9:00-19:00、土日は8:00-19:30です。
もう一つの発見がフォアグラのテリーヌ。地元の「La Table de Catusseau」では、サンテミリオンワインで作ったソースと合わせたフォアグラを提供しています。ランチコースは35ユーロから、ディナーは55ユーロからです。
観光で避けたい「失敗パターン」教えます
実体験から学んだ、サンテミリオン観光で避けるべき失敗をお伝えします。
まず夏の午後の観光は要注意。7-8月の日中は気温が35度を超えることもあり、石畳の照り返しで相当暑くなります。私は熱中症寸前になって、カフェで30分以上休憩する羽目になりました。
次に日曜日の午後は多くの店が閉まること。特に小さなワイナリーは日曜定休のところが多いです。観光案内所も日曜は14:00で閉まってしまうので、事前に営業時間を確認しましょう。
最後に、車でのアクセスは駐車場探しが大変です。村の中心部は歩行者専用エリアが多く、観光シーズンは周辺駐車場も満車になりがち。電車利用を強くおすすめします。
本当の魅力は「人との出会い」にあった?
サンテミリオンを何度か訪れて気づいたのは、この村の本当の魅力は人との出会いにあるということでした。
村の中心部にある小さなワインバー「L’Envers du Décor」で出会ったソムリエのマリーさんは、私がワイン初心者だと分かると、嫌な顔一つせず基本から丁寧に教えてくれました。「ワインは知識じゃない、感じることが大切よ」という彼女の言葉は今でも心に残っています。
観光案内所のスタッフも親切で、個人の好みに合わせてカスタマイズした観光ルートを提案してくれます。営業時間は4-10月が9:30-19:00、11-3月が9:30-12:30/13:45-18:00です。英語も通じるので安心してください。
季節によってこんなに違う?ベストシーズンの選び方
4回の訪問を通して感じた、季節ごとの魅力をお伝えします。
秋(9-10月)はやはり特別です。収穫シーズンで村全体が活気づき、多くのシャトーで収穫体験ができます。朝晩は涼しく、日中も過ごしやすい気候。新酒の試飲会も各地で開催されます。
春(4-5月)は観光客が少なく、落ち着いて村を散策できます。ぶどうの新芽が美しく、写真撮影にも最適。ただし天気が不安定で、雨具は必須です。
意外におすすめなのが冬(12-2月)。寒いですが観光客はほとんどおらず、地元の人々の日常に触れられます。多くのレストランで暖炉が焚かれ、とても雰囲気が良いんです。
帰り際に気づいた「本当の贅沢」とは
最後の訪問で、駅に向かうバスを待ちながら振り返ったとき、ふと気づいたことがあります。サンテミリオンの本当の贅沢は、「何もしない時間」を楽しめることかもしれません。
村の高台にある王の塔(Tour du Roi)からの景色を眺めながら、ただぼーっとする。186段の階段は少しきついですが、頂上からのぶどう畑の眺望は息を呑むほど美しいです。入場料は2ユーロと良心的。
カフェのテラスで地元の人々を眺めながら、時間を忘れてワインを味わう。そんな何気ない瞬間に、この村の真の魅力があるのだと実感しました。
効率的に観光スポットを回ることも大切ですが、時には立ち止まって、中世から続くこの村の時間の流れに身を任せてみてください。きっと忘れられない旅の思い出になるはずです。
サンテミリオンは確かにワインの村ですが、それ以上に「人生を豊かにしてくれる時間」を提供してくれる特別な場所なのです。