標高3400mの試練が待っている?クスコ到着の衝撃
クスコに降り立った瞬間、私の心臓は激しく鼓動していました。それは感動ではなく、標高3400mという現実でした。アンデス山脈に囲まれたこの古都は、かつてのインカ帝国の首都として栄華を誇りましたが、現代の旅行者にとっては「高山病との戦い」という洗礼が待っています。
空港から市街地まではタクシーで約30分、料金は30ソル(約1200円)程度です。運転手さんに「ゆっくり歩いて、深呼吸を忘れずに」と言われたのが印象的でした。実際、階段を数段上がっただけで息切れする自分に驚愕します。
しかし、この試練を乗り越えた先に待つのは、まさに「生きた歴史書」とも呼べる街並みです。インカ時代の石組みの上にスペイン植民地時代の建物が重なる独特の景観は、世界中どこを探してもクスコでしか見ることができません。
12角の石に隠された謎?インカの石組み技術の驚異
旧市街を歩いていて最初に度肝を抜かれるのが、ハトゥン・ルミヨック通りにある12角の石です。カミソリの刃も通らないほど精密に積まれた石組みを見ていると、500年前のインカ人の技術力に言葉を失います。
ここで地元ガイドから聞いた興味深い話があります。実はこの石組み、地震が起きると石同士が微妙に動いて衝撃を吸収し、揺れが収まると元の位置に戻る仕組みになっているそうです。現代の免震構造の先駆けとも言えるこの技術は、今でも完全に解明されていません。
石に触れることは禁止されていませんが、観光客が触りすぎて石の表面が摩耗してきているのが現状です。写真撮影は午前中がおすすめ。逆光を避けられ、石の質感がより鮮明に写ります。
さらに驚くべきことに、これらの石はクスコから20km離れた採石場から運ばれてきたもので、当時は車輪も家畜もいなかったインカ人がどうやって運搬したのか、今でも謎に包まれています。
アルマス広場の隠れた楽しみ方、知ってる?
クスコの心臓部であるアルマス広場は、24時間常に何かしらの活気に満ちています。しかし、多くの観光客が見逃している楽しみ方があります。
まず、広場を囲む2階建ての回廊(ポルタル)に注目してください。ここには地元の人しか知らない小さなカフェやバーが隠れています。特に「Portal de Panes」の2階にある老舗カフェでは、コカ茶を飲みながら広場を見下ろすという贅沢な時間を過ごせます。コカ茶は高山病対策にも効果的で、1杯3ソル程度です。
夜になると広場の表情は一変します。ライトアップされたカテドラル(大聖堂)は�荘厳そのもので、内部見学は月曜から土曜の10時から18時まで、入場料は30ソルです。意外に知られていないのですが、この大聖堂の建設には実際にインカ遺跡の石材が使われており、よく見ると外壁にインカ時代の石組みの痕跡を発見できます。
地元の人に教えてもらったのですが、日曜日の午前中には地元の家族連れが民族衣装を着て散歩する光景が見られ、観光地化されていない本物のクスコ文化に触れることができます。
サン・ブラス地区で迷子になる価値ある理由
アルマス広場から北東に向かって石畳の坂道を登ると、サン・ブラス地区という芸術家の街に迷い込みます。ここは観光バスが入れないほど道が狭く、まさに迷路のような構造になっています。
しかし、この「迷子になること」こそがサン・ブラス地区の醍醐味です。曲がりくねった石畳の路地を歩いていると、突然視界が開けてクスコ市街を一望できる絶景ポイントに出くわしたり、地元の陶芸家が作業している工房を発見したりします。
この地区で絶対に訪れてほしいのがサン・ブラス教会です。小さな教会ですが、内部にある説教台の彫刻は「南米で最も美しい木彫り」と称されています。入場料はわずか15ソルで、月曜から土曜の8時から17時まで開いています。
地元の人だけが知る秘密をひとつお教えしましょう。サン・ブラス地区の路地には、インカ時代の排水システムが今でも機能している場所があります。石畳の下を流れる水の音に耳を澄ませてみてください。500年前の技術が現在も生活を支えている事実に、きっと驚かれるはずです。
クイ料理に挑戦する勇気、ありますか?
クスコの食文化を語る上で避けて通れないのが、クイ(テンジクネズミ)料理です。「えっ、ペット用のモルモット?」と驚かれるかもしれませんが、アンデス地方では3000年以上前から貴重なタンパク源として親しまれてきました。
アルマス広場周辺の「Inka Grill」や「Chicha por Gaston Acurio」などの高級レストランでは、観光客向けにアレンジされたクイ料理を提供しています。価格は80〜120ソル程度で、鶏肉に近い淡白な味わいです。しかし、本当のクスコ料理を味わいたいならサン・ペドロ市場に足を運んでみてください。
この市場は朝6時から夕方18時まで開いており、地元の人々で賑わっています。ここではチチャモラーダ(紫トウモロコシのジュース)やキヌア入りのスープなど、観光地では味わえない本格的な味に出会えます。特に市場の奥にある小さな食堂では、地元のお母さんが作る家庭料理を1食15ソル程度で楽しめます。
意外に知られていませんが、クスコにはチョコレート博物館もあり、カカオの歴史からチョコレート作り体験まで楽しめます。入場料は20ソルで、作ったチョコレートはお土産として持ち帰れます。
高山病との上手な付き合い方
最後に、クスコ観光で最も重要なアドバイスをお伝えします。到着初日は絶対に無理をしないことです。私自身、初日に張り切りすぎて頭痛と吐き気で半日寝込んでしまいました。
地元の薬局で購入できるソロチェ錠(高山病薬)は1箱20ソル程度で、予防効果があります。また、ホテルでは24時間酸素ボンベのレンタルサービス(1日50ソル)も利用できます。
クスコの街は、確かに体力的には厳しい場所です。しかし、その分だけ得られる感動と学びは計り知れません。インカとスペインの文明が交錯するこの街で、あなた自身の冒険が始まることを心から願っています。