最初の計画で犯した大きな間違い
マレーシア・ボルネオ島の玄関口であるコタキナバルを初めて訪れた時、私は「まあ、普通の東南アジアのビーチリゾートでしょ」と甘く見ていました。この油断が、後に大きな後悔を生むことになるとは思いもしませんでした。
コタキナバル国際空港から市内中心部まではタクシーで約30分、料金は40リンギット程度です。しかし、私が最初に犯した失敗は雨季の到来を完全に軽視していたことでした。11月から2月にかけては一日数回のスコールが当たり前で、私のように「まあ、傘一本あれば大丈夫」程度に考えていると、観光スケジュールが大幅に狂うことになります。
なぜ皆んなキナバル山しか語らないの?
確かに東南アジア最高峰のキナバル山(標高4,095m)は圧巻です。サバ州政府が管理するキナバル国立公園の入園料は15リンギット、ガイド付きトレッキングツアーは200リンギットから始まります。しかし、ここで私が声を大にして言いたいのは、みんなキナバル山の話ばかりで、本当に感動的な場所を見逃している人が多すぎるということです。
ロッカウイ・ワイルドライフパークをご存知でしょうか?市内から車で約25分の場所にあるこの施設、入園料はわずか30リンギットなのに、野生のオランウータンやボルネオゾウを間近で見ることができます。営業時間は9時から17時30分まで。しかし、ここで私は衝撃的な事実を知ることになりました。
オランウータンが教えてくれた真実
パーク内でガイドさんから聞いた話ですが、ここにいるオランウータンの多くはパームオイル農園の拡大により住処を失った個体なのだそうです。マレーシアは世界第二位のパームオイル生産国。私たちが日常的に使っている製品の多くにパームオイルが含まれているという現実を、オランウータンの優しい瞳を見つめながら知ったときの複雑な気持ちは今でも忘れられません。
地元民だけが知る絶景スポットへの冒険
二日目の夕方、ホテルのスタッフに「観光客があまり行かない美しい場所はないか」と尋ねてみました。彼が教えてくれたのがタンジュン・アル・ビーチでした。市内中心部から車で約1時間、公共交通機関はないためタクシーをチャーターする必要があります。片道100リンギット程度は覚悟してください。
このビーチで見た夕日は、私の人生の中でも特別なものでした。しかし、ここで私は二つ目の大きな失敗を犯します。
虫除けスプレーを甘く見た代償
熱帯地域の夕方、特に海岸近くではサンドフライという小さな虫が大量発生します。刺されると普通の蚊よりもはるかに痒く、しかも治りが遅い。私は虫除けスプレーを「まあ、そんなに必要ないでしょ」と軽視していたため、両足が無数の小さな赤い点だらけになってしまいました。薬局でステロイド軟膏を購入する羽目になったのは言うまでもありません。
食の冒険で発見した意外な真実
コタキナバルといえばシーフードマーケットが有名ですが、実は地元の人たちが本当に愛しているのは別の場所なのです。ウォーターフロントのレストランは確かに雰囲気は良いのですが、1人あたり80-120リンギットは覚悟が必要です。
しかし、現地の友人に連れて行ってもらったガヤストリートの朝市こそが、本当のコタキナバルの味でした。朝6時から11時頃まで開催されるこの市場で食べたラクサ(1杯8リンギット)は、高級レストランのものを軽く上回る美味しさでした。
実は中華系料理が隠れた名物?
ボルネオ島というとマレー料理をイメージしがちですが、実際にはコタキナバルの人口の約30%を中華系住民が占めています。そのため、肉骨茶(バクテー)やチャークイティオといった中華系料理のレベルが驚くほど高いのです。地元の人に愛される「新記肉骨茶」は朝7時から営業しており、1人前15リンギットで本格的な味を楽しめます。
島巡りツアーで犯した決定的なミス
三日目に参加したサピ島・マヌカン島ツアーは、市内の旅行代理店で1人120リンギットでした。ジェッセルトンポイントから高速ボートで約15分、透明度の高い海でのシュノーケリングは最高の体験でした。しかし、ここで私は三つ目の、そして最も痛い失敗をしました。
日焼け止めを過信した結果…
「SPF30の日焼け止めを塗ったから大丈夫」。この慢心が、私を歩くエビに変身させてしまいました。赤道に近いボルネオの紫外線は、日本の夏の1.5倍以上の強さです。特に海面からの反射により、普段日焼けしにくい顎の下や首の裏側まで真っ赤になってしまいました。現地の薬局で購入したアロエジェルが手放せない数日間を過ごすことになったのです。
現地のガイドさんによると、SPF50以上で2時間おきの塗り直しは絶対条件だそうです。特に水中での活動後は、タオルで拭いた時点で日焼け止めの効果はほぼゼロになってしまいます。
意外すぎる夜の楽しみ方を発見
コタキナバルの夜といえばナイトマーケットが定番ですが、実はファイヤーフライ(ホタル)ツアーという幻想的な体験ができることをご存知でしょうか。
まるで天の川が木に降りてきたような光景
クリアス川でのホタル観賞ツアーは市内から約2時間、1人80リンギットです。夕方6時頃に出発し、まず川岸のレストランで夕食を取った後、日が完全に暮れた8時頃から小さなボートで川をゆっくりと進みます。
マングローブの木に無数のホタルが点滅する様子は、まさに自然が作り出したイルミネーション。しかし、ここにも落とし穴がありました。新月に近い日は月明かりが少なくホタルがよく見える一方、雲が多い日は湿度が高くホタルの活動が鈍るのです。事前に天気予報と月齢カレンダーを確認することをお勧めします。
帰国前日に気づいた最大の見落とし
最終日、空港に向かう前にふらりと立ち寄ったサバ州立博物館で、私は愕然としました。入館料わずか15リンギット、開館時間は9時から17時まで。ここで初めて、ボルネオ島の生物多様性の真の豊かさを知ったのです。
実はボルネオは生物の宝庫だった
この島には世界の植物種の約6%が生息しており、その多くが固有種だということを初めて知りました。特に食虫植物のネペンテス(ウツボカズラ)は、ボルネオだけで約30種類も確認されているそうです。
博物館の学芸員の方が教えてくれたのですが、コタキナバル周辺だけでも700種類以上の蝶が生息しているとのこと。私がビーチや街歩きばかりに時間を使っていた間、実はすぐそこに驚異的な自然の世界が広がっていたのです。
次回行くなら絶対に実践したいこと
4日間の滞在を終えて、今なら自信を持って言えます。コタキナバルは決して「普通のビーチリゾート」ではありません。しかし、その真の魅力を味わうためには、しっかりとした準備と現地の人とのコミュニケーションが不可欠です。
最低でも1週間の滞在期間を確保し、雨季を避け、日焼け対策を万全にして、そして何より現地の人たちとの会話を大切にする。これが私の経験から得た最も重要な教訓です。
空港でチェックインを待ちながら、私は既に次回の訪問計画を立て始めていました。今度はきっと、この美しい島の本当の姿をもっと深く知ることができるはずです。