セーシェル「最後の楽園」への道のりは険しかった
セーシェルのラディーグ島にあるアンススースダルジャンは、「世界で最も美しいビーチ」と称される場所です。でも正直に言うと、この称号を実感するまでには時間がかかりました。
マヘ島からプララン島経由で約2時間、さらにラディーグ島への船で30分。到着したのは午後2時過ぎでした。港からビーチまでは自転車で約15分の道のりですが、これが意外と体力を消耗します。セーシェルの8月は乾季で気温28度前後と快適なはずなのに、湿度の高さで汗だくになってしまいました。
「絵葉書の風景」は本当にそこにあるの?
ビーチに到着した瞬間、確かに息を呑みました。花崗岩の巨石群が作り出す造形美と、透明度の高いターコイズブルーの海。でも「世界最美」の実感は、実は最初の30分では湧かなかったんです。
理由は単純でした。午後の強い日差しで、海の色がやや白っぽく見えたから。地元のガイドが教えてくれたのは、このビーチの真価は朝の8時から10時頃に発揮されるということ。太陽の角度が低く、海の青さが最も鮮やかに映る「ゴールデンタイム」があったんです。
翌朝7時30分に再訪すると、まるで別世界でした。海の青さが何層にも分かれ、巨石に反射する光がキラキラと踊る様子は、確かに他では見られない絶景でした。
あの有名な巨石、実は登っちゃダメって知ってた?
インスタグラムでよく見る「巨石の上に座った写真」。実は、これって推奨されていない行為なんです。現地の保護団体によると、観光客の増加で岩の表面の苔や微生物が破壊されているとのこと。
でも心配無用。巨石の間を縫って歩くだけでも、十分に迫力のある写真が撮れます。特に「象の鼻」と呼ばれる岩の形状は、角度を変えて見ると本当に象に見えてきます。地元の人によると、この岩は約6億年前に形成されたもので、氷河時代を経て現在の形になったそうです。
泳ぐ際は要注意。見た目以上に波が強く、岩に打ち付けられる危険があります。ライフガードは常駐していないので、自己責任での遊泳となります。
ビーチでのランチ、選択肢の少なさに愕然?
美しい景色に見とれていると、お腹が空いてきます。でもここで現実を知りました。ビーチ周辺には本格的なレストランが1軒しかないんです。しかも値段は観光地価格で、シンプルなカレーが約2,000円。
地元の人のアドバイスで、事前にラディーグ島の中心部でテイクアウトすることをお勧めします。特に「Chez Marston」のクレオール料理は絶品で、ビーチで食べると格別の美味しさです。持参する場合は、保冷バッグが必須。熱帯の暑さで食べ物は傷みやすいからです。
水も重要です。ビーチには水道設備がないため、十分な量の飲み物を持参しましょう。現地で購入すると、500mlのペットボトルが約400円と高額です。
夕日の時間帯、実は穴場だった理由
多くの観光客は午後早めに帰ってしまいます。でも実は、17時以降のアンススースダルジャンにも魅力があるんです。
西向きのビーチではないので夕日は直接見えませんが、空全体がオレンジ色に染まる「マジックアワー」は圧巻でした。人も少なくなり、波の音だけが響く静寂な時間。これこそが「最後の楽園」と呼ばれる理由かもしれません。
ただし注意点があります。17時30分を過ぎると急激に暗くなるため、懐中電灯は必須です。またラディーグ島の最終船は18時発なので、時間管理は厳格に。私は危うく島に取り残されそうになりました。
帰り道の自転車も要注意。街灯がほとんどないため、ライト付きの自転車をレンタルしておくことをお勧めします。レンタル料金は1日約800円と手頃です。
アクセス情報まとめ
マヘ島からの所要時間は約3時間(船の乗り継ぎ含む)。船の運賃はマヘ島→プララン島が片道約2,500円、プララン島→ラディーグ島が片道約600円です。
現地での自転車レンタルは港周辺に複数の店舗があり、1日800円程度。ビーチまでは平坦な道ですが、途中に砂地があるので慣れていない方は押して歩くことになるかもしれません。
知っておきたい現地ルール
セーシェル政府は環境保護に力を入れており、プラスチック製品の持ち込みに制限があります。ペットボトルや使い捨て容器は可能な限り避け、再利用可能な水筒やタッパーを持参しましょう。
また、貝殻や砂の持ち帰りは法的に禁止されています。税関で発見されると高額な罰金が課せられることもあるので、思い出は写真だけに留めておくのが安全です。
本音で語る「期待と現実」
正直に言うと、アンススースダルジャンは確かに美しいビーチです。でも「世界最美」という肩書きに過度な期待を持つと、少しがっかりするかもしれません。
真の魅力は、その瞬間瞬間の光の変化や、静寂な時間にあります。忙しく写真を撮りまくるのではなく、ただそこに座って海を眺める時間を作ってみてください。きっと、なぜこのビーチが愛され続けているのかが分かるはずです。
費用は決して安くありませんし、アクセスも簡単ではありません。でも一度体験すると、また戻ってきたくなる不思議な魅力があります。それが「最後の楽園」と呼ばれる真の理由なのかもしれませんね。