サンタンデールで私が体験した「普通の観光地」という先入観を覆す5つの衝撃

「地味な港町」だと思っていたら、とんでもなかった

スペイン北部カンタブリア州の州都サンタンデール。正直なところ、最初は「バルセロナやマドリードに行けないから仕方なく」という気持ちで選んだ場所でした。でも実際に足を踏み入れてみると、この街には他のスペインの観光地では味わえない独特の魅力が詰まっていたんです。

今回は、私が実際に歩いて感じたサンタンデールの本当の姿をお話しします。きっとあなたも「こんな街だったのか!」と驚くはずです。

到着してすぐに気づいた違和感の正体

マドリードから電車で約4時間半、サンタンデール駅に降り立った瞬間、何か違うなと感じました。空気が違うんです。湿度が高くて、どことなく日本の海辺の街を思わせる雰囲気がありました。

これこそがカンタブリア海(ビスケー湾)の影響だったんです。地中海沿岸の乾燥したスペインのイメージとは全く違う、緑豊かで雨も多い「緑のスペイン」と呼ばれる地域の特徴でした。

王室も愛した避暑地の秘密って何?

サンタンデールが一気に有名になったのは、19世紀後半にスペイン王室の避暑地として選ばれてからです。でも、なぜここが選ばれたのでしょうか?

マグダレーナ宮殿で知った意外な事実

マグダレーナ宮殿は、1912年にアルフォンソ13世のために建てられた夏の離宮です。入場料は4ユーロで、4月から10月は10時から18時まで開館しています。

ここで驚いたのは、宮殿の建築様式でした。スペインらしいイスラム様式でもなければ、重厚なゴシック様式でもない。まるでイギリスの田舎にありそうな、親しみやすいデザインなんです。これは当時の王妃ビクトリア・エウヘニアがイギリス出身だったことが大きく影響しているそうです。

宮殿から見えるサンタンデール湾の景色は本当に息を呑むほど美しくて、王室がここを愛した理由が一目で分かりました。

「普通のビーチリゾート」じゃない理由

サンタンデールのビーチと聞いて、地中海の青い海を想像していたら大間違いです。ここは大西洋に面していて、波も荒く、水温もそれほど高くありません。

サルディネロ海岸で体感した大西洋の迫力

市中心部から徒歩20分ほどのサルディネロ海岸は、サンタンデールを代表するビーチです。でも、ここは「のんびり日光浴を楽しむ」というより、「大西洋の雄大さを肌で感じる」場所でした。

特に驚いたのは、引き潮の時に現れる岩場です。地元の人たちが当たり前のように岩場で釣りをしたり、潮だまりで何かを探したりしている光景は、まるで日本の漁港のようでした。

知る人ぞ知るサーフィンスポット

実はサンタンデールは、スペインでも有数のサーフィンスポットなんです。大西洋の荒波が作り出すうねりは、サーファーたちにとって絶好のコンディションを提供しています。

海岸沿いにはサーフショップも点在していて、初心者向けのレッスンも受けられます(1回約35ユーロから)。私も挑戦してみましたが、地中海とは全く違う波の力強さに圧倒されました。

グルメで発見!「これもスペイン料理なの?」

北スペインの料理は、私たちが知っているパエリャやガスパチョとは全く違う世界です。

カンタブリアンアンチョビの衝撃

アンチョビといえば、ピザのトッピングというイメージでしたが、サンタンデールで食べたアンチョビは別次元でした。特にカンタブリア海産のアンチョビは、塩辛さの中に深い旨味があって、そのままパンに乗せて食べるだけで絶品です。

地元の市場「メルカド・デ・ラ・エスペランサ」(月曜から土曜の8時から14時30分まで営業)では、様々な種類のアンチョビが試食できます。

意外すぎるチーズの世界

スペインでチーズといえば、マンチェゴチーズが有名ですが、カンタブリア州にはケソ・デ・カンタブリアという地元のチーズがあります。

このチーズ、見た目は地味なんですが、味は複雑で奥深い。牛の放牧が盛んなこの地域ならではの、ミルクの甘さと塩気のバランスが絶妙です。地元のバルでシドラ(リンゴ酒)と一緒に楽しむのが定番の食べ方です。

知らないと損する移動と観光の裏技

サンタンデールは決して大きな街ではありませんが、効率よく回るにはちょっとしたコツがあります。

路面電車じゃない?実は近郊電車だった

街中を走るFEVE線は、一見路面電車のように見えますが、実は近郊電車なんです。これを使えば、サンタンデール市内から近郊の小さな漁村まで、1時間程度でアクセスできます。

1日券は5.50ユーロで、観光には非常に便利です。特にサンティリャーナ・デル・マルという中世の街並みが残る村への日帰り旅行には欠かせません。

タクシーよりも便利な市内バス活用術

サンタンデールの市内バスは、観光客にはあまり知られていませんが、実はとても使いやすいシステムです。1回券は1.30ユーロ、1日券なら4ユーロで市内のほぼ全エリアをカバーしています。

特に1番線は、駅から港、旧市街、ビーチエリアまでを結ぶ観光には最適なルートです。地元の人たちと一緒にバスに揺られていると、観光地を巡っているというより、ちょっとした生活体験をしているような気分になります。

夜のサンタンデールで気づいた本当の魅力

多くの観光客は昼間だけ街を歩いて帰ってしまいますが、実はサンタンデールの真の魅力は夜にあるかもしれません。

ピンチョス文化の奥深さ

夕方6時頃から、地元の人たちが続々とバルに集まり始めます。ここで体験できるのがピンチョス巡りです。バスク地方ほど有名ではありませんが、サンタンデールにも独特のピンチョス文化があります。

「カジェ・デ・サン・フランシスコ」周辺には、地元の人で賑わうバルが軒を連ねています。1つのバルで1品だけ食べて次に移る、この「はしご酒」スタイルは、地元の人たちとの自然な交流を生んでくれます。

港町ならではの夜の散歩コース

プエルト・チコ(小さな港)の周辺は、夜になると全く違う表情を見せます。漁船の明かりが水面に映り、どこか郷愁を誘う風景が広がります。ここを歩いていると、サンタンデールが単なる観光地ではなく、今も生きている港町なんだということを実感できます。

帰る前に知っておきたい隠れた名所

最後に、ガイドブックにはあまり載っていないけれど、ぜひ訪れてほしい場所をご紹介します。

カボ・マヨールの灯台から見る絶景

サンタンデール市街地から南西に約5キロ、カボ・マヨールという岬に立つ灯台があります。ここからの景色は、まさに大西洋の雄大さを一望できる絶景スポットです。

市内バス7番線で約25分、終点で降りてから徒歩10分程度です。特に夕日の時間帯は、空と海が一体となった幻想的な光景を楽しめます。観光客はほとんどいないので、静かに景色を独り占めできるのも魅力です。

プレヒストリック博物館の意外な発見

カンタブリア先史博物館は、一見地味な博物館ですが、実はヨーロッパでも重要な旧石器時代の遺跡から出土した品々が展示されています。入場料は3ユーロ、火曜から土曜の9時30分から20時まで開館しています。

ここで特に興味深いのは、約15,000年前のマグダレン文化期の骨角器です。現代のサンタンデール周辺に、こんな高度な技術を持った人々が住んでいたという事実は、街の歴史の深さを物語っています。

サンタンデールが教えてくれたこと

振り返ってみると、サンタンデールは私の「スペイン観」を完全に変えてくれました。情熱的でドライなイメージだったスペインに、こんなにも穏やかで湿潤な一面があるなんて、実際に来てみなければ分からなかったでしょう。

何より印象的だったのは、地元の人たちの温かさです。英語が通じないことも多いですが、身振り手振りで一生懸命コミュニケーションを取ろうとしてくれる姿勢に、何度も心を動かされました。

サンタンデールは、派手な観光名所があるわけでも、有名な美術館があるわけでもありません。でも、スペインの別の顔を知りたい、地元の人たちとの触れ合いを大切にしたい、そんな旅行者にとっては最高の場所だと確信しています。

次回スペインを訪れる時は、ぜひ北部の「緑のスペイン」にも足を向けてみてください。きっと新しい発見があるはずです。