スペインといえばマドリードやバルセロナを思い浮かべる方が多いでしょうが、実は南東部のムルシア州こそが「本当のスペイン」を味わえる穴場なんです。でも、多くの旅行者がここで大きな失敗をしています。それは「ただ通り過ぎてしまうこと」。実際に現地を訪れてみると、その魅力の深さに驚かされること間違いなしです。
なぜムルシアが「知る人ぞ知る」観光地なの?
ムルシア州がスペインの他の観光地と大きく違うのは、観光地化されすぎていない「生の魅力」があることです。マドリードから南東へ車で約4時間、バレンシアからは約2時間の距離にあるこの地域は、地中海沿岸のコスタ・カリダ(暖かい海岸)として知られています。
年間300日以上が晴天という恵まれた気候のおかげで、一年を通して観光を楽しめるのが最大の特徴。でも、なぜここまで知名度が低いのでしょうか?実は、それこそがムルシアの魅力なんです。観光客でごった返すことなく、地元の人々の温かいもてなしを純粋に味わえる、まさに「隠れた宝石」のような場所なのです。
ムルシア市内で絶対に見逃せないスポットって?
ムルシアの州都であるムルシア市は、歴史と現代が絶妙に調和した魅力的な都市です。まず訪れたいのがムルシア大聖堂。14世紀から18世紀にかけて建設されたこの聖堂は、ゴシック、ルネサンス、バロック様式が混在する建築の宝庫です。
特に驚くのが、高さ93メートルの鐘楼。毎日午前10時から午後6時まで見学可能で、入場料は5ユーロです。階段を上るのは少し大変ですが、頂上からの眺めは息をのむ美しさ。ムルシア市街が一望できます。
もう一つ見逃せないのがリアル・カジノ・デ・ムルシア。名前に「カジノ」とありますが、実は19世紀の社交クラブ。内部の装飾は圧巻で、特にアラビア風のパティオは一見の価値があります。平日は午前10時30分から午後8時まで、土日は午前11時から午後2時まで開館。入場料は4ユーロとリーズナブルです。
地元民しか知らない隠れスポット
観光ガイドブックにはあまり載っていない穴場がフロリダブランカ庭園。ムルシア市民の憩いの場として親しまれているこの公園は、セグラ川沿いにあり、散歩やピクニックに最適です。特に夕暮れ時の美しさは格別で、地元のカップルたちのデートスポットとしても人気なんです。
コスタ・カリダの海岸線が想像以上に美しい理由
ムルシア州の海岸線は「コスタ・カリダ」と呼ばれ、その名の通り一年中温暖な気候に恵まれています。でも、ただ暖かいだけじゃないんです。この海岸の最大の特徴は、地中海でありながら波が比較的穏やかで、家族連れにも安心だということ。
ラ・マンガ・デル・マール・メノールは、全長21キロメートルの細長い砂州で、一方には地中海、もう一方にはヨーロッパ最大の塩水湖であるマール・メノールが広がる不思議な地形です。マール・メノールの水温は地中海より2〜3度高く、塩分濃度も高いため、リウマチや皮膚病の治療に効果があるとされています。
ムルシア市からラ・マンガまでは車で約1時間。公共交通機関を利用する場合は、ムルシア市からバスで約1時間30分です。夏季(6月〜9月)は本数が増えるので、事前にバス会社のウェブサイトで時刻表を確認することをお勧めします。
ムルシア料理の隠れた名物を知ってる?
ムルシア料理といえば、多くの人が思い浮かべるのはパエリアかもしれません。でも実は、この地域にはもっとユニークで美味しい料理があるんです。
まず試してほしいのがカルデロ。魚介類をたっぷり使った炊き込みご飯で、パエリアよりも汁気が多く、リゾットに近い食感です。マール・メノール周辺のレストランでは、新鮮な魚介を使った絶品のカルデロを味わえます。一人前約15〜20ユーロで、2人前から注文できるレストランが多いです。
そして絶対に見逃せないのがパスデル・デ・カルネ。ムルシアの伝統的な肉パイで、薄いパイ生地に牛肉、チョリソ、ゆで卵などを包んで焼いた郷土料理です。地元のパン屋さんで1個2〜3ユーロで買えるので、小腹がすいた時の軽食にぴったり。でも意外にボリューミーなので、食べすぎ注意です!
地元民が愛する隠れグルメスポット
観光客がほとんど知らない穴場が、ムルシア市内のベリル通り周辺にある小さなタパスバーです。特に「Casa Paco」というお店では、地元産のチーズとハムを使った絶品タパスが味わえます。夜8時頃から地元民でにぎわい始めるので、その時間帯に行くと本当のムルシアの夜を体験できますよ。
実は失敗しやすいムルシア観光の落とし穴
ムルシア観光で多くの人が陥る失敗があります。それは「夏の昼間に屋外観光をしすぎること」。7月から8月にかけては気温が40度近くまで上がることも珍しくありません。地元の人たちは午後2時から5時頃までは室内で過ごし、夕方から活動を再開するのが一般的です。
もう一つの落とし穴は「日曜日の計画」。スペインの多くの地域と同様、ムルシアでも日曜日は多くの店舗や観光施設が休業します。特に小さな町では、レストランも限られた数しか営業していないので、事前に確認が必要です。
交通面では、レンタカーがあると格段に便利ですが、ムルシア市内の駐車場探しは思っている以上に大変。旧市街は歩行者専用エリアが多いので、市内観光は徒歩が基本になります。ムルシア駅周辺に有料駐車場があるので、そこを拠点にするのがおすすめです。
知られざるムルシアの文化的魅力
ムルシアには、他のスペインの地域では体験できない独特な文化があります。毎年春に開催されるセマナ・サンタ(聖週間)の祭りは、アンダルシア地方ほど有名ではありませんが、実は非常に歴史が深く、地元民の信仰心の深さを感じられる貴重な体験です。
また、ムルシアは実はフラメンコ発祥地の一つでもあります。特に「マラゲーニャ・ムルシアーナ」という独特のスタイルがあり、小さなタブラオ(フラメンコ酒場)で本格的な演奏を聞くことができます。観光客向けの派手なショーではなく、地元の人たちが心から楽しんでいる生のフラメンコを体験できるのは、ムルシアならではの魅力です。
ムルシアは確かに日本人にとってはマイナーな観光地かもしれません。でも、だからこそ味わえる本物のスペインがここにはあります。観光地化されすぎていない素朴さ、地元の人々の温かさ、そして隠れた美食と絶景。一度訪れたら、きっとあなたもムルシアの虜になってしまうはずです。