南フランスの真珠と呼ばれるニース。コート・ダジュールの中心都市として多くの観光客を魅了していますが、実際に訪れてみると「思っていたのと違う…」という声も少なくありません。美しい海岸線と華やかなイメージの裏に潜む、現地でしか分からない真実をお伝えします。
ビーチが砂浜じゃない?石だらけの海岸の真実
多くの人がニースのビーチに抱く最初の衝撃は、砂浜ではなく石だらけだということです。プロムナード・デ・ザングレ沿いの海岸は、実は小石(ガレット)で覆われています。素足で歩くのは正直かなり痛く、ビーチサンダルでも厳しいのが現実です。
現地の人たちは専用のビーチシューズを履いているか、有料のビーチクラブを利用しています。公共ビーチは無料ですが、快適に過ごしたいなら1日15-25ユーロほどのプライベートビーチがおすすめ。デッキチェアとパラソルが借りられ、シャワーやトイレも完備されています。
旧市街の迷路で道に迷ったときの秘策
ニースの旧市街(ヴィエイユ・ヴィル)は中世の面影を残す魅力的なエリアですが、狭い路地が複雑に入り組んでいて迷子になりがちです。特に夕方以降は人通りが少なくなる路地もあり、女性の一人歩きには注意が必要な場所もあります。
地元の人が教えてくれた裏技は、迷ったら必ず「海の方角」を意識すること。旧市街は海に面しているので、下り坂を選んで歩けば必ずプロムナード・デ・ザングレに出られます。また、サレヤ広場を基点にすると方向感覚を保ちやすくなります。
現地の人しか知らない絶景スポット
観光ガイドブックに載っていない穴場として、パルク・デュ・シャトーの展望台から少し外れた「ローカル展望ポイント」があります。シャトーの丘を登り切った後、さらに15分ほど歩いた先にある小さな展望台からは、観光客がほとんどいない静寂の中で絶景を独り占めできます。
マルシェで失敗しないための地元民テクニック
ニース最大の見どころのひとつ、サレヤ広場の朝市。毎日午前6時から午後1時30分まで開催されていますが、観光客向けの価格設定になっているのが正直なところです。
地元の人たちは実は別の場所で買い物をしています。リベラシオン市場(火曜から日曜、朝7時から午後1時)は地元民価格で新鮮な食材が手に入る穴場。ここでオリーブやハーブを買うと、サレヤ広場の半額近い値段で購入できることも。
フランス人も唸るソッカの正しい食べ方
ニース名物のソッカ(ひよこ豆の粉で作ったクレープ)は、実は食べるタイミングが重要です。焼きたて熱々を立ち食いするのが本来の食べ方で、冷めてしまうと魅力が半減してしまいます。老舗の「シェ・ペペ・ニッサ」では、午前11時と午後4時頃に焼きたてが出来上がるので、そのタイミングを狙いましょう。
交通機関の意外な盲点と対策
ニースの公共交通機関は便利ですが、いくつか知っておきたいコツがあります。トラム1号線は観光スポットを結んでいて便利ですが、朝夕の通勤ラッシュ時は地元の通勤・通学客でごった返します。
1日券(5ユーロ)は24時間有効ではなく、購入した日の終電まで有効という点も要注意。翌日も使う予定なら、2枚買うか7日券(15ユーロ)の方がお得になることがあります。
空港からのアクセスで知っておきたいこと
ニース・コート・ダジュール空港から市内までは、バス(99番線、6ユーロ、約45分)が最もコストパフォーマンスが良い選択肢です。ただし、大きなスーツケースを持っている場合は要注意。バスの荷物スペースは限られているので、満席時は次のバスを待つ必要があることも。
宿泊エリア選びの落とし穴
ニースでは宿泊エリア選びが滞在の満足度を大きく左右します。駅周辺は便利ですが、夜間は少し治安面で不安がある場所も。一方、海岸沿いのホテルは景色は抜群ですが、夏場は夜遅くまで騒がしいことがあります。
地元の人がおすすめするのはミュゼ・マセナ地区。観光スポットへのアクセスが良く、夜も比較的静かで安全です。この地区なら徒歩でほとんどの見どころを回れるため、交通費の節約にもなります。
隠れた絶品グルメスポット
観光地のレストランは値段が高い割に味はいまひとつ、というのはニースでも同じです。地元の人たちが本当に通う店は、観光エリアから少し外れた住宅街にあります。
ラ・ペティット・メゾン(28 Rue Delille)は、観光客がほとんど来ない地元の隠れ家的ビストロ。ランチメニューは18ユーロでメイン、前菜、デザートがついて、味は一流レストラン並み。ただし、英語メニューはないので、Google翻訳アプリは必須です。
アイスクリームの意外な名店
フェノッキオが有名ですが、地元の人が本当に愛しているのはグラシエ・プロムナード(Avenue Jean Médecin沿い)。ラベンダーやローズマリーなど、プロヴァンス地方らしいフレーバーが絶品で、値段もフェノッキオの3分の2程度とリーズナブルです。
治安の実情と本当に気をつけるべきこと
ニースは比較的安全な都市ですが、観光客を狙った軽犯罪は存在します。特に注意したいのがニース駅周辺と旧港エリアの夜間。スリや置き引きよりも、実は「親切な現地人を装った詐欺」の方が多発しています。
「道を教える」「写真を撮ってあげる」と近づいてきて、最終的に金銭を要求するケースが増加中。本当に困っている人を見分けるコツは、お店の人や制服を着た人(警察、駅員など)に助けを求めることです。
最後に知っておきたいニースの季節ごとの表情
ニースは年間を通じて観光できますが、季節によって全く違う顔を見せます。夏場(7-8月)は華やかで活気がある反面、宿泊費が3倍近くになることも。一方、冬場(12-2月)は多くのビーチクラブやレストランが休業するため、「思ったより静かすぎた」という感想を持つ人も少なくありません。
5月と9月が実は狙い目のシーズン。気候は快適、観光施設はフル営業、そして宿泊費も比較的リーズナブル。地中海も十分暖かく泳げるので、コストパフォーマンスを考えるならこの時期がベストです。
ニースは確かに美しい街ですが、事前の情報収集と現実的な期待値を持つことで、より充実した滞在になるはずです。華やかなイメージだけでなく、リアルなニースを知った上で訪れれば、きっと忘れられない旅になることでしょう。