フランスの美食都市ディジョンは、実は観光客泣かせの街だった?
ブルゴーニュ地方の州都ディジョンと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはディジョンマスタードですよね。でも実際に現地を訪れてみると、観光地によくある「それっぽい商品」に騙されそうになることが何度もありました。パリから新幹線TGVでわずか1時間40分という好アクセスながら、この街には地元民だけが知る本物の味と、観光客向けの偽物が混在しているんです。
私が初めてディジョンを訪れた時、駅前の土産物店で買ったマスタードが、帰国後に調べてみるとフランス産ですらなかった、なんて失敗もありました。でもそんな経験があったからこそ、本当に価値のある ディジョンの楽しみ方を発見できたのです。
本物のディジョンマスタードを見つける秘訣は「製造年月日」にあり
観光客の多くが見落としているのが、真のディジョンマスタードは実は工場見学でしか手に入らない限定品があることです。市内中心部から車で約15分の場所にある「マイユ工場(Maille)」では、平日のみの工場見学ツアーを実施しており、ここでしか買えない特別なマスタードが存在します。
一般的な観光ガイドには載っていませんが、地元のタクシー運転手に「マイユの工場に行きたい」と伝えれば、片道15ユーロ程度で連れて行ってくれます。工場見学は事前予約が必須で、フランス語または英語でのガイドとなりますが、製造過程を見学した後に購入できるマスタードは、市販品とは明らかに違う深い味わいを持っています。
街中のマイユ本店(34 Rue de la Liberté)でも十分美味しいマスタードを購入できますが、観光シーズン(6月~9月)は常に混雑しており、ゆっくりと商品を選べないのが難点です。営業時間は月曜から土曜の10時から19時まで、日曜は14時から18時までです。
ブルゴーニュワインの真実:高級ワインほど街中では買えない
ディジョンがあるブルゴーニュ地方といえば、世界最高峰のワイン産地の一つ。しかし、本当に価値のあるドメーヌ直送ワインは、観光地の酒店ではほとんど手に入りません。地元のソムリエから教わったのですが、最高品質のワインを求めるなら、ディジョン市内から南に約20キロのジュヴレ・シャンベルタン村まで足を伸ばすことが必要です。
公共交通機関でのアクセスは限られているため、現地のワインツアー(半日コースで55ユーロ程度)を利用するか、レンタカーでの移動がおすすめです。特に収穫時期の9月下旬から10月上旬は、ドメーヌでの試飲体験も可能で、生産者から直接話を聞ける貴重な機会となります。
街中で手軽にワインを楽しむなら、レ・ハレス市場(Les Halles de Dijon)周辺のワインバルが最適です。火曜、金曜、土曜の朝市開催日には、地元産のワインを1杯3ユーロから楽しめる立ち飲みスタイルの店が数軒オープンします。
観光客が気づかない「フィジョン城公爵宮殿」の隠れた見どころ
ブルゴーニュ公爵宮殿(Palais des Ducs de Bourgogne)は、ディジョン観光の定番スポットですが、多くの観光客は表面的な見学で終わってしまいがちです。実は、この宮殿の地下には一般公開されていない14世紀の地下貯蔵庫が存在し、特別ツアー(要事前予約、15ユーロ)でのみ見学可能なんです。
宮殿内のブルゴーニュ地方博物館は入場料8ユーロですが、毎月第一日曜日は無料開放されています。ただし、無料開放日は地元の家族連れで非常に混雑するため、ゆっくりと鑑賞したい場合は平日の訪問がおすすめです。開館時間は9時30分から18時まで(11月から3月は17時まで)。
宮殿前のリベラシオン広場(Place de la Libération)では、夏期限定でライトアップイベントが開催されます。毎晩21時30分から約15分間の光のショーは無料で楽しめ、昼間とは全く違う幻想的な雰囲気を味わえます。
地元民しか知らない「エスカルゴ料理」の本当に美味しい店
ブルゴーニュ名物のエスカルゴ・ド・ブルゴーニュですが、観光客向けレストランでは冷凍品を使用している店も少なくありません。本当に新鮮なエスカルゴを味わいたいなら、地元民に愛される隠れた名店を知っておく必要があります。
「シェ・レオン(Chez Léon)」という小さなビストロは、観光ガイドブックにはほとんど掲載されていませんが、地元のグルメたちが通う名店です。住所は15 Rue des Godrans、営業は火曜から土曜の12時から14時、19時から21時30分までです。エスカルゴ6個で12ユーロ、12個で20ユーロという価格設定で、自家製ガーリックバターの香りが店内に漂います。
予約なしでは入れないことが多いため、宿泊先のホテルスタッフに電話予約を依頼するのが確実です。メニューはフランス語のみですが、「エスカルゴ・シ・ヴ・プレ(Escargots, s’il vous plaît)」と言えば通じます。
もう一つの穴場は、サン・ミシェル教会近くの「ラ・プティット・マルシェ(La Petite Marché)」。こちらは日曜日も営業しており、エスカルゴと一緒にブルゴーニュの郷土料理コック・オ・ヴァンも味わえます。
交通アクセスで失敗しないための実践的アドバイス
パリからディジョンへの移動は、TGV(新幹線)が最も便利で、パリ・リヨン駅から1時間40分、料金は事前予約で25ユーロから利用可能です。ただし、当日券は80ユーロ以上になることが多いため、旅行計画が決まったら早めの予約が重要です。
ディジョン駅から市内中心部までは徒歩約15分ですが、重い荷物がある場合は駅前のトラム1号線が便利です。「République」駅で下車すれば、主要観光スポットまで徒歩3分以内の距離となります。トラム料金は1回券1.45ユーロ、1日券4.20ユーロです。
意外に知られていないのが、ディジョン市内の無料WiFiスポットの存在です。市役所、図書館、主要広場では「Dijon WiFi」という無料インターネットサービスが利用でき、観光情報の検索や地図アプリの使用に重宝します。
宿泊選びで後悔しないための地元目線アドバイス
ディジョンでの宿泊先選びでは、立地よりも防音性能を重視することをおすすめします。旧市街の石畳は風情がありますが、早朝の清掃車や配送トラックの騒音で睡眠不足になる観光客が少なくありません。
ホテル・フィリップ・ル・ボン(Hôtel Philippe le Bon)は、ブルゴーニュ公爵宮殿から徒歩2分という絶好の立地にありながら、中庭に面した客室は非常に静かです。1泊120ユーロからという価格設定で、朝食(15ユーロ)には地元産のはちみつとジャムが提供されます。
予算を抑えたい場合は、イビス・ディジョン・サントルがおすすめ。駅から徒歩8分、市内中心部まで徒歩12分という立地で、1泊70ユーロから宿泊可能です。24時間対応のフロントサービスがあり、英語での対応も可能です。
最後に、ディジョン滞在で最も印象に残るのは、意外にも早朝の静寂な街歩きかもしれません。観光客が動き出す前の7時頃、石畳の路地を歩いていると、中世の雰囲気がそのまま残るディジョンの真の姿に出会えます。パン屋の焼きたてクロワッサンの香りと共に始まる一日は、きっと忘れられない旅の記憶となるでしょう。