プエルト・プリンセサで地下河川ツアーに参加して分かった、99%の日本人が知らない「世界遺産の裏側」

なぜプエルト・プリンセサが「フィリピン最後の秘境」と呼ばれるのか?

セブ島やボラカイ島の華やかなリゾートとは対照的に、パラワン島の州都プエルト・プリンセサは「手つかずの自然」が売り物の街です。でも実際に足を運んでみると、想像以上に洗練されたインフラと、驚くほど深い歴史が隠されていることに気づかされます。

空港から市内中心部まで約15分という立地の良さもさることながら、ここには世界自然遺産のプエルト・プリンセサ地下河川国立公園があり、年間約50万人の観光客が訪れる一大観光地なのです。

地下河川ツアーで体験する「洞窟の中の川下り」って本当にすごいの?

正直に言うと、最初は「洞窟の中をボートで進むだけでしょ?」と軽く考えていました。しかし実際のツアーは想像をはるかに超える体験でした。

サバン地区からボートで約20分、マングローブの緑のトンネルを抜けて到着する地下河川の入口。ここで小さなパドルボートに乗り換え、ヘルメットとライフジャケットを装着します。料金は外国人1人1,500ペソ(約4,000円)で、事前のオンライン予約が必須です。

洞窟内部に入ると、まず圧倒されるのは完全な闇と静寂。ガイドが手に持つライトだけが頼りで、天井から垂れ下がる巨大な鍾乳石が次々と姿を現します。全長8.2キロメートルのうち、観光客が進めるのは約1.5キロメートルですが、この短い距離に数億年の地質学的歴史が詰まっています。

意外と知られていない「バタフライガーデン」の魅力

地下河川ばかりが注目されがちですが、市内にあるプエルト・プリンセサ・バタフライガーデンは隠れた名所です。入場料わずか30ペソ(約80円)で、パラワン島固有の蝶を間近で観察できます。

特に注目すべきはパラワン・バードウィングという、羽を広げると20センチにもなる巨大な蝶。フィリピン最大の蝶として知られ、ここでしか見ることができません。午前10時から11時頃が最も活発に飛び回る時間帯で、運が良ければ肩に止まってくれることもあります。

グルメ体験で発見!パラワン島ならではの「海の幸」

プエルト・プリンセサの食文化は、他のフィリピンの都市とは明らかに異なります。パラワン島周辺の豊かな海で獲れる新鮮な魚介類が中心で、特にワニガニ(アリゲーターカニ)は必食です。

地元民しか知らない「バクラワン・マーケット」の朝食体験

観光客向けのレストランも良いのですが、本当のプエルト・プリンセサの味を知りたいならバクラワン・マーケットへ足を向けてください。朝6時から11時まで営業する地元の市場で、1皿50ペソ(約130円)から本格的なフィリピン料理が味わえます。

おすすめはシニガン・ナ・イスダ(酸っぱいスープの魚料理)とイナサル・ナ・マノク(炭火焼きチキン)。特にここのシニガンは、パラワン島特産のサマルインドという酸味の強いタマリンドを使用しており、マニラでは絶対に味わえない独特の風味があります。

移動と滞在で気をつけたい「リアル」な注意点

プエルト・プリンセサは確かに美しい場所ですが、いくつか知っておくべき現実的な課題があります。

地下河川ツアーの予約は「2週間前」が鉄則?

地下河川ツアーは1日の入場者数が900人に制限されており、特に乾季(12月から5月)は予約が取りにくくなります。公式ウェブサイトでの事前予約は必須ですが、実は現地の旅行代理店経由の方がスムーズに手配できることが多いのです。

市内中心部のリザール通り沿いの旅行代理店なら、ツアー料金に加えて手数料200ペソ程度で確実に予約を取ってくれます。英語でのやり取りが不安な方は、多少の追加料金を払ってでもプロに任せる方が安心です。

雨季の「隠れたメリット」を知ってる?

多くのガイドブックは乾季を推奨しますが、実は雨季(6月から11月)には雨季ならではの魅力があります。観光客が少なく静かな環境でツアーを楽しめるうえ、ホテル料金も約30%安くなります。

ただし雨季といっても、一日中雨が降り続くわけではありません。午後のスコールが1〜2時間続く程度で、朝の時間帯は晴れていることが多いのです。地下河川ツアーも屋根のある洞窟内がメインなので、実質的な影響はほとんどありません。

プエルト・プリンセサが教えてくれる「持続可能な観光」の形

最後に触れておきたいのが、この街の観光に対する姿勢です。プエルト・プリンセサは1999年に国連から「世界で最もクリーンな都市」に選ばれた実績があり、現在も環境保護を最優先にした観光政策を続けています。

街を歩いていると気づくのが、ゴミの少なさと緑の豊かさ。市内ではプラスチック袋の使用が条例で禁止されており、買い物の際は紙袋やエコバッグが当たり前です。観光客にも同じルールが適用され、違反すると500ペソの罰金が科せられます。

ホンダ湾の「ノープラスチック・アイランドホッピング」

市内から車で約30分のホンダ湾では、環境に配慮したアイランドホッピングツアーが人気です。料金は1人1,800ペソ(約4,800円)で、スネーク島、スターフィッシュ島、カウリー島の3島を巡ります。

ここでも徹底されているのが環境保護の取り組み。ツアーボートには必ずゴミ回収袋が備え付けられ、島での飲食も再利用可能な容器のみ使用されます。一見面倒に思えるこうした制約が、逆に「本物のエコツーリズム」を体験している実感を与えてくれるのです。

滞在中に感じた「時間の流れ方」の違い

プエルト・プリンセサで過ごす時間は、他の観光地とは明らかに質が異なります。朝6時頃から鳥のさえずりで自然に目が覚め、日の出とともに一日が始まる生活リズム。街の中心部でさえ、夜9時を過ぎると静寂に包まれます。

「イワイワン・リバー・クルーズ」で体験する夕暮れの魔法

特に印象深かったのがイワイワン川でのサンセット・クルーズ。1人500ペソ(約1,300円)で約2時間の川下りを楽しめますが、これは単なる観光ではありません。

川沿いに暮らす地元住民の生活を垣間見ながら、マングローブの森を静かに進む体験は、まさに「生きた自然史博物館」。ガイドの説明によると、この川はフィリピンで最も水質が良い河川の一つで、水中には30種類以上の淡水魚が生息しているそうです。

夕日が川面に映る瞬間、都市部の喧騒から完全に切り離された時間の中にいることを実感します。WiFiも圏外になる場所ですが、それがかえって贅沢に感じられる不思議な体験でした。

最終日に気づく「何も起こらない贅沢」

プエルト・プリンセサの魅力は、派手なアトラクションや華やかなナイトライフではありません。むしろ「何も起こらない時間」の豊かさにあります。ホテルのテラスで読書をしながら過ごす午後、地元のカフェで何時間でもぼんやりできる居心地の良さ。

これは現代の観光では珍しい「休息」に重点を置いた旅行体験で、帰国後も長く心に残る余韻があります。効率重視の旅行に疲れた方には、特に価値のある目的地だと感じました。

市内のホテル料金は1泊3,000円程度から、空港からのタクシー代は約300ペソ(約800円)と、東南アジアの他の観光地と比べても手頃な価格設定。物価の安さと体験の質の高さを考えると、十分にコストパフォーマンスの良い旅行先といえるでしょう。