ロードス島で私が体験した「中世の騎士団要塞都市」の圧倒的な迫力と、観光地化されすぎて失われつつある秘密スポット

なぜロードス島は「エーゲ海の真珠」と呼ばれるのか?

エーゲ海に浮かぶロードス島を初めて訪れたとき、私は正直なところ「また典型的なギリシャの島かな」と思っていました。しかし、船がロードス港に近づいた瞬間、目の前に現れた光景に言葉を失いました。中世の城壁に囲まれた旧市街が海岸線に聳え立ち、まるでタイムスリップしたかのような感覚に陥ったのです。

ロードス島は、ギリシャ本土から南東約270キロメートル、トルコ海岸からわずか18キロメートルの位置にあります。面積は1,400平方キロメートルほどで、人口約12万人。アテネからの直行便で約1時間、夏季シーズンには日本からの直行チャーター便も運航されることがあります。

騎士団が築いた要塞都市の迫力に圧倒される?

ロードス旧市街は、1988年にユネスコ世界遺産に登録された、ヨーロッパでも稀に見る保存状態の良い中世都市です。14世紀から16世紀にかけて、聖ヨハネ騎士団(後のマルタ騎士団)がオスマン帝国の侵攻に備えて築いた城壁は、総延長約4キロメートル。厚さは最大12メートルにも達し、現在でもほぼ完全な形で残っています。

旧市街への入り口である海洋門をくぐった瞬間、石畳の道と中世の建物が作り出す独特の雰囲気に包まれます。入場料は無料ですが、城壁内部の見学ツアーは大人12ユーロ、学生6ユーロです(2024年現在)。

最も印象深いのは騎士団長の宮殿でしょう。イタリア統治時代の1930年代に修復されたこの宮殿は、現在博物館として公開されており、入場料は大人8ユーロです。開館時間は4月から10月が8:00-19:40、11月から3月が8:00-14:40となっています。

観光客が見落としがちな「本当のロードス」を発見

多くの観光客は旧市街の大通り騎士団通りを歩いて満足してしまいますが、実は路地を一本外れるだけで全く違う世界が広がります。私が偶然発見したのは、地元の人しか知らない小さなカフェ「Mama Sofia’s」でした。観光地価格ではない本格的なギリシャコーヒーが2ユーロで飲める穴場です。

また、モスク・オブ・スレイマンという16世紀のオスマン帝国時代のモスクも見逃せません。観光ルートから少し外れているため訪れる人は少ないのですが、イスラム建築とヨーロッパ建築が融合した独特の美しさがあります。

リンドスの古代遺跡で感じる3000年の歴史の重み

ロードス島南東部にあるリンドスは、島を代表する観光スポットです。ロードス市から車で約1時間、バスでは1時間30分ほどの距離にあります。

リンドスの見どころは何といってもアクロポリスです。海抜116メートルの岩山の頂上に建つ古代神殿からの眺望は息を呑む美しさです。入場料は大人12ユーロ、開館時間は8:00-19:40(夏季)となっています。

ただし、注意が必要なのは夏の暑さです。7月から8月にかけては気温が40度を超えることもあり、日陰のない岩山を登るのは想像以上に過酷でした。早朝か夕方の訪問をお勧めします。

マニアックな発見!騎士団の秘密地下通路

一般的なガイドブックには載っていない情報をお教えしましょう。旧市街の城壁には、実は騎士団が緊急時の避難や物資輸送のために使用した地下通路が今でも残っています。

この通路は通常非公開ですが、地元のガイド協会が主催する特別ツアー(要予約、大人25ユーロ)に参加すると見学できます。狭い石造りの通路を懐中電灯の明かりを頼りに歩く体験は、まさに冒険そのものでした。

地元の人が愛する本当に美味しいグルメスポット

観光地のレストランも良いのですが、地元の人が通う場所でこそ本当のロードス島を味わえます。

タベルナ・コスタスは、新市街にある創業60年の老舗です。名物のスツファド(牛肉と小玉ねぎの煮込み)は絶品で、約15ユーロでボリューム満点の一皿を楽しめます。営業時間は19:00-24:00で、予約なしでも入れることが多いです。

また、港近くの市場では新鮮なウニを味わえます。地中海のウニは日本のものとは味が異なり、より濃厚でクリーミー。1個2-3ユーロと驚くほど安価です。

知っておくべき実用的な注意点とコツ

ロードス島観光で最も重要なのは季節選びです。6月から9月は観光のピークシーズンで、特に7-8月は宿泊費が3倍近くに跳ね上がります。私のお勧めは5月や10月で、気候も穏やかで観光地も比較的空いています。

交通手段については、島内バスが発達していますが、自由度を考えるとレンタカーがお勧めです。1日約25-30ユーロでレンタルでき、国際運転免許証があれば問題なく運転できます。

島の西海岸には観光客がほとんど訪れないモノリソスという小さな村があります。ここには15世紀の城跡があり、夕日の美しさは島随一と地元の人が自慢する場所です。レンタカーなしではアクセスが困難ですが、その分手つかずの自然と静寂を楽しめます。

意外と知られていない「蝶の谷」の神秘体験

ロードス島西部にあるペタルデス(蝶の谷)は、多くの日本人観光客が見落としている隠れた名所です。7月から8月にかけて、数千匹のジャージー・タイガー・モスという蛾の一種が渓谷に集まる現象で知られています。

入場料は大人5ユーロと手頃で、遊歩道も整備されています。ただし、虫が苦手な方には向かないかもしれません。渓谷内は市街地より10度ほど気温が低く、真夏でも涼しく過ごせる点も魅力的です。

地元の人だけが知る最高のビーチとは?

観光ガイドで紹介されるファリラキビーチツァンビカビーチも美しいのですが、私が最も感動したのは島の南端にあるプラソニシです。

ここは干潮時にだけ現れる砂州で小島まで歩いて渡れる、まさに秘境のような場所です。観光バスは来ないため、レンタカーかタクシー(往復約40ユーロ)でしかアクセスできません。透明度の高い海水と人の少なさは、まさに楽園そのものでした。

お土産選びで失敗しないための地元情報

旧市街の土産物店は観光地価格ですが、新市街のアギウ・ファヌリウ通りには地元の人が利用する店が並んでいます。特にロードス産オリーブオイルは本当に質が高く、500mlボトルで8-10ユーロと良心的な価格です。

また、意外な名産品がロードス産蜂蜜です。島の豊かな自然が育む花々から採取された蜂蜜は、濃厚な甘さと独特の香りが特徴。250gで約6ユーロと、品質を考えれば破格です。

空港での最終チェックインまでの時間も有効活用できます。ロードス空港は市街地から車で約20分と近く、出発3時間前まで旧市街散策を楽しめるのも嬉しいポイントです。

ロードス島は確かに観光地化が進んでいますが、少し足を伸ばせばまだまだ手つかずの魅力がたくさん残っています。騎士団の歴史に思いを馳せながら、現代のギリシャ文化も同時に味わえる、そんな奥深い島なのです。