サンルイス・ポトシで迷子になった私が発見した「メキシコ人も知らない絶景スポット」の正体

メキシコの中央部に位置するサンルイス・ポトシ州。首都メキシコシティから北へ約420キロの場所にあるこの街は、多くの日本人旅行者にとってまだまだ未知の領域です。私も最初は「どこそれ?」状態でしたが、実際に足を運んでみると、カンクンやメキシコシティとはまったく違う魅力に溢れていました。

なぜサンルイス・ポトシが「隠れた宝石」と呼ばれるのか?

サンルイス・ポトシの美しい街並み

サンルイス・ポトシが特別なのは、スペイン植民地時代の建築と現代メキシコの文化が絶妙に融合している点です。街の中心部を歩いていると、まるでタイムスリップしたような錯覚に陥ります。

アルマス広場(Plaza de Armas)は、この街の心臓部とも言える場所。18世紀に建てられた総督宮殿が威風堂々と佇み、その向かいには美しいカテドラル(大聖堂)があります。入場は無料で、朝の6時から夜の20時まで開放されています。特に夕方の17時頃に訪れると、西日が石造りの建物を黄金色に染める光景は息を呑む美しさです。

意外に知られていないのが、この街が「メキシコの革命発祥地」の一つだということ。1910年のメキシコ革命時、多くの革命家がこの地から立ち上がったのです。街中に点在する革命記念碑やプラークを探しながら歩くのも、歴史好きにはたまらない楽しみ方です。

地元民しか知らない「本物のメキシコ料理」はどこで食べる?

サンルイス・ポトシの伝統料理

観光地化されていないサンルイス・ポトシだからこそ味わえる、本場のメキシコ料理があります。私が現地で出会った料理研究家のマリアさんに教えてもらったのが、「エンチラーダス・ポトシナス」という郷土料理でした。

この料理の特徴は、赤唐辛子をベースにしたソースにチーズを包んだトルティーヤを浸し、上に細切りのキャベツと白チーズをトッピングすること。メキシコ各地にエンチラーダはありますが、ポトシ版は独特の酸味があり、一度食べたら忘れられない味です。

メルカド・レプブリカ(Mercado República)では、朝の7時から夕方15時まで地元の人々で賑わっています。特に「Doña Carmen」という小さな食堂では、1皿わずか45ペソ(約270円)でこの絶品エンチラーダスが味わえます。観光客はほとんどおらず、地元の労働者や学生でいっぱいの、まさに「本物」の空間です。

街角で見つけた驚きのスイーツ

もう一つ忘れられないのが、「ケソ・デ・トゥナ」という伝統菓子。これは実はチーズではなく、サボテンの実(トゥナ)を煮詰めて作る甘いお菓子なんです。食感はまるで羊羹のようで、ほんのり甘酸っぱい味が口の中に広がります。中央市場の角にある「Dulces Tradicionales」で1個20ペソ(約120円)で購入できます。

「迷子になって良かった」と思えた絶景ポイント

サンルイス・ポトシの絶景スポット

実は私、サンルイス・ポトシで道に迷ったんです。Google Mapsを頼りに歩いていたら、なぜか住宅街の坂道をひたすら上ることになって。でも、この「迷子体験」が旅のハイライトになりました。

辿り着いたのはセロ・デ・サン・ペドロ(Cerro de San Pedro)という小さな丘の上。ここからはサンルイス・ポトシの街全体が一望できるんです。特に夕暮れ時の18時頃は、街全体がオレンジ色に染まり、遠くまで続く砂漠の地平線が幻想的でした。

この展望台への行き方ですが、中心部からタクシーで約25分、料金は150-200ペソ(約900-1200円)程度。バスもありますが、1日3本程度と本数が少ないため、タクシーがおすすめです。展望台自体は24時間開放されていて入場無料ですが、夜は照明が少ないので、日中から夕方にかけての訪問が安全です。

知っておきたい「サンルイス・ポトシの落とし穴」

サンルイス・ポトシの街並みと注意点

正直にお伝えすると、サンルイス・ポトシ観光には少し注意が必要な点もあります。まず、英語がほとんど通じません。観光地化されていない分、ホテルやレストランでも基本的にスペイン語のみです。私も現地で苦労しましたが、翻訳アプリとジェスチャーでなんとか乗り切りました。むしろ、この「言葉の壁」があるからこそ、地元の人々の温かさをより深く感じられたのかもしれません。

また、ATMの場所が限られていることも要注意。中心部のアルマス広場周辺には数台ありますが、少し離れると見つけるのに苦労します。現金社会なので、事前にペソを多めに用意しておくことをおすすめします。

季節選びが成功のカギ?

サンルイス・ポトシは標高1,864メートルの高地にあるため、気候が独特です。私が訪れた12月は昼間25度、夜は5度まで下がり、一日の気温差に驚きました。5月から9月は雨季で、午後になると突然のスコールがあります。観光には乾季の11月から4月がベストですが、朝晩の冷え込み対策として薄手のジャケットは必須です。

実は「砂漠のオアシス」だった?隠れた自然スポット

街の中心部から車で約1時間の場所に、「リアル・デ・カトルセ(Real de Catorce)」という廃墟となった銀山の町があります。ここは19世紀後期に銀の採掘で栄えた町でしたが、現在はゴーストタウンと化している神秘的なスポット。

この町へのアクセスは少し特殊で、山をくり抜いたトンネルを通る必要があります。幅がぎりぎりで対向車とのすれ違いにヒヤヒヤしますが、トンネルを抜けた瞬間に広がる荒涼とした美しさは言葉にできません。入場料はありませんが、ガイド付きツアー(300ペソ:約1,800円)を利用すると、銀山の歴史や建物の詳細な説明が聞けます。

意外なことに、この廃墟の町は現在、ウイチョル族という先住民にとっての聖地となっています。彼らは年に一度、ペヨーテというサボテンを求めて巡礼の旅をするのですが、その終着点がここリアル・デ・カトルセなのです。運が良ければ、色とりどりの民族衣装を身にまとった巡礼者たちに出会えるかもしれません。

帰国後も忘れられない「サンルイス・ポトシの余韻」

サンルイス・ポトシから帰国して数ヶ月経った今でも、あの街の静かな魅力が心に残っています。観光地特有の喧騒もなく、地元の人々の日常に溶け込むような旅ができたのは、きっとこの街がまだ「発見されていない」からでしょう。

最後に一つアドバイス。サンルイス・ポトシを訪れる際は、時間に余裕を持ったスケジュールを組んでください。この街の本当の魅力は、急いで名所を巡ることではなく、ゆっくりと街角に座り、地元の人々の生活を眺めることにあります。コーヒー一杯15ペソの小さなカフェで、スペイン語が分からなくても笑顔で迎えてくれる人々との出会い。それこそが、この街が教えてくれる「旅の本質」なのかもしれません。