マレーシアのペラ州にあるイポー。クアラルンプールから北へ約200キロ、車で2時間ほどの距離にあるこの街は、多くの日本人観光客が素通りしてしまう場所です。でも実は、私がマレーシア旅行で最も印象に残った街の一つなんです。
ただし、初回訪問時は準備不足で痛い目に遭いました。今回は私の失敗談を交えながら、イポー観光を成功させるためのリアルな情報をお伝えします。
失敗その1:旧市街と新市街を混同してしまった?
イポー到着初日、私はGrabタクシーで「イポー駅」と告げて向かったのですが、着いた場所は新しい駅舎でした。観光スポットが集まる旧市街からは徒歩20分以上離れており、炎天下を歩く羽目に。
イポーには実は2つの中心地があります。旧市街(Old Town)は植民地時代の建物やウォールアートで有名な観光エリア、新市街(New Town)は現代的なショッピングモールや住宅街が広がるエリアです。
旧市街にはイポー駅(旧駅舎)があり、その周辺に二奶巷(コンサートヌー・レーン)やバーチ・メモリアル・クロック・タワーなどの見どころが集中しています。宿泊先を選ぶ際は、必ず旧市街エリアを選びましょう。
グルメ天国イポーで絶対に外せない朝食とは?
イポーは実はマレーシア屈指のグルメタウン。特に朝食文化が発達しており、地元の人々は朝5時頃から茶餐廳(チャーチャンテン)で朝食を楽しみます。
白コーヒー(ホワイトコーヒー)はイポー発祥の飲み物で、旧市街の老舗「南香茶餐室」では1杯約3リンギット(約90円)で本場の味を楽しめます。営業時間は朝6時から午後2時まで、日曜定休なので注意が必要です。
私が現地で知ったマニアックな情報ですが、イポーの白コーヒーは通常のコーヒー豆とは異なり、マーガリンと砂糖で焙煎することで独特の風味を生み出しています。これは1930年代に中国系移民が考案した製法で、今でも老舗の店では伝統的な手法が守られているんです。
もやしが名物って本当?
意外に思われるかもしれませんが、イポーはもやし(タウゲー)でも有名です。石灰岩地帯の良質な地下水で育てられたもやしは太くて歯ごたえがあり、「老黄豆芽鶏」という鶏肉ともやしの炒め物は地元の定番料理です。
旧市街のコンサートヌー・レーンにある屋台では、1皿8-12リンギット(約240-360円)で味わえます。夜7時頃から屋台が並び始め、深夜まで営業しています。
失敗その2:洞窟寺院巡りで体力を過信した結果…
イポー郊外には数多くの洞窟寺院があり、中でも極楽洞(Sam Poh Tong)と霹靂洞(Perak Tong)が有名です。私は「せっかくだから全部回ろう」と欲張って、1日で4つの洞窟寺院を巡る計画を立てました。
結果は大失敗。マレーシアの暑さと湿気、そして洞窟内の階段の上り下りで完全にバテてしまい、最後の寺院では十分に見学できませんでした。
極楽洞はイポー市街地から車で約15分、入場無料で朝8時から夕方6時まで開放されています。洞窟内は涼しいのですが、仏像や鍾乳石を見学するには相当な階段を上る必要があります。
洞窟寺院で知っておくべきマナーは?
現地で恥をかかないために覚えておきたいのが、洞窟寺院でのマナーです。露出の多い服装は避け、靴を脱いで入る場所もあるので、脱ぎ履きしやすい靴を選びましょう。
また、多くの寺院では写真撮影が可能ですが、仏像に背を向けての自撮りは不適切とされています。地元の参拝者の真似をして、respectfulに見学することを心がけてください。
失敗その3:ウォールアート巡りで時間配分を間違えた?
近年のイポーで最も話題になっているのが、旧市街に点在するウォールアートです。リトアニア出身のアーティスト、Ernest Zacharevicが手がけた作品群は、ジョージタウンのストリートアートと双璧をなす人気スポットです。
私は午後の暑い時間帯にウォールアート巡りを開始し、写真撮影に夢中になっているうちに日が暮れてしまいました。夜になると街灯が少ないエリアもあり、安全面で不安を感じる場面も。
おすすめは朝9時から11時頃の涼しい時間帯。コンサートヌー・レーンを起点に、半径500メートル程度の範囲に主要な作品が点在しています。所要時間は写真撮影を含めて約2時間程度を見込んでおきましょう。
特に人気なのは「Old Uncle」という老人が描かれた作品と、「Hummingbird」というハチドリの絵です。ただし、これらの作品は建物の壁に描かれているため、建物の改修や取り壊しで消失するリスクもあります。実際に私が2度目に訪れた際、いくつかの作品が既になくなっていました。
知る人ぞ知る隠れたアートスポットとは?
観光客の多くが見落としがちなのが、「Paper Plane」という紙飛行機をモチーフにした作品です。メイン通りから少し外れた住宅街にあるため、地元の人でも知らない場合があります。GPS座標は北緯4.5975度、東経101.0901度付近です。
この作品の面白い点は、時間帯によって見え方が変わることです。朝の光では白い紙飛行機が際立ち、夕方の斜光では影が長く伸びて全く違った印象になります。
イポー観光で本当に気をつけるべきこととは?
3度の訪問を通じて学んだ、ガイドブックには載っていない注意点をお伝えします。
まず交通手段について。イポー市内の公共交通機関は限定的で、主要観光地を回るにはGrabタクシーかレンタカーが必須です。Grabの料金は市内であれば1回5-15リンギット程度ですが、洞窟寺院などの郊外スポットへは往復で50リンギット以上かかることも。
言語面では、観光地以外では英語が通じにくい場合があります。特に老舗の食堂や市場では、広東語や福建語、マレー語が主流です。Google翻訳アプリのオフライン機能を事前にダウンロードしておくことを強くおすすめします。
雨季の訪問で注意すべきポイントは?
イポーの雨季は10月から12月頃ですが、スコールは年中いつでも降る可能性があります。特に洞窟寺院見学中にスコールに遭うと、洞窟内に雨水が流れ込んで足元が滑りやすくなることがあります。
私が霹靂洞を訪れた際、激しいスコールで洞窟の入り口付近が一時的に冠水し、30分ほど洞窟内で雨宿りする羽目になりました。折りたたみ傘は必携アイテムです。
イポー観光を最大限楽しむための最終アドバイス
失敗談ばかりお伝えしましたが、それでもイポーは私にとって特別な場所になりました。大都市とは違う、ゆったりとした時間の流れと、観光地化されすぎていない素朴な魅力があります。
滞在期間は最低2日間を確保することをおすすめします。1日目は旧市街のウォールアートと グルメ巡り、2日目は洞窟寺院とのんびりとしたカフェタイムという具合に分けると、無理なく楽しめます。
クアラルンプールからの日帰りも可能ですが、イポーの真の魅力は夕暮れ時から夜にかけての屋台文化にあります。地元の人々と同じテーブルを囲み、白コーヒーを飲みながら過ごす時間は、きっと忘れられない思い出になるはずです。
マレーシア旅行を計画中の方は、ぜひイポーも候補に入れてみてください。きっと期待以上の発見があることでしょう。