フィリピンのパラワン島北部に位置するエルニド。SNSで見る美しいラグーンの写真に憧れて訪れる人が後を絶ちませんが、実際に現地を訪れると「あれ?想像と違う…」と感じる瞬間が必ずあります。私も初回訪問時は観光業者の甘い言葉に乗せられ、後悔した経験があります。
アイランドホッピングツアーの真実とは?
エルニドといえばアイランドホッピングツアーが定番ですが、ここに最大の落とし穴があります。多くの業者がA、B、C、Dの4つのツアーコースを提供していますが、料金は1人1,500~2,000ペソ(約4,000~5,500円)程度。一見リーズナブルに見えますが、実は大きな問題があります。
最大の問題はボートの詰め込み具合です。定員20名のボートに30名以上を乗せることも珍しくありません。美しいラグーンに到着しても、同じような観光ボートが10艇以上ひしめき合っている光景は、正直言って興醒めです。
さらに、ランチタイムに提供される食事の質も要注意。多くのツアーでは「BBQランチ付き」を謳っていますが、実際は冷めた魚の切り身と米だけという場合がほとんど。飲み水すら別料金(50ペソ)を請求されることもあります。
本当におすすめできるツアー選びのコツは?
地元の人に教えてもらった秘訣は、エルニドタウンから少し離れたコロン・ビーチ周辺の小規模業者を探すことです。料金は2,500~3,000ペソと少し高めですが、参加者は8~12名程度に限定され、ガイドとの距離も近く、隠れたスポットも教えてもらえます。
宿泊エリア選びで観光の質が激変する理由
エルニドの宿泊エリア選びは、想像以上に重要です。多くの観光客が選ぶエルニドタウン中心部は確かに便利ですが、夜中まで続くバーの騒音と、朝5時から始まる漁師たちの活動音で睡眠不足になりがちです。
私が強く推奨するのはコロン・ビーチエリアです。タウンからトライシクル(三輪バイク)で約15分、片道150ペソかかりますが、静かな環境と美しいサンセットを独占できます。このエリアのゲストハウスは1泊2,000~4,000ペソ程度で、Wi-Fi環境も良好です。
知られざるエルニドの水事情って?
ここで一つ、ガイドブックには載っていない重要な情報をお伝えします。エルニドは慢性的な水不足に悩まされており、特に乾季(12月~5月)は深刻です。多くのホテルでシャワーの水圧が極端に弱い、またはお湯が出ない時間帯があります。
現地の人によると、午前6時~8時と午後6時~8時が比較的水圧が安定している時間帯。この情報を知っているかどうかで、滞在の快適さが大きく変わります。
現地グルメの落とし穴と本当の美味しい店
エルニドのレストラン選びも要注意です。観光客向けの店では、シーフードの鮮度に問題があることが多く、実際に食中毒になった旅行者の話も耳にします。特に、氷を使った飲み物や生野菜を使ったサラダは避けた方が無難です。
地元の人が実際に利用する「Artcafe」(エルニドタウンのメインストリートから一本奥の路地)では、新鮮な魚介類を使ったシニガン(酸味のあるスープ)が1杯180ペソで味わえます。営業時間は午前11時から午後9時まで、現金のみの支払いです。
フルーツ購入で気をつけるべきことは?
南国フルーツを楽しみにしている方も多いでしょうが、マンゴーの価格設定には要注意。観光客には1個200~300ペソで売りつけようとしますが、地元価格は50~80ペソです。購入前に必ず値段交渉をしましょう。
また、パイナップルやドラゴンフルーツは、その場でカットしてもらうより、丸ごと購入してホテルで食べる方が衛生的で経済的です。
交通手段とアクセスの現実的な話
エルニドへのアクセスは、プエルト・プリンセサ空港からバスで約5時間、またはエルニド空港への直行便(マニラから約1時間半、往復約25,000円)の2択です。
多くのガイドブックでは「バス移動も景色が楽しめる」と書かれていますが、実際の道路状況は想像以上に厳しいものです。舗装されていない区間が約2時間続き、エアコンの効きも悪く、途中でトイレ休憩できる場所も限られています。
現地での移動手段は何がベスト?
エルニド内での移動はトライシクルが主流ですが、料金交渉は必須です。初乗り100ペソからスタートし、距離に応じて150~300ペソが相場。夜間は1.5倍の料金になることを覚えておきましょう。
意外と知られていないのが、レンタルバイクという選択肢です。1日500ペソでスクーターを借りることができ、免許証の提示は求められません(ただし自己責任)。ガソリン代は別途1リットル60ペソ程度です。
天候に左右される観光スケジュールの組み方
エルニドの天気は想像以上に変わりやすく、特に雨季(6月~11月)は突然のスコールに見舞われることが日常茶飯事です。現地で学んだ教訓は、午前中に屋外アクティビティを済ませることの重要性です。
地元の漁師によると、午後2時以降は風が強くなりやすく、ボートでの移動が困難になる日が月の半分以上あるそうです。そのため、ビッグラグーンやスモールラグーンといった人気スポットは朝一番に訪れるのがベストです。
雨の日でも楽しめる隠れスポットって?
悪天候の日におすすめなのがナクパン・ビーチです。エルニドタウンからトライシクルで約45分(往復1,200ペソ)かかりますが、4キロメートルに渡って続く白砂のビーチは圧巻です。観光客も少なく、雨が降っても近くの「Maremegmeg Beach Bar」で現地のサンミゲルビール(1本80ペソ)を飲みながら雨宿りできます。
現地で体験した「想定外」の出費と対策
エルニド観光で最も予想外だったのは環境税の存在です。到着時に1人200ペソ(約550円)の支払いが義務付けられており、この情報を事前に知らない観光客が多く、空港で慌てる光景をよく目にします。
さらに、多くのアクティビティで機材レンタル料が別途発生します。シュノーケリングマスクとフィンのセットで1日300ペソ、ライフジャケットは200ペソが相場です。これらの費用を含めると、1日のアクティビティ費用は想定より1,000~1,500ペソ高くなることを覚悟しておきましょう。
ATMと両替事情の注意点は?
エルニドタウンにはBDOとBPIの2つのATMがありますが、頻繁に故障し、現金が引き出せないことがあります。特に週末は修理対応が遅れがちです。必ず現金は多めに準備し、米ドルの小額紙幣も持参することをお勧めします。両替レートは1ドル=52~54ペソ程度です。
帰国前に知っておきたい現実的なアドバイス
エルニド滞在の最終日、多くの旅行者が直面するのが土産物の選択です。定番の貝殻アクセサリーや木彫りの置物は、実は大部分がセブ島やマニラで大量生産された輸入品。本当にエルニド産の土産を求めるなら、地元で採れる真珠(小さなもので1個500ペソ~)や、パラワン島特産のカシューナッツ(1袋250ペソ)がおすすめです。
最後に、エルニドは確かに美しい場所ですが、インフラの未発達や環境問題も抱えています。観光客として責任ある行動を心がけ、現地の文化と自然を尊重する姿勢が、より深い旅の体験につながることを付け加えておきます。