なぜテヘランは「危険で古い街」だと誤解されるの?
テヘランと聞くと、多くの日本人が思い浮かべるのは砂漠に囲まれた古い中東の街並みではないでしょうか。でも実際に足を踏み入れてみると、その先入観は見事に裏切られます。標高1200メートルに位置するこの首都は、実は四季がはっきりしていて、冬には雪も降る高原都市。しかも人口1400万人を抱える、中東屈指の大都市圏なのです。
私が初めてテヘランのイマーム・ホメイニー国際空港に降り立った時、空港から市内へ向かう高速道路沿いに広がる光景に驚きました。想像していた砂漠ではなく、緑豊かな山々と近代的な高層ビル群が目に飛び込んできたのです。
テヘランの「表の顔」と「裏の顔」って?
テヘランには明確に二つの顔があります。南部の旧市街エリアと、北部の新市街エリア。この違いを知らずに観光すると、全く違う街を見ることになってしまいます。
南部は確かに伝統的なバザールや古いモスクが残るエリアで、グランド・バザールでは中世から続く商売の光景を目にできます。営業時間は朝8時から夕方6時頃まで(金曜は午後のみ)。一方で北部、特にテヘラン大学周辺からタジリーシュ地区にかけては、パリやミラノを思わせるようなカフェ文化が根付いており、若者たちがスマートフォンを片手におしゃれを楽しんでいます。
実はテヘランの若者の多くは英語を話せるんです。特に北部では、ヨーロッパ系ブランドの服を着た大学生たちが、欧米のポップスを口ずさみながら歩いている光景も珍しくありません。
絶対に外せない!テヘランの「意外すぎる」名所3選
ゴレスタン宮殿の鏡の間は本当にすごいの?
ゴレスタン宮殿(入場料20万リアル、約600円)は確かに美しいのですが、実はここよりもっと驚くべき場所があります。それがサーダーバード宮殿群です。テヘラン北部の高級住宅街にあるこの宮殿群は、パーレビ王朝時代の離宮で、その豪華さはベルサイユ宮殿に匹敵します。
特に驚くのが「白宮殿」内の調度品。フランスから取り寄せた家具やペルシア絨毯が、まるで王族が今でも住んでいるかのような状態で保存されています。入場料は30万リアル(約900円)で、地下鉄1号線のタジリーシュ駅からタクシーで約15分です。
テヘラン現代美術館が世界レベルって本当?
これは間違いありません。テヘラン現代美術館のコレクションは、ピカソ、モネ、ルノワールなど西洋絵画の名作から、現代イラン人アーティストの作品まで、その質の高さにヨーロッパの美術関係者も舌を巻きます。
特に注目すべきは地下展示室。ここには革命前に収集された貴重なコレクションが展示されており、中東でこれほど質の高い西洋美術コレクションを見られる場所は他にありません。入場料は15万リアル(約450円)、火曜休館です。
ミラード・タワーから見る夜景は東京に勝る?
高さ435メートルのミラード・タワーは、テヘランの新しいランドマーク。展望台からの夜景は確かに息をのむ美しさですが、実はもっとおすすめの夜景スポットがあります。それがトチャール山のロープウェイです。
標高3964メートルのトチャール山へ向かうロープウェイは、中東最長の7.5キロメートル。途中の第2ステーション(標高2935メートル)からテヘランの街を見下ろすと、1400万人の巨大都市が山裾に広がる壮大な光景に圧倒されます。往復料金は50万リアル(約1500円)で、所要時間は片道約1時間です。
テヘランで食べるべき「本当の」ペルシア料理
チェロケバブだけじゃもったいない?
多くのガイドブックで紹介されるチェロケバブ(羊肉の串焼きとサフランライス)は確かに美味しいのですが、テヘランには他にも絶品料理があります。
北部のタジリーシュ地区にある「Divan Restaurant」では、フェセンジャンという料理を必ず注文してください。鶏肉をザクロソースとクルミで煮込んだこの料理は、甘酸っぱい味が日本人の舌に驚くほど合います。価格は約80万リアル(約2400円)と現地では高級ですが、その価値は十分にあります。
テヘランのカフェ文化って本当にすごいの?
これは実際に体験しないと信じられないかもしれません。北部のヴァリアスル通り沿いには、ヨーロッパ顔負けのカフェが軒を連ねています。特に「Café Naderi」は1950年代から続く老舗で、イラン人作家や知識人の社交場として愛され続けています。
ここで飲めるペルシアンティーは、小さなグラスに砂糖を入れて飲むスタイル。一口飲むと、紅茶の渋みと砂糖の甘さが絶妙にマッチして、なぜイラン人がこのスタイルにこだわるのかが理解できます。コーヒー一杯の価格は約15万リアル(約450円)です。
テヘラン観光で絶対に知っておくべき「落とし穴」
両替で大損する前に知っておくべきこととは?
テヘランでの両替は、空港の公式レートと街中の両替商で大きく異なります。空港では1ドル=4万2000リアル程度ですが、フェルドウスィー広場周辺の両替商では1ドル=5万リアル以上で交換できることも。
ただし注意が必要なのは、偽札の存在です。特に50万リアル札(最高額紙幣)は偽物が多く出回っているため、受け取った紙幣は必ずその場で透かしを確認してください。現地の人でも、紙幣を光に透かして確認するのが当たり前の光景です。
服装規定って実際どこまで厳しいの?
女性の場合、確かにヒジャブ(髪を覆うスカーフ)の着用は必須ですが、実際の街中では思っているより緩やかです。特に北部では、髪の一部が見えていても注意されることはほとんどありません。むしろ問題になるのは袖の長さで、手首まで隠れる長袖でないと、警察に注意される可能性があります。
男性の場合は半ズボンが禁止されていますが、これは本当に厳格で、観光地でも例外はありません。気温が40度を超える夏でも長ズボンは必須です。
テヘラン滞在で「これだけは気をつけて」ポイント
地下鉄利用時の意外な注意点って?
テヘランの地下鉄は非常に発達していて、1号線から7号線まで市内の主要観光地をほぼ網羅しています。運賃も1万リアル(約30円)と格安です。ただし、女性専用車両があることを知っておく必要があります。
朝7時から9時、夕方5時から7時のラッシュタイム時には、各電車の最前部と最後部が女性専用車両になります。男性が間違って乗ると、周りの視線が痛いほど注がれるので注意してください。
写真撮影で捕まらないために
テヘランでの写真撮影は、思っているより制限が多いのが現実です。政府関連施設はもちろん、イマーム・ホメイニー廟やアザディ塔周辺でも、角度によっては撮影を控えるよう指導される場合があります。
一方で、バザールや一般的な街並み、レストランでの食事風景などは全く問題ありません。現地の人々も気軽に撮影に応じてくれることが多く、特に英語を話せる若者たちは積極的に観光客との交流を楽しんでいます。
テヘラン旅行を10倍楽しくする裏技
最後に、テヘラン滞在をより充実させるためのコツをお伝えします。まず、金曜日の過ごし方。イランでは金曜日が休日のため、多くの商店やオフィスが閉まりますが、実はテヘラン北部の公園では家族連れがピクニックを楽しむ光景を見ることができます。
特にサーエイ公園では、現地の家族が持参した手作り料理を観光客にも分けてくれることがあり、これこそが本当のイラン人のホスピタリティを体験できる貴重な機会です。
また、テヘランから日帰りで行けるカラジという都市では、より伝統的なペルシア文化に触れることができます。テヘラン西部バスターミナルから約1時間、往復バス代は約40万リアル(約1200円)です。
テヘランは確実に、あなたの中東に対する固定観念を変えてくれる都市です。事前の準備をしっかりと行い、現地の人々との交流を恐れずに楽しめば、忘れられない旅の思い出となることでしょう。