なぜオークランドは「帆の街」と呼ばれるのか?
ニュージーランド最大の都市オークランドを訪れて最初に驚くのは、街中に現れる無数のヨットの光景です。「City of Sails(帆の街)」という愛称は伊達ではありません。人口約170万人の街に対して、なんと13万5千艇ものボートが登録されているのです。これは世界でも類を見ない比率で、なんと住民12人に1艇の割合になります。
ワイテマタ港(Waitemata Harbour)に面したオークランドでは、平日でも仕事帰りにセーリングを楽しむ人たちの姿が当たり前の風景。特に金曜日の夕方、ヴァイアダクト・ハーバー周辺を歩けば、まるで海上パレードのような賑やかなボートの行列に出会えるでしょう。
スカイタワーから見下ろす絶景、でも本当のお楽しみは?
高さ328メートルのスカイタワーは確かにオークランドのシンボルです。入場料は大人32NZドル(約2,800円)で、営業時間は9時から22時まで。でも実は、地元の人たちが本当に愛しているのは別の場所なのです。
それがマウント・イーデンという死火山の頂上。入場料はなんと無料で、24時間いつでも登れます。市内中心部から車で約15分、バスでも30分程度でアクセス可能。ここから見る360度のパノラマは、スカイタワーよりもはるかにドラマチック。特に夕暮れ時に訪れれば、ランギトト島に沈む夕日と、きらめく街の灯りの両方を楽しめる贅沢な時間が待っています。
地元の人に聞いて初めて知ったのですが、オークランドには実は50以上の死火山が点在しているのです。街全体が巨大な火山地帯に建っているなんて、観光ガイドブックには小さく書いてあるだけでした。
ワイヘケ島への日帰り旅行で発見した意外な事実
オークランドからフェリーで35分のワイヘケ島は、「南半球の地中海」と称される美しい島です。フェリー料金は往復で大人37NZドル(約3,200円)、1日に何便も運行されています。
ここで驚いたのは、小さな島にもかかわらず30以上のワイナリーが軒を連ねていることでした。しかも、多くのワイナリーで日本語を話せるスタッフに出会えるのです。実は、ワーキングホリデーで訪れた日本人の若者たちが、ワイン作りの魅力に取り憑かれてそのまま定住するケースが多いのだとか。
オイストン・ワインズでは、日本人オーナーが手がける繊細なピノ・グリージョを味わうことができます。営業時間は11時から17時まで、テイスティング料金は10NZドルからとリーズナブル。「羊の国のワイン」という先入観が完全に覆される、洗練された味わいに驚かされました。
オークランドの食文化で気づいた多様性の深さ
オークランドを歩いていて最も印象的だったのは、街角のあちこちで聞こえてくる多言語の響きです。実は、オークランドの住民の約40%が海外生まれという、世界屈指の多民族都市なのです。
クイーン・ストリート周辺では、本格的なベトナム料理、インド料理、中華料理、そして意外にも中東料理のレストランが軒を連ねています。特におすすめなのが、フェデラル・ストリートにある「Depot Eatery」。ここでは新鮮なグリーンマッスル(緑イ貝)を1kgあたり28NZドルで味わえます。営業時間は7時から深夜まで、予約なしでも入店可能です。
現地の人に教えてもらったのですが、オークランドでは「フラット・ホワイト」というコーヒーが生まれたという説があります。エスプレッソにスチームミルクを注いだシンプルな一杯ですが、その絶妙なバランスは確実にオークランド発祥の文化です。街中のカフェで「フラット・ホワイト」を注文すれば、4.5NZドル程度で本場の味を楽しめます。
知られざるオークランドの裏の顔
観光地として語られることの少ないオークランドの一面に、先住民マオリ文化の深い根があります。オークランド戦争記念博物館では、入場料25NZドルで本格的なマオリ文化パフォーマンスを毎日11時、12時、13時30分、14時30分、15時30分に見ることができます。
特に驚いたのは、現在でもオークランドの地名の多くがマオリ語由来だということ。「ワイテマタ」は「きらめく水」、「ランギトト」は「血の空」という意味があります。これらの名前には、マオリの人々がこの土地で過ごした長い歴史と、時には激しい戦いの記憶が刻まれているのです。
街の中心部から車で20分ほどのワン・ツリー・ヒルでは、マオリの聖地としての歴史を肌で感じることができます。かつてここには巨大なトタラの木が1本だけ立っていたため、この名前が付けられました。現在は記念のオベリスクが建っていますが、地元のマオリの人々にとって今でも特別な意味を持つ場所です。
オークランド観光で避けたいトラブルと対策
オークランドは治安が良い都市として知られていますが、観光客が気をつけるべき点がいくつかあります。最も多いのがレンタカーでの駐車トラブルです。市内中心部では1時間あたり4NZドル程度の駐車料金がかかり、支払いを忘れると80NZドルの罰金が科せられます。
意外に知られていないのが、オークランドの紫外線の強さです。南半球特有のオゾンホールの影響で、日本の約5倍の紫外線量になることもあります。現地の人々は真夏でも長袖を着用し、帽子とサングラスは必需品。日焼け止めは最低でもSPF50以上を用意しておくことをおすすめします。
また、オークランドの天気は「一日の中に四季がある」と例えられるほど変わりやすいのが特徴。朝は晴れていても夕方には突然の雨に見舞われることが日常茶飯事です。折り畳み傘は必携アイテムと考えておきましょう。
帰国前に必ず体験したいオークランドの隠れた名所
最後に紹介したいのが、観光ガイドブックにはほとんど載っていない「オークランド・ドメイン」内の温室植物園です。入場料はなんと無料で、9時から16時まで開園しています。ここには世界中から集められた珍しい植物が展示されており、特に冬の寒い時期には地元の人々の憩いの場となっています。
植物園の奥にある「ウィンター・ガーデン」では、熱帯植物に囲まれながらゆっくりとした時間を過ごせます。併設されているカフェでは、地元産の蜂蜜を使った紅茶を3.5NZドルで楽しむことができ、旅の疲れを癒すのに最適な場所です。
オークランドの真の魅力は、大自然と都市機能が絶妙に調和した、世界でも稀有な環境にあります。羊の国の玄関口という印象を覆す、洗練された国際都市としての一面と、マオリ文化に根ざした深い歴史を併せ持つこの街は、訪れる人それぞれに異なる発見をもたらしてくれるでしょう。帰りのフライトから見下ろすオークランドの夜景は、きっと忘れられない思い出になるはずです。