スペイン第3の都市バレンシアを初めて訪れた時、私は完全に舐めていました。「マドリードやバルセロナの次の選択肢でしょ?」なんて軽い気持ちで計画したら、予想を遥かに上回る魅力と、同時にいくつかの痛い失敗を経験することに。今回は、そんな実体験を踏まえて、バレンシア観光の真実をお伝えします。
パエリア発祥地で犯した最大の過ち?
バレンシアといえばパエリア発祥の地。ここで絶対に美味しいパエリアを食べるぞ!と意気込んでいた私が最初に向かったのは、旧市街の観光地ど真ん中にある「いかにも観光客向け」のレストラン。結果は…まずい上に1人前25ユーロという悲劇でした。
地元の人に後で教えてもらったのが、La Pepica(ラ・ペピカ)という海沿いのレストラン。1898年創業で、あのヘミングウェイも通ったという老舗です。マルバロサビーチから徒歩5分の場所にあり、本物の「パエリア・バレンシアーナ」が18ユーロで味わえます。営業時間は13時から16時、20時から23時30分で、日曜日の夜は休みなので要注意。
さらに驚いたのは、本場のパエリアには魚介類が入らないという事実。鶏肉、ウサギ肉、豆類、そして特別な米で作るのが伝統的なスタイルなんです。観光地で出される「シーフードパエリア」は、実は地元民からすると邪道だったりします。
芸術科学都市で時間を無駄にしないコツ
芸術科学都市(City of Arts and Sciences)は、バレンシアの現代的な顔として世界的に有名。建築家サンティアゴ・カラトラバが設計した未来的な建物群は、確かに圧巻です。
しかし、ここで私が犯した失敗は「全部見ようとしたこと」。敷地が想像以上に広く、各施設をじっくり見ると丸1日では足りません。オセアノグラフィック(水族館)だけで3〜4時間、科学博物館も同じくらいかかります。
入場料も結構な金額で、オセアノグラフィックは大人30.70ユーロ、科学博物館は8ユーロ。営業時間は季節によって変わりますが、夏期は10時から21時まで開いています。アクセスはメトロ3、5、7、9号線のアラメダ駅から徒歩10分です。
賢い回り方は、まず外観を楽しみながら散歩し、本当に興味のある1〜2つの施設に絞って内部見学すること。夕方の光が建物に反射する時間帯は特に美しく、写真映えも抜群です。
旧市街で迷子になって発見した隠れた宝物
バレンシアの旧市街は、2000年の歴史が詰まった迷路のような場所。バレンシア大聖堂や中央市場などの定番スポットを目指していたのに、狭い路地で完全に道に迷ってしまいました。
でも、この迷子体験が思わぬ発見をもたらしました。偶然見つけたのが「Horchatería Santa Catalina」という1900年創業の老舗。ここで初めて飲んだオルチャータ(タイガーナッツから作る伝統的な飲み物)の美味しさに感動!冷たくて甘く、独特の風味があって、暑いバレンシアの街歩きには最高の飲み物でした。
バレンシア大聖堂では、聖杯(サント・カリス)を見ることができます。これ、キリストが最後の晩餐で使ったとされる本物の聖杯かもしれないという説があるんです。入場料は無料ですが、聖杯博物館は2ユーロ。開館時間は10時から18時30分です。
中央市場は月曜から土曜の8時から15時まで営業。新鮮な食材を眺めているだけでも楽しく、地元の生活を垣間見ることができます。特にイベリコハムの試食をさせてくれる店が多いので、お腹を空かせて行くのがおすすめです。
マルバロサビーチが教えてくれた地中海の真実
都市部からマルバロサビーチへは、メトロ4、6、8号線で簡単にアクセスできます。所要時間は市内中心部から約20分。「都市近郊のビーチなんて、どうせそれほどでもないでしょ」と期待していなかった私ですが、実際に足を踏み入れて驚愕。真っ青な地中海が目の前に広がり、砂浜の質も想像以上に良質でした。
ここで学んだのは、地元民の海の楽しみ方。観光客は昼間にビーチでのんびりしがちですが、バレンシア市民は夕方から夜にかけてビーチ沿いのバルで過ごします。特に金曜の夜は、仕事帰りのスペイン人たちがビールを片手に海を眺めながら談笑している光景が印象的でした。
ビーチ沿いにはパエリア専門店が軒を連ねており、先ほど紹介したLa Pepicaもこのエリア。海風を感じながら食べる本場のパエリアは、旧市街の観光地レストランとは別次元の美味しさです。
火祭り以外は退屈?バレンシアの季節別楽しみ方
バレンシアといえば3月のファリャス(火祭り)が有名で、「それ以外の時期はつまらない」という声も聞きます。でも実際に年間を通して訪れてみると、むしろ火祭り以外の方が落ち着いて観光できることが分かりました。
夏場(6月〜8月)は海水浴シーズンで、マルバロサビーチが最も活気づきます。一方、冬場(12月〜2月)は観光客が少なく、地元の人々の日常生活により近い体験ができます。特に1月のセール期間は、コロン市場周辺のブティックで掘り出し物が見つかる穴場タイミング。
意外に知られていないのが、バレンシアはスペイン語発祥の地ではないという事実。ここではバレンシア語(カタルーニャ語の方言)が第一言語で、街の看板も二言語表記が基本。ただし観光地では問題なくスペイン語が通じるので、旅行者が困ることはありません。
最後に、バレンシア観光で絶対に避けたいのが平日の昼間にレストランに駆け込むこと。スペインの食事時間は日本と大きく異なり、ランチは14時から、ディナーは21時からが一般的。観光地以外の店は、この時間以外だと閉まっていることが多いんです。
結論として、バレンシアは「知れば知るほど奥が深い」都市。表面的な観光地巡りだけでなく、地元の生活リズムに合わせて街を歩くことで、本当の魅力が見えてきます。次回スペインを訪れる際は、ぜひバレンシアにも足を向けてみてください。きっと期待を裏切る発見があるはずです。