南アフリカの行政首都プレトリアを訪れた時、私は完全に甘く見ていました。「ケープタウンやヨハネスブルクの影に隠れた地味な首都でしょ?」なんて思っていたら、とんでもない。この街には、他の南アフリカの都市では絶対に味わえない独特の魅力と、知らないと痛い目に遭う落とし穴が潜んでいたのです。
プレトリアって実際どんな街なの?
正直に言うと、プレトリアは南アフリカで最も「普通っぽい」街です。でも、この「普通っぽさ」こそが最大の魅力だったりします。人口約300万人のこの街は、南アフリカの3つの首都のうちの行政首都として機能しており、政府関係者や外交官、学者が多く住んでいます。
街の中心部はヨハネスブルクほど殺伐としておらず、ケープタウンほど観光地化されていない。つまり、「リアルな南アフリカの日常」を肌で感じられる貴重な場所なんです。標高1,370メートルの高原に位置しているため、一年を通して比較的過ごしやすい気候も嬉しいポイントです。
絶対に失敗したくない?事前準備で決まる旅の質
私が犯した最初の大失敗は、交通手段をまったく調べずに行ったことです。プレトリアには地下鉄がありません。バスはありますが、観光客には正直言って分かりにくい。タクシーは安全性に不安があります。
結論から言うと、プレトリア観光には車が必要です。レンタカーを借りるか、信頼できる現地ガイド付きツアーを利用するかの二択。私は初日、歩いて回ろうとして3時間で挫折しました。中心部からユニオンビルまで徒歩約45分、ヴォールトレッカー記念碑までは車で約20分かかります。
二つ目の失敗は、両替です。プレトリアは観光都市ではないため、両替所が限られています。OR・タンボ国際空港(ヨハネスブルク)で南アフリカランドに両替してから来ることを強くお勧めします。
ここだけは絶対外せない!プレトリアの必見スポット
ユニオンビル:南アフリカ政治の心臓部
ユニオンビルは、南アフリカ大統領府がある南半球で最大の政府庁舎です。建物自体も美しいのですが、ここから見下ろすプレトリア市街の景色が圧巻。特に夕方の時間帯(17時頃)に訪れると、夕日に照らされた赤い屋根の街並みが本当に美しいんです。
入場は無料で、事前予約も不要。ただし、セキュリティチェックがあるので、大きな荷物は避けましょう。敷地内にはネルソン・マンデラ像もあり、南アフリカの歴史を肌で感じられます。
ヴォールトレッカー記念碑:巨大すぎる歴史の証人
街の南部にそびえ立つヴォールトレッカー記念碑は、高さ40メートルの巨大な石造建築物。19世紀のアフリカーナー(オランダ系移民)の大移動を記念して建てられました。
入場料は大人60ランド(約400円)で、営業時間は8時から17時まで。内部の大理石の彫刻は圧倒的な迫力で、南アフリカの複雑な歴史を物語っています。頂上からの眺めも素晴らしく、プレトリア全体を一望できます。
意外すぎる穴場!ジャカランダの街の隠れた魅力
プレトリアが「ジャカランダシティ」と呼ばれることを知っていますか?毎年10月から11月にかけて、街中が紫色のジャカランダの花で埋め尽くされるんです。この時期のプレトリアは、まさに別世界。
ハットフィールド地区やアーケイディア地区を歩けば、頭上一面が紫色の花で覆われた幻想的な光景に出会えます。特に、プレトリア大学周辺の住宅街は観光客が少なく、地元の人々の日常とジャカランダの美しさを同時に楽しめる最高のスポットです。
知る人ぞ知る:メルローズハウス
観光ガイドブックにはほとんど載っていないメルローズハウス。ここは1902年のボーア戦争終結条約が調印された歴史的建物で、現在は博物館として運営されています。入場料はわずか20ランド(約130円)で、営業時間は平日の8時から16時まで。
建物内部は当時の家具や調度品がそのまま残されており、まるでタイムスリップしたような感覚を味わえます。特に書斎には、実際に条約が調印されたテーブルがあり、南アフリカの歴史の転換点を目の当たりにできます。観光客はほとんどおらず、静寂の中でじっくりと歴史に浸れる貴重なスポットです。
これだけは気をつけて!現地で学んだ安全対策
私が犯した三つ目の大失敗は、夜間の単独行動でした。プレトリアはヨハネスブルクより治安が良いとはいえ、油断は禁物。日没後は基本的にホテルから出ない方が賢明です。
昼間でも注意すべきエリアがあります。プレトリア中央駅周辺やマラバスタッド地区は、地元の人でも避ける傾向があります。観光の際は、ハットフィールド、アーケイディア、サニーサイドなどの比較的安全なエリアに滞在することをお勧めします。
現金は必要最小限に抑え、クレジットカードを活用しましょう。ATMを利用する際は、銀行内部にあるものを選び、周囲に不審な人がいないか確認してから操作してください。
本当においしかった!プレトリアの隠れグルメ
プレトリアのグルメシーンは、想像以上に多彩でした。ボームワインレストランでは、南アフリカ伝統のボーア料理を味わえます。特に「ボボティー」(スパイスの効いたミートローフのような料理)は絶品で、一人前120ランド(約800円)程度で楽しめます。
ハットフィールド・フリーマーケットでは、毎週土曜日に地元の食材や手作り料理が並びます。ここで食べた「ビルトン」(南アフリカの干し肉)は、お土産としても最適。午前9時から午後2時まで開催され、地元の人々との交流も楽しめます。
実際に行って分かった!プレトリアの本当の魅力
結局のところ、プレトリアの最大の魅力は「等身大の南アフリカ」を体験できることでした。観光地化されすぎていない分、現地の人々の日常に触れる機会が多く、南アフリカという国の多面性を理解できます。
特に印象的だったのは、大学街であるハットフィールドで出会った学生たちとの会話。彼らから聞く現代南アフリカの若者の視点は、メディアでは決して知ることのできない貴重な体験でした。
プレトリアは確かに「派手さ」では他の都市に劣るかもしれません。でも、南アフリカの政治、歴史、文化、そして現在を深く理解したいなら、この街を素通りするのは本当にもったいない。ジャカランダの季節でなくても、プレトリアには静かで深い感動が待っているはずです。