バンドンってどこ?なぜ日本人観光客が少ないのか
インドネシアの首都ジャカルタから車で約3時間、標高768メートルの高原都市バンドン。人口約250万人を擁するこの街は、かつてオランダ植民地時代に「東のパリ」と称されました。しかし正直に言うと、現代の観光地としてバンドンを訪れると、その名残を感じるのは一苦労です。
バリ島やジョグジャカルタに比べて日本人観光客が圧倒的に少ない理由は明確です。観光インフラが整っていない、英語が通じにくい、そして何より「これ!」という決定打となる観光資源に欠けるからです。でも、だからこそ面白いんです。
アールデコ建築の宝庫だった?現実は…
「東のパリ」の由来となったアールデコ建築群。確かに1920年代から1930年代にかけて建設された美しい建物が点在しています。バンドン工科大学(ITB)のメインビルディングやゲドゥン・サテ(現在の西ジャワ州知事公邸)は見事な装飾が施されています。
しかし現実問題として、多くの歴史的建造物は維持管理が行き届いておらず、外観だけ見学して終わりというケースがほとんど。ゲドゥン・サテは平日の午前9時から午後4時まで見学可能ですが、事前連絡が必要で手続きが煩雑です。
意外なのは、地元の人々でさえこれらの建築の価値をあまり理解していないこと。タクシー運転手に「アールデコ建築を見たい」と言っても、首をかしげられることが多々あります。
ファクトリーアウトレットが真の観光地?
バンドン観光で最も活気があるのは、実はファクトリーアウトレット(FO)群です。Heritage Factory Outletや23 Paskal Shopping Centerなど、ジャラン・リアウ通り沿いに軒を連ねています。
ここでの戦利品は主にインドネシア製の衣類。国際ブランドのOEM生産品が、正規価格の3分の1程度で手に入ります。ただし品質のばらつきは覚悟が必要。縫製の甘い商品も混じっているので、購入前の入念なチェックは必須です。
営業時間は多くの店舗が午前10時から午後10時まで。土日は地元客で大混雑するため、平日の訪問をおすすめします。
グルメの真実:期待しすぎは禁物
バンドン名物として挙げられるのがバクソー(肉団子スープ)とバタゴール(豆腐料理)。確かに美味しいのですが、「わざわざバンドンまで来て食べるほどか?」と問われると微妙なところです。
むしろ注目すべきは、高原気候を活かしたいちご狩り。レンバン地区にあるKebun Strawberry Ciwideyでは、1キログラム約50,000ルピア(約450円)でいちご狩りが楽しめます。ただし、日本のいちごの甘さを期待すると肩透かしを食らいます。酸味が強く、ジャムやスムージー向きの品種です。
地元の人が絶賛する隠れた名店はSate Kambing Pak Ade。羊の串焼きが看板メニューですが、場所がわかりにくく、住所を聞いても「銀行の向かい」程度の説明しかもらえないことが多々あります。
タンクバン・プラフ火山:期待値調整が重要
バンドン北部にあるタンクバン・プラフ火山は、市内から車で約1時間30分。入場料は外国人30,000ルピア(約270円)です。
火山の噴火口は確かに迫力がありますが、硫黄の臭いが強烈で長時間の滞在は困難。また、天候に左右されやすく、霧で何も見えないことも珍しくありません。午前中の早い時間帯(午前8時から10時頃)が比較的クリアに見える確率が高いです。
帰りに立ち寄る温泉Ciater Hot Springは、設備が古く日本の温泉に慣れた人には物足りなく感じるかもしれません。
交通手段の現実と対策
バンドン市内の移動はアンコット(乗り合いバス)が主流ですが、路線図が存在せず、観光客には使いこなすのが困難。タクシーはメーターを使わない運転手が多く、事前の料金交渉が必要です。
最も現実的な移動手段は配車アプリのGojekやGrab。ただし、運転手の多くは英語を話せないため、目的地はインドネシア語で書いておくと安心です。
ジャカルタからの高速バスは約35,000ルピア(約315円)と格安ですが、交通渋滞で4時間以上かかることも。電車という選択肢もありますが、本数が少なく不便です。
宿泊:コスパ重視なら十分満足
バンドンの宿泊費は東南アジアの中でも格安レベル。3つ星ホテルでも1泊3,000円程度から見つかります。The Trans Luxury HotelやHilton Bandungなどの国際チェーンホテルでも、1泊8,000円程度と他の東南アジア主要都市と比べて半額以下です。
ただし、停電や断水が時々発生するのがバンドンの現実。高級ホテルでも例外ではありません。フロントに確認すると「よくあることです」と軽く流されることが多いので、携帯用の懐中電灯は必須アイテムです。
結局バンドンは行く価値があるのか?
正直に言うと、バンドンは「絶対に行くべき観光地」ではありません。しかし、だからこそ味わえる魅力があります。観光地化されていない素のインドネシアを体験したい人、東南アジアの地方都市の日常を覗いてみたい人には面白い場所です。
バンドンの最大の価値は、観光客向けに作られた「表向きの顔」がないこと。良くも悪くも、ありのままのインドネシア地方都市の姿がそこにあります。英語メニューがない食堂で身振り手振りで注文したり、道に迷って地元の人に助けてもらったり、そんな体験を楽しめる人には記憶に残る旅になるでしょう。
予算は1日あたり1,500円程度(宿泊費除く)あれば十分。2泊3日もあれば主要スポットは回れます。ただし、快適な観光を期待している人には正直おすすめできません。「冒険」を楽しめる人だけが、バンドンの真の魅力を発見できるのです。