シアルガオ島で私が経験した「インスタ映えの罠」と本当の魅力とは

フィリピンの隠れた楽園?実際に行って感じたギャップ

フィリピン北東部のミンダナオ海に浮かぶシアルガオ島。SNSで見る美しいサーフィン動画や椰子の木に惹かれて、私も2023年夏に実際に足を運びました。でも正直に言うと、期待していた「手付かずの楽園」とは少し違っていたんです。

近年の観光ブームで開発が急速に進み、特にジェネラルルナ周辺は思っていた以上に観光地化されていました。でもそのおかげで、以前なら味わえなかった快適さも手に入れることができたのも事実。今回は、そんなシアルガオ島の光と影を包み隠さずお伝えします。

サーフィンだけじゃない?島の多面的な魅力を発見

多くの人がシアルガオ島といえばサーフィンを思い浮かべるでしょう。確かにクラウド9は世界的に有名なサーフスポットで、毎年8月から11月にかけてプロサーファーたちが集まります。ボードレンタルは1日約1,500ペソ(約4,000円)、サーフレッスンは初心者向けで2時間2,000ペソ程度が相場です。

しかし実際に滞在してみると、サーフィン以外にも魅力的なアクティビティがたくさんあることに気づきました。特に印象的だったのがスグバ・ラグーンでの海水と淡水が混じり合う不思議な体験。ジェネラルルナ市街地から車で約30分、入場料150ペソで一日中楽しめます。

地元の人に教えてもらった穴場スポットマグププンコ・ロック・プールは、干潮時にだけ現れる天然プールで、観光客はほとんどいませんでした。タイミングが重要なので、宿泊先で潮の満ち引きを確認してから向かうのがおすすめです。

食事事情の現実:期待と実際のギャップは?

SNSで見かける美しいアサイボウルやトロピカルフルーツの写真に期待していましたが、現実はもう少し複雑でした。観光客向けレストランの料理は確かにフォトジェニックですが、価格は思っていた以上に高め。例えば、人気店「Kermit Siargao」のピザは350-650ペソ(約950-1,750円)と、フィリピンの物価を考えると結構な値段です。

一方で、地元の人たちが通う食堂で食べたリエンプロ・デ・バングス(ミルクフィッシュの腹身焼き)は1皿120ペソほどで、観光地価格の料理よりもずっと美味しく感じました。市場近くの「Mama’s Grill」は地元民で賑わう隠れた名店で、夜7時頃から営業開始です。

興味深い発見だったのは、島の北部では今でも伝統的なバンカボートを使った漁が行われていること。早朝5時頃に港を訪れると、夜通し漁をしていた漁師たちが戻ってくる光景を見ることができ、観光地化されたエリアとは全く違った島の表情を垣間見ることができます。

交通手段の現実:移動は思っているより大変?

シアルガオ島への玄関口はサヤク空港。マニラからは直行便で約2時間、セブからは約1時間半です。空港は小さく、到着後のタクシーやハバルハバル(バイクタクシー)の客引きが激しいので、事前に宿泊先の送迎サービスを予約しておくのが無難です。

島内の移動手段は主にハバルハバルとレンタルスクーター。ハバルハバルは1回50-100ペソが相場ですが、観光客には高めの値段を提示されることも。スクーター(125cc)のレンタルは1日300-500ペソで、国際運転免許証が必要です。ただし道路状況は決して良くなく、雨季には舗装されていない道がぬかるんで危険になることもあります。

意外だったのは、島の東側と西側では全く雰囲気が違うこと。観光の中心地ジェネラルルナがある東側に対し、西側は昔ながらの静かな漁村の雰囲気を色濃く残しています。デルカルメンやサンタモニカ方面へのドライブは、真のシアルガオ島を感じられる貴重な体験でした。

宿泊選びで失敗しないコツとは?

シアルガオ島の宿泊施設は大きく3つのエリアに分かれます。最も便利なのはジェネラルルナ市街地で、レストランや両替所、コンビニエンスストアが徒歩圏内。一方で夜遅くまで音楽が聞こえることもあり、静かに過ごしたい人には向かないかもしれません。

クラウド9周辺はサーファーに人気のエリア。波の音で目覚める贅沢を味わえますが、市街地まで約15分の距離があり、食事の選択肢は限られます。私が宿泊した中級ホテルの料金は1泊3,000-5,000ペソ程度でした。

穴場はダクエット方面の宿泊施設。観光客が少なく、ローカルな雰囲気を味わえます。料金も市街地より2-3割安く、地元の人たちとの交流も楽しめました。ただし、英語が通じない場合もあるので、基本的なビサヤ語のフレーズを覚えておくと喜ばれます。

本当に知っておくべき注意点と対策

シアルガオ島で最も注意すべきは台風シーズンです。6月から12月は台風の影響を受けやすく、特に9月と10月は要注意。私が滞在中にも台風警報が発令され、2日間ホテルから出られない状況になりました。この時期に訪れる場合は、予定に余裕を持たせることが重要です。

もう一つの盲点は停電の頻度。特に雨季には週に2-3回、数時間の停電が発生することも珍しくありません。スマートフォンの充電器やモバイルバッテリーは必需品です。また、ATMが使えなくなることもあるため、現金は多めに準備しておきましょう。

医療面では、島内の医療施設は基本的な治療のみ。サヤク・ドクターズ・ホスピタルが最も設備が整っていますが、重篤な症状の場合はブトゥアンやセブへの搬送が必要になります。海外旅行保険への加入は必須といえるでしょう。

地元の人だけが知る隠れスポット

3週間の滞在中、現地の友人ができたおかげで観光ガイドには載っていない場所をいくつか教えてもらいました。その中で最も印象的だったのがカオハガン島の姉妹島と呼ばれる小さな無人島。ボートマンのジュンさん(仮名)に案内してもらいましたが、プライベートビーチ状態で過ごせる贅沢さは忘れられません。

ジェネラルルナから車で1時間ほど内陸に向かった場所にあるソホトン洞窟も地元の人のおすすめスポット。観光客向けのソホトン・コーブとは別の場所で、地元のガイド(1日2,000ペソ)が必要ですが、神秘的な鍾乳洞と地底湖の組み合わせは圧巻でした。

食べ物では、毎週水曜日と土曜日の夕方に立つデルカルメンの青空市場が穴場。観光客はほとんど見かけませんが、島で獲れた新鮮な魚介類や珍しい果物を格安で購入できます。特に「ラング」という紫色の果物は、島外ではめったに見かけない貴重な体験でした。

結局、シアルガオ島は行く価値があるのか?

正直にお伝えすると、シアルガオ島は万人受けする観光地ではありません。インフラの不便さ、物価の高さ、天候に左右されやすい環境など、ストレスを感じる要素も確実に存在します。

しかし、それでも私がこの島をおすすめするのは、「本物の体験」ができるからです。観光地化が進んでいるとはいえ、まだまだフィリピンの素朴な島の生活を肌で感じることができます。朝は漁師たちの活気ある声で目覚め、夕方は漁から戻る船を眺めながらサンミゲルビール(45ペソ)で乾杯する。こんな何気ない時間こそが、シアルガオ島最大の魅力なのかもしれません。

最後にアドバイスとして、シアルガオ島を訪れる際は「完璧を求めない」心構えが大切です。計画通りに進まないことも多々ありますが、それもまた旅の醍醐味。地元の人たちの温かさと島時間の心地よさに身を委ねれば、きっと特別な思い出になるはずです。