メキシコの隠れた宝石、プエブラってどんな街?
メキシコシティから車で約2時間、標高2,100メートルの高原に佇むプエブラは、多くの日本人観光客が素通りしてしまう「知られざる世界遺産の街」です。でも実は、カンクンやメキシコシティよりも濃密な文化体験ができる場所なんです。
コロニアル建築の美しさは息を呑むほどで、特にタラベラ焼きのタイルで装飾された建物群は、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような錯覚を覚えます。1987年に世界文化遺産に登録されたプエブラ歴史地区は、徒歩で回れるコンパクトさも魅力の一つです。
絶対に失敗したくない!プエブラ観光の3つの落とし穴
失敗その1:日曜日の教会巡りは諦めた方がいい?
プエブラには「365の教会がある」と言われるほど宗教建築が豊富です。しかし、日曜日の午前中は地元の人々のミサの時間。サント・ドミンゴ教会のロサリオ礼拝堂など、観光の目玉となる教会内部の見学が制限されることが多いんです。
平日の午後2時から5時頃が最も静かで、写真撮影にも適しています。入場料は基本的に無料ですが、寄付箱にいくらか入れるのがマナーです。
失敗その2:モーレの名店で恥をかかないために
プエブラ名物のモーレ・ポブラーノは、チョコレートとスパイスを20種類以上ブレンドした複雑な味わいのソースです。でも、観光客向けのレストランで食べると、本来の味からは程遠い甘ったるいものに出会うことも。
地元民が通う「Casa de Santa Clara」(ソカロから徒歩5分、営業時間:平日11時〜19時)では、修道院の伝統レシピで作られた本格的なモーレが味わえます。1人前約200ペソ(約1,400円)と観光地価格より安いのも嬉しいポイントです。
失敗その3:高山病を甘く見てはいけない
標高2,100メートルのプエブラでは、軽度の高山病症状が出ることがあります。特に階段の多い教会や美術館での見学時は要注意。水分補給を怠らず、急激な運動は避けましょう。現地の薬局では高山病用の薬も購入できますが、到着初日はゆったりとしたスケジュールを組むことをおすすめします。
現地人だけが知る、とっておきの隠れスポット
屋上から見る絶景、でも入り方が特殊?
カテドラル(プエブラ大聖堂)の屋上に上がれることを知っている日本人観光客はほとんどいません。ソカロに面したこの大聖堂は、正面入口ではなく、左側の小さな扉から入って係員に「¿Puedo subir a la azotea?」(屋上に上がれますか?)と聞いてみてください。
運が良ければ、プエブラ市街とポポカテペトル山の絶景を独り占めできます。営業時間は午前10時〜午後4時、入場料50ペソ(約350円)です。
職人の手仕事を間近で見るマニアックな体験
プエブラといえばタラベラ焼きですが、観光客向けの工房ではなく、4代続く老舗「Talavera Uriarte」(市中心部から車で15分)を訪れてみてください。事前予約制(月〜金曜、午前10時と午後2時の2回)で、職人さんが実際に絵付けをする様子を間近で見学できます。
ここでしか聞けない話として、本物のタラベラ焼きは必ず底面に作家のサインが入っていること、そして完成まで3ヶ月かかることなど、深い知識を得られるでしょう。見学料は100ペソ(約700円)、購入の義務はありません。
地元民が愛する本当に美味しい店って?
観光地のソカロ周辺を離れ、「Mercado El Carmen」(中央市場から徒歩10分、営業時間:朝7時〜夕方6時)へ足を向けてみましょう。ここには地元の人々が毎日通う小さな食堂がひしめいています。
特におすすめは、市場の奥にある「Doña María」という屋台。看板もなく、地元のおばちゃんが一人で切り盛りしていますが、チレス・エン・ノガダ(9月限定の郷土料理)の名人として密かに有名です。1皿80ペソ(約560円)という驚きの安さで、レストラン顔負けの味が楽しめます。
プエブラ観光、実際の所要時間と移動のコツ
メキシコシティのバスターミナルTAPO(Terminal de Autobuses de Pasajeros de Oriente)から、ADOバスで約2時間、料金は片道300ペソ(約2,100円)です。1時間に1本程度の運行で、事前予約も可能。
プエブラ市内の主要観光スポットは、ソカロを中心とした半径1キロ圏内に集中しているため、徒歩での移動が基本となります。日帰りも可能ですが、夜のライトアップされた街並みは格別の美しさなので、できれば1泊することをおすすめします。
プエブラは確かにメジャーな観光地ではありませんが、だからこそ本物のメキシコ文化に触れることができる貴重な場所です。観光バスに揺られることなく、自分のペースで街を歩き、地元の人々との自然な交流を楽しめるのは、プエブラならではの醍醐味といえるでしょう。
知られざるプエブラの夜の魅力とは?
夜景スポットで地元カップルに混じって
日が暮れると、プエブラの街は昼間とは全く違う表情を見せます。セロ・デ・グアダルーペ(グアダルーペの丘)からの夜景は、地元の若者たちのデートスポットとして人気ですが、観光客の姿はほとんど見かけません。
タクシーで約15分、料金は市中心部から片道150ペソ(約1,050円)程度。夜8時頃から街の明かりが美しく輝き始めます。治安面では比較的安全ですが、帰りのタクシーは事前に手配しておくか、運転手さんに待っていてもらうのが賢明です。
夜だけ開く隠れ家バーの存在
ソカロから少し離れた場所に、「La Pasita」という100年以上続く老舗バーがあります。営業時間は夜7時から深夜1時まで。ここの名物は、レーズンを漬け込んだ甘いリキュール「パシータ」で、小さなグラスで提供されます。1杯30ペソ(約210円)という安さも魅力的。
店内は昔ながらの木製カウンターと古い写真で装飾されており、まるでタイムスリップしたような雰囲気。地元の常連客との会話も楽しめるでしょう。
季節限定の特別な体験、見逃すと後悔する?
9月はプエブラ観光のベストシーズンです。なぜなら、チレス・エン・ノガダという特別な郷土料理が味わえる唯一の時期だから。緑のチレ(唐辛子)、白いクルミソース、赤いザクロで、メキシコ国旗の色を表現したこの料理は、まさに芸術品です。
11月には「死者の日」の装飾で街全体が彩られ、オレンジ色のマリーゴールドとカラフルなガイコツの飾り付けが、プエブラの美しいコロニアル建築をより一層引き立てます。この時期だけの特別な雰囲気は、一度体験したら忘れられない思い出となるはずです。
最後に伝えたい、プエブラ観光の本当の価値
プエブラの真の魅力は、完璧に整備された観光地ではないところにあります。石畳の道を歩いていると迷子になることもあるし、英語が通じない場面も多い。でも、そんな不便さも含めて、リアルなメキシコを感じられる場所なんです。
現地の人々の温かさ、400年以上前から変わらない街並み、そして心に残る味わい深い料理。これらすべてが組み合わさって、プエブラでしか得られない特別な旅の記憶を作り上げてくれます。次回のメキシコ旅行では、ぜひプエブラを選択肢に入れてみてください。きっと、新しいメキシコの一面を発見できるはずです。