グッゲンハイム美術館だけじゃもったいない?本当のビルバオはここから始まる
多くの観光客がビルバオと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、あの銀色に輝くグッゲンハイム美術館でしょう。確かに建築家フランク・ゲーリーが設計したこの前衛的な建物は圧巻です。入場料は大人16ユーロで、火曜日は休館なので注意が必要です。
しかし、実はここだけを見て帰ってしまう観光客があまりにも多いのです。地元の人たちは「観光客はいつも同じところばかり行く」と苦笑いしています。本当のビルバオの魅力は、もっと奥深いところにあるのです。
美術館の開館時間は10時から20時まで(日曜日は15時まで)。平日の午後なら比較的空いているので、ゆっくり見学できます。でも、美術館を見た後の時間こそが重要なんです。
旧市街カスコ・ビエホ、なぜ観光客は迷子になるのか?
グッゲンハイム美術館から徒歩15分ほどで到着するカスコ・ビエホ(旧市街)。ここが実はビルバオ観光の最大の落とし穴になっています。なぜなら、14世紀から続く迷路のような路地が、観光客を容赦なく迷子にしてしまうからです。
私が初めて訪れた時も、目印になる建物を見つけるのに苦労しました。でも、この「迷う体験」こそが旧市街の醍醐味なんです。路地を歩いていると、突然現れる小さな広場や、700年以上の歴史を持つサンティアゴ大聖堂に出会えます。
特に注目したいのは、地元の人しか知らない「ピンチョス横丁」。プラサ・ヌエバ広場周辺には、観光ガイドブックに載らない老舗バルが点在しています。午後7時頃から地元の人たちで賑わい始めるので、この時間を狙って訪れてみてください。
ピンチョス巡り、実は食べ方にルールがある?
バスク地方の名物ピンチョス。小さな串に刺さった一口サイズの料理ですが、実は観光客の多くが間違った食べ方をしているのをご存知でしょうか?
正しいピンチョス文化では、一軒のバルに長居するのではなく、複数のバルを「はしご」するのが基本です。地元の人は一軒につき15分程度、1〜2品を食べて次の店へ移動します。価格は1品あたり2〜4ユーロが相場。
私が体験した中で最も印象的だったのは、「カフェ・バー・ビルバオ」のバカラオ・アル・ピルピル(干し鱈のオリーブオイル煮)。一見シンプルですが、鱈の旨味とニンニクの香りが絶妙に調和していました。
注意したいのは、ピンチョスの串は食べ終わっても捨てないこと。バーテンダーが串の数を数えて会計するシステムなので、皿の上に置いておきましょう。
地元民が通う市場、なぜリベラ市場は特別なの?
観光客の大半が見落としているのが、リベラ市場です。1929年に建設されたこの市場は、実はヨーロッパ最大級の屋内市場として記録されています。月曜日から土曜日の8時から15時まで営業しており、特に金曜日の午前中は地元の人たちで最も賑わいます。
ここの魅力は何といっても新鮮な魚介類。ビスケー湾で獲れたばかりのメルルーサ(ヘイク)やチャンケテ(小魚のフライ)を、市場内の小さな食堂で味わうことができます。観光地のレストランでは味わえない、本物の地元の味がここにあります。
意外に知られていないのですが、この市場の地下には昔の川の跡があります。かつてビルバオを流れていた小川の上に建設されたため、湿度が魚介類の保存に最適なんだそうです。
ネルビオン川沿い散策、隠された展望スポットはどこ?
最後にご紹介したいのは、多くの観光客が素通りしてしまうネルビオン川沿いの散策路です。グッゲンハイム美術館前から旧市街まで、川に沿って約2キロの遊歩道が整備されています。
特におすすめは、スビスリ橋からの眺望。1893年に建設されたこの橋は、世界初の運搬橋として世界遺産にも登録されています。橋の高さ45メートルのゴンドラ部分は一般開放されており(料金12ユーロ、運行時間は10時から20時)、ビルバオの街並みを一望できます。
しかし、地元の人だけが知る本当の絶景ポイントは別にあります。それはアルツァディ公園の丘の上。市街地から地下鉄1号線で約20分のエツィオ駅から徒歩10分の場所です。ここからはビルバオの全景が見渡せ、夕日の時間帯は特に美しい光景が広がります。
知っておきたい移動のコツと落とし穴
ビルバオの公共交通機関は、観光客にとって意外と使いやすいシステムです。バリック・カードという共通カードを使えば、地下鉄、トラム、バスすべてに乗車可能。カード代3ユーロに加えて、1回券1.7ユーロ、1日券5ユーロから選択できます。
地下鉄の駅構内は、建築家ノーマン・フォスターが設計した美しいデザインで知られています。特にサリコ駅の曲線美は一見の価値があります。ただし、朝8時から9時、夕方18時から19時の通勤ラッシュは避けた方が無難です。
季節ごとの楽しみ方、いつ行くのがベスト?
ビルバオは年間を通して比較的温暖ですが、実は季節によって全く違う顔を見せます。最も観光客が少なく、地元の雰囲気を味わえるのは2月から4月。この時期はサン・ブラス祭(2月3日)やイースターの宗教行事を間近で見ることができます。
逆に最も賑やかなのは8月のセマナ・グランデ(大祭週間)。街全体がお祭りムードに包まれ、毎晩花火が上がります。ただし、ホテルの料金は通常の2倍以上になるので、予算と相談して決めましょう。
雨の多い冬でも、室内で楽しめるスポットが充実しているのがビルバオの魅力。ビルバオ美術館(入場料10ユーロ、水曜日は無料)では、ゴヤやエル・グレコの作品を静かに鑑賞できます。
地元の人たちが口を揃えて言うのは「ビルバオは一度では味わい尽くせない」ということ。確かに、表面的な観光地巡りだけでは見えてこない、深い文化と歴史がここにはあります。次回訪れる時は、ぜひ時間に余裕を持って、地元の人たちとの交流も楽しんでみてください。